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一太さん

一太と申します。 掌編など沢山創作したいと思っていますのでよろしくお願いします。

性別 男性
将来の夢
座右の銘 奇貨居くべし

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爽快レシピ

19/05/19 コンテスト(テーマ):第168回 時空モノガタリ文学賞 【 レシピ 】 コメント:0件 一太 閲覧数:116

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 煙草の煙が右に左に揺れる度、頭の中の考えも二転三転してしまう。この煙は、俺に残された上司である海老原に対して最後の良心のようだ。それは揺らめいては消えていく。
 俺は煙草を吸い終えた瞬間、何かに目覚めた。脳裏にフラッシュバックする様々な殺し方の映像は、まるで上質なホラー映画を見ているようだった。楽しすぎてずっと夢想にふけりそうだ。さながら、思春期の自慰行為にちかい。
 さて、どうやって海老原を殺してやろうか。頭に浮かびあがる姿は顔面がぐちゃぐちゃになったり、腹部に無数の刺し傷があったりするような姿ばかり。だが、これではまだ苦痛が足りない。俺は毎日とんでもない屈辱にまみれて頭を叩かれている。まだまだ足りない。
 すぐにパソコンで検索をかけ『完全犯罪マニュアル』という本を買った。いわゆるネタ本として読者レビューがされていた。全ての殺害方法を吟味しよう。悪人を裁きにかける遠山金四郎の気分だ。
 海老原をどうやってこの世から葬りさるか。その計画を朝から練っている内に、腹が空いてきた。何か作ろうか。ふと意識を冷蔵庫に向ける。そうだ、冷蔵庫に閉じ込めて殺すのもいい。死後硬直でどうせかちかちになる。そのまま氷漬けにして暇な時に顔でも拝んでやるか。しかし、それだけでは面白くない。綺麗な形のまま残すのは海老原の存在を残すのと同義だ。奴の肉片は1mmたりともこの世に存在させてはいけない。しかし、あえて醜態を晒すというのも一興だろう。即身仏のように、土中に埋めてミイラ化させてやろうか。そうだ、それなら哀れな姿をずっと拝める。首だけ切って、レンジで乾かしてやろう。キッチンから包丁を取り出し、ソーセージを切ってフライパンに乗せた。この音で、気づいた。
 これも面白い。殺した相手の肉を喰らうなんて、身の毛もよだつ恐怖だ。喰ってやるのも一興ではないのか。かの有名な織田信長は浅井長政のしゃれこうべを盃に一杯交わしたという。感謝の気持ちで食そうか。
 昼飯を食べ終え、ソファに寝転がり頭の中で殺害方法について練っていると、いつの間にか眠っていたらしい。玄関のチャイム音は海老原殺害計画の最終段階の合図。『完全犯罪マニュアル』が届いた。宅配便の兄ちゃんに内容物がバレていないか不安だったが、流石は大手通販サイト。中身を見せないように段ボール包装が顧客満足度を高めているのだろう。封を開けると中はしっかりとビニールで固定されていた。早速中身を読み進める。完『全犯罪を成立させる条件』という項目が目につくが、今知りたい物は残酷な殺害方法だ。それより世界各国の殺し方について書いてあるコラムの方が気になった。なるほど、生皮を剥ぐ……か。海老原の厚い面の皮をひっぺがしてやろう。他にも記載されていた内容で注目すべき点があった。中国には凌遅刑(りょうちけい)という屈辱と苦痛にまみれた最高の拷問殺人があるようだ。人間の肉体を少しずつ切り刻むのだ。その凄惨たる様子は、並みの感覚では直視できないものらしい。もっとも、今の俺ならば喜んで直視するだろう。肌が粟立つこの感覚、本当に素晴らしいな。俺は映画のハンニバル・レクターだ。現代社会の労働悪に制裁を加える絶対正義として、海老原に鉄槌をくだす。
 痛快過ぎて思わず本でデスクを二回、三回と叩いた。ページを読み進めていくと、古代中国がいかに残忍な殺し方で粛清を進めていたのか理解する。有名な物では『炮烙(ほうらく)の刑』だ。熱した鉄柱に罪人をはりつけて、肉を焼く。普通に火あぶりにするより、焼かれた悲鳴が長く続くのが良いらしい。図入りで解説してくれる『完全犯罪マニュアル』様には感謝しかない。しかし、先ほどからおまけページに書いてある内容ばかりに目がいってしまい、このままでは殺しがバレる。 それはそうだ、鉄柱で火あぶりなんてどのように一般人がやれというのだ。バカか、この本は。俺は頭をかきむしり、目を皿にして苦痛を与えつつ完全犯罪を成し遂げられそうな方法をリスト化することにした。手始めに『殺』という字がつく語句を並べてみる。
 抹殺、絞殺、刺殺、笑殺、悩殺、圧殺、自殺、殴殺、撲殺、併殺、射殺、忙殺、封殺、銃殺。『殺』という文字でゲシュタルト崩壊を起こすくらい、ノートにびっしりと埋め込んだ。ちゃんと殺し方を考えないといけないな。俺はベッドに横たわった。そして本を広げ、脳内で再び殺し始めた。心のつかえがとれていく。だが、その爽快な気分を邪魔するかのように海老原からメールが届いた。
『明日この前作った資料を持ってこい。後、お前の成績アップおめでとう飲み会があるぞ』
『分かりました、ありがとうございます。嬉しいです』         

〜完〜


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