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海見みみみさん

はじめまして。 時空モノガタリで修行させていただいています。 焼き肉が大好物。

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純白のサメ

19/05/22 コンテスト(テーマ):第169回 時空モノガタリ文学賞 【 純情 】 コメント:0件 海見みみみ 閲覧数:87

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 小学生四年生の夏休み。ボクはサメを飼い始めた。シャーク、海のギャングのサメだ。
 夏祭りに行った時のこと。おこづかいを握りしめ出店を見て回っていると、奇妙な店があった。『鮫屋』と書かれたその出店の前には、大きな水槽が置かれていた。水槽の中には真っ白な手乗りサイズのサメが泳いでいる。
「こいつはエモクイザメ。特別なサメだよ」
 店主のおじさんがボクに気づき、声をかけてくる。ボクはこのサメに興味を持った。
「サメってことは、魚とか肉を食べるの?」
「違う。こいつが食べるのは、人の言葉だ」
 おじさんから飛び出した、突拍子のない話。でもボクは余計にサメのことが気になった。
「純情な心の持ち主がキレイな言葉をかけると、こいつはそれを食べて真っ白になる。逆に心の汚れたやつが汚い言葉をかければ、こいつは黒くなるんだ。……買っていくかい?」
 サメを前にして、ボクは悩む。悩みに悩んだ末、ボクはこのサメを一匹買って帰った。

 こうして我が家にやってきたサメ。名前はハクと名づけた。ハクを水槽に入れてやると、気持ちよさそうに泳ぐ。ボクは早速ハクにエサをやることにした。
 でも店主のおじさんは、ハクはキレイな言葉を食べると言っていた。キレイな言葉ってなんだろう?
 少し考え、ボクは国語の教科書を手に取ると、その中から詩のページを開いた。それからハクに向かって詩の朗読をする。
 するとどうだろう。ハクはパクパクとおいしそうに、ボクの言葉を食べた。気のせいか、先ほどより体が白くなっている。
 これはおもしろい。それからボクは毎日キレイな言葉をハクに与えた。

 数日経つと、ハクは驚くぐらいキレイな姿に変わっていた。純白の姿、まさにハクという名前にふさわしい。
 あれからボクは、ハクに絵本を読んだり、自分の思い出話を聞かせたりした。その度に美しくなるハクを見て、思わずニヤける。
 店主のおじさんは、純情な心の持ち主がキレイな言葉をやると、ハクは白く染まっていくと言っていた。まるでボクが心の美しい人間だと認められたようで、ちょっと嬉しい。
 ボクはハクを自慢したくて、家族旅行に出かけている、友達のスズにラインを送った。
『真っ白でキレイなサメを手に入れたんだ。帰ってきたら見に来てよ』
 そう送ると、スズから『楽しみにしてる』と返事がくる。ボクは早くハクを自慢したくて仕方なかった。

 スズが帰ってくるまであと三日。ボクはよりハクを美しくすべく、キレイな言葉をかけ続けていた。
「あんた、宿題はちゃんとやってるのー?」
 そこに聞こえてきた母さんの声。ボクは「やってる!」と怒鳴って返した。でも本当は宿題なんてやってない。それより今はハクの方が大事だ。
「スズが帰ってきたら、宿題写させてもらうからいいもんね。母さんのバーカ」
 そうボクがつぶやいた時だった。ハクがぶるりと震えたかと思うと、その体に真っ黒な染みが浮かんでくる。ボクは目を疑った。
 つい母さんの悪口を言ったら、ハクに汚い染みがついてしまった! ボクはなんとかハクを真っ白にもどそうとする。
「もどれ! もどって! もどれよ!」
 しかしボクが怒鳴れば怒鳴るほど、ハクの体に黒い染みが増えていく。逆に汚れていくのは、ボクの心が汚いから? あまりの事実に、ボクは激しいショックを受けた。

 なんとかハクを元にもどそうと、三日かけてがんばった。でもハクの体には黒々とした染みがいくつも残っている。
 そうしている内にスズが旅行から帰り、家に遊びに来た。当然ハクを見に来たのだ。
 約束した手前、ボクは渋々ハクを見せる。ハクの黒い染みを見られると、ボクの心の汚い部分を見られているようで、つらかった。
「三日前までは真っ白だったんだ。でも急に黒い染みができちゃって……」
 そう言いわけしながら、ボクはスズの言葉を待つ。黒い染みのあるサメなんて、汚くてイヤだろうな。ボクは思わず目を閉じた。
「……イイじゃん、黒い染みがあったって!」
 スズが言った言葉。それにボクは驚いた。
「真っ白なだけじゃつまらないよ。少しぐらい汚れてた方が、より魅力的さ」
 当たり前のように言ったスズの言葉に、ボクは救われた。少しくらい汚れててもいいんだ。真っ白じゃないハクと自分の心、ボクはその両方が好きになれそうな気がしてきた。


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