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つつい つつさん

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恋の魔法

19/05/16 コンテスト(テーマ):第168回 時空モノガタリ文学賞 【 レシピ 】 コメント:0件 つつい つつ 閲覧数:54

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 お昼休みのチャイムが鳴り、お弁当を持ってリカの席に行くと、リカはお弁当も出さずに斜め左を見ながら物憂げな表情をしていた。
「サツキ、私たちが真っ直ぐ道を歩いてるとするでしょ。でもね、ずっと歩き続けると一周する頃にはそれは直線じゃなくて円になってるの。おかしくない?」
 リカとは小学校からの付き合いの私は気にせずお弁当を食べることにした。十五分程黙々と食べ続け完食した後、声を掛けた。
「どうした?」
「サツキは食べることにしか興味無くていいよね」
「はい、はい」
「なによ」と、非難する目で私を見る。でも、私はリカが哲学的なことを言い出すのは好きな人が出来た時だとわかっていた。
「トモ君?」
「え、なんでわかったの?」
 四月はこのクラスで一番イケメンのケン君が好きだったから次は二番目のトモ君なのはわかりきっていた。
 帰宅部の私とリカはぶらぶらと駅まで歩いた。
「私、今回は見てるだけをやめようと思うの」
 昔からずっとリカの恋話は聞いていたけど、まさか行動に移すとは思ってもいなかったので驚いた。
「私たち、もう高二だよ。見てるだけじゃね」
 ずっと同じだと思っていた友達が一歩先に進んだような気がした。
「で、いつ告るの?」
「な、な何言ってるの?」
 リカは頭をブンブン振って否定した。
「なんで? じゃあ、え? いきなりキス?」
「ぎぃやぁぁ! 何言ってるの」と、リカは私の肩をバンバンと叩いてくる。
「じゃあ、どうするのよ?」
 私が聞くと、リカは紙を差し出した。昨日ネットで調べたらしい。
「ほ、惚れ薬?」
 私が聞くと、リカは自信満々の顔でうなづいた。紙をよく見るとそこには惚れ薬を作るためのレシピがつづられていた。
「手伝ってくれる?」
「NO!」
 私は強めのアクセントできっぱりと断った。
「なんでよ。サツキ、お願い」
「だって、何よ、この材料。蜂蜜とか、ナツメグはわかるよ。でも、大コウモリの羽、ヒキガエルの油、こんなのどうするの?」
「とりあえずカエルは心当たりあるの」と、連れて来られたのは、モールの一角にあるペットショップだった。
 ガラスケースの中にはとてつもなく長い名前の黄色の毒々しいカエルがいた。
「どうするの? これ、買うの?」と、聞くと、リカはかばんからコットンを取り出した。
「ねぇねぇ、サツキ。私見張ってるからこれで油拭き取ってよ」
「なんで私が」と言っても、わかってるでしょって感じで首を二、三回振り、「私に出来るわけないでしょ」と、コットンを渡された。ここで渋っても話が進まないので私は仕方なくカエルから油を拭き取り、リカの用意した透明の小袋にコットンを入れた。
 次の日学校に行くと、放課後理科室に連れていかれた。その時点で気づいていたが、理科室の奥の棚には魚のホルマリン漬けや貝の化石なんかと並んでコウモリの剥製があった。リカはこういうの見つけるのだけは上手かった。
 コウモリを指さすと、リカは私にハサミを渡した。
「は?」
「は? じゃないよ。羽の部分でいいからちょっとだけ切って」
 しばらく口論したものの諦めて私はコウモリの羽を切ることにした。力を込めた瞬間グニュッという感触がして、私は全身に鳥肌が立つのを感じた。嫌な感触と戦うため、私は一分くらい奇妙な踊りを踊るはめになった。
 帰りにリカに蜂蜜やらナツメグやら、この前のコットンを渡され、「適当に煮詰めといて」と言われた。これには流石の私も本気で怒った。でも、「触れるわけないじゃん」と涙目になられて、私はそれらを持ち帰り煮詰めることになった。
 そして、ついに作戦決行の日が来た。私が煮詰めた変な液体を小瓶からスポイトで吸い取りお昼休みにトモ君のお弁当に振りかけるだけの簡単なミッションだった。
 お昼休みになると、リカはスポイトを制服の袖に隠して持ち、トモ君のそばまで寄ったけど、臆病で不器用なリカはそのまま素通りして戻ってきた。
 次の日案の定「サツキ、お願い」とリカに頼まれた。そうなるのはわかっていたので、私は前の日にトモ君の隣の席のチカに本を借りていた。そして、チカに本を返すついでに、トモ君の弁当に謎の液体を掛けた。
「ミッションコンプリート」と、私が興奮してリカの席に戻りハイタッチを求めるとリカは「うげって感じ」と、謎の液体の掛かった弁当をパクパク食べているトモ君を見て、嫌そうな顔をしていた。私は今までの苦労はなんだったんだろうって力が抜けるのを感じた。
 その日の授業の後、リカは美化委員の集まりがあったのでひとりで帰ろうと教室を出るとトモ君に呼び止められた。
「山田って今日ヒマ?」
 聞くと、トモ君はカラオケ行きたいのに、一緒にいく人が誰もいないとのことだった。
「べつに、いいよ」と、私は答えた。だって、私も人の恋を見てるだけじゃつまらないから。


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