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奇都 つきさん

金魚とクラゲが好きです。 主にホラーを書いております。 他ジャンルだと、ギャグ、コメディ、ファンタジーをよく書きます。 よろしくお願いします。

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パンケーキ!!

19/05/20 コンテスト(テーマ):第168回 時空モノガタリ文学賞 【 レシピ 】 コメント:0件 奇都 つき 閲覧数:89

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誰が悪いと問われれば、TVの特集だろう。
お昼時少し過ぎ、食べ損ねたが今日は休日。なにも食べずに夕方まで持たせようと思っていたのに、TVはどこを付けても食べ物関連ばかり流していた。いくらチャンネルを変えども出てくる食物たちに、私の胃はしびれを切らし、グウグウと抗議の声をあげた。
仕方がない。面倒がらずに食べようか。
問題は何を食べるかだ、とう思い冷蔵庫の中身を思い出していると、レポーターの黄色い声に意識が画面に向いた。
「うわぁ!これがSNSで噂の?!」
そこには、これでもかと山のように生クリームが盛られ、果物に彩られたパンケーキが映っていた。
腹が一際大きくグウ、と鳴いた。まるで「これが食べたい!否、これ以外認めぬ!」と抗議しているようだ。
しかし、ホットケーキミックスがない。小麦粉ならある。
ここで天啓がごとく、目に携帯電話が入ってきた。
そうだ、今こそ文明の利器の出番だ。
パンケーキのタネのレシピさえわかればいい。焼き方は市販のホットケーキミックスと一緒だろう。
意外にも材料が全て揃っていることに気がついたら、もうあとグラム数を計れるハカリがないという問題のみ。
いいや、しかし今の腹はパンケーキしか受け付けない!
私はほぼほぼ忘れた家庭科の知識に頼って分量を量り始めた。ないも等しい知識を総動員させた。
その結果、タネは良いカンジのとろみを持ち、焼けば綺麗な円形を描いた。
調子に乗って、そろそろ外出からもどるであろう姉の分まで焼き上げる。計三枚が出来上がった。
大皿から一枚取り皿に移し、ホットケーキシロップのかわりにハチミツをたんまりかけた。
なんということだろう、苦い。
この味はすぐに気付いた。重曹だ。入れすぎたのだ。
気付きながらも、目の前にあるモノの見た目はパンケーキ。そして制作過程はパンケーキ。
自分で「これは概念的には完璧にパンケーキなのでは?」と血迷い始まったころ、玄関のドアの開く音がした。
「ただいまー」
ガサガサというビニールのこすれる音を引き連れて、姉が帰ってきた。同時に、ほんの少しの寒い匂いが鼻をくすぐる。
「まだ風強いの?」
一口サイズに切りながら問いかけると「強いなんてものじゃない!」と力強い返事が聞こえた。春のくせに風のせいでおろしたての白い薄手のコートが台無しだ、とプリプリ怒りながら少し乱暴にコートをかけているのが見ずともわかる。それがなんだかおかしくて笑ってしまったら、少し多めにハチミツがかかった。
「おかげでコレ落としちゃった!まぁ、別に箱が少し潰れたくらいじゃ味も何も変わらないけど」
向かいの席に座り、姉は私の目の前に角が少しだけひしゃげた箱を置いた。
それは、求めてやまなかったホットケーキミックスとホットケーキシロップ。
「いらなかったかな?」
なんとか一枚は食べきって自分用の皿に一枚、大皿に一枚に減ったパンケーキを見て苦笑いした姉を手招く。素直にテーブルに手をつき、向かいの席から動かずに顔を寄せてきたので、私が食べようとしていた一口サイズのパンケーキを口に突っ込んだ。
最初の三回ほどはもぐもぐと嬉しそうに咀嚼していたが、ハチミツの味が薄れ、あの苦みが出てきたとろこで、咀嚼をやめて私の麦茶をひったくって飲み込んだ。
「なにこれ?」
経緯を説明し、自分の感想を伝えると、姉はどんどん顔を曇らせた。
「と、いうことでだ。材料、レシピはだいたい揃えて形もちゃんとパンケーキになった。だからこれはパンケーキの概念に沿っているという点でパンケーキと呼んでいいはずだ」
最後の方はもう自分でも何を言っているのかわからなかった。
「パンケーキの概念はどうでもいいから、おいしいホットケーキ食べようよ」
返事を聞かず姉はミックスを持って台所に行った。
ホットケーキの魅力に負けながらも、私は自作のパンケーキに「大丈夫、お前は立派にパンケーキだよ」と、こっそりおべっかを使っていた。


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