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海見みみみさん

はじめまして。 時空モノガタリで修行させていただいています。 焼き肉が大好物。

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夏の親友

19/05/25 コンテスト(テーマ):第169回 時空モノガタリ文学賞 【 純情 】 コメント:0件 海見みみみ 閲覧数:87

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「あなたの血、マズイわね」
 突然聞こえた声。ジュンがビックリしていると、目の前に一匹の蚊が現れました。
「こんなどんよりして薄暗い味初めてだわ。……あなた、見ない顔ね」
「私、ジュン。小学一年生」
「なるほど、この家のおじいさんの孫ね。……アナタ、今夜はおいしいものを食べなさい。それで血がおいしくなったら、また吸いに来てあげる」
 そのまま蚊は飛んで行ってします。蚊にさされたところをポリポリかくジュン。蚊とお話するなんて、ジュンは不思議な気分でした。

 翌日。ジュンがおじいちゃんの家でボーッとしていると、またあの蚊が飛んできました。
「あなた、昨日はちゃんとおいしいものを食べたんでしょうね?」
「おじいちゃんがお寿司を頼んでくれた」
「よろしい。ではいただきます」
 そう言い、蚊はジュンの血を吸いました。
「……生臭いわね。まだどんより薄暗い味。今日は早寝して、血をキレイにしなさい」
 また蚊はどこかへ飛んで行きました。

 翌日。蚊はジュンの前に現れました。しかし今回も「血が青くさい」と文句を言います。
 今度は「あとでトマトジュースを一杯飲むこと」と蚊に命じられたので、ジュンは冷蔵庫のトマトジュースをぐびりと飲みました。
 さらに翌日。蚊はジュンの元に現れ、血を吸います。
「……やっぱりトマトジュースじゃ、血の代用には無理ね。こうなったらおいしくなるまで、トコトンつきあってやろうじゃないの」
 こうしてジュンは蚊に毎日血を吸われ、味を確認されることになりました。

 血を吸われ始めて一週間後。ジュンはおじいちゃんの家で膝を抱えて座っていました。その表情は暗く、今にも泣き出しそうです。
 するとやってきた蚊はこう言いました。
「血がマズイ理由がわかったわ。あなた、なにか悩みごとがあるでしょう? ウジウジ暗い顔で悩んでるから、血がマズイんだわ」
 蚊の言葉に思い当たることがあり、ジュンは消え入りそうな声で、話を始めます。
「……夏休みが始まって、家に帰ったらお父さんがいなかったの。代わりにおじいちゃんがいて『お父さんは病院で手術することになったから、当分うちに来なさい』って」
「それであなたはこの家に来たのね」
「私、気になってお父さんが何の手術を受けるのか聞いたの。でもおじいちゃんは答えてくれなくて。もしかしたら、お父さん重い病気なのかも。お父さんにもう二度と会えないかもしれないって思ったら、私……!」
 泣き出してしまうジュン。蚊は困ったようにあたりを飛びます。しかし覚悟を決めたのでしょう。蚊は声を張り上げました。
「決めたわ。今から一緒に、あなたのお父さんの病院に行くわよ!」

 蚊に連れられ、ジュンはお父さんの病院へ行くことになりました。しかし病院までは遠く、電車に乗る必要があります。ジュンは一人で電車に乗るのは初めてで、不安でした。
「私が一緒にいるんだから、安心しなさい!」
 そう蚊に言われ、勇気を振り絞るジュン。蚊と一緒に電車に乗り、ついにお父さんの病院までたどり着きました。
 受付でお父さんの部屋を聞き、ジュンはそこへ向かいます。お父さんは無事なのか。ジュンはドキドキしながらとびらを開けました。
「あれ、ジュンじゃないか」
 とびらの奥にいた、いつも通りのお父さん。ジュンの目から一気に涙があふれます。
「……お父さん、死んじゃいや!」
 お父さんに抱きつくジュン。目を丸くしつつも、お父さんはジュンの頭をなでました。
「大丈夫、お父さんは死なないよ。だって……」
「……だって、なに?」
「その、今回の手術は……痔の手術だし」
 予想外の答え。それにジュンはア然とします。お父さんは顔を赤くしていました。
「恥ずかしいから、痔だってことは隠してもらってたんだ。心配かけてごめんな」
 頭を下げるお父さん。でもお父さんが無事だとわかって、ジュンは笑顔になりました。

 帰り道。すっかり安心しきったジュンに、蚊は話しかけます。
「あなたのお父さんを想う心、とっても純情ね。すごくキレイでキラキラしているわ。……アナタの今の血、おいしかったわよ」
 そう照れながら告げる蚊に、ジュンは嬉しくなります。この夏出会った親友に感謝しつつ、ジュンは刺されたあとをかきました。


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