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海見みみみさん

はじめまして。 時空モノガタリで修行させていただいています。 焼き肉が大好物。

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アンゴーさんの暗号

19/04/20 コンテスト(テーマ):第168回 時空モノガタリ文学賞 【 レシピ 】 コメント:0件 海見みみみ 閲覧数:183

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『エエラカフロY』
 意味不明な言葉が並んだ文章。アンゴーが出した暗号を、お嬢さまは解き明かします。
「最後のYがポイントね。これはほかの言葉もアルファベットにするんじゃないかしら? ローマ字に直すと『EERAKAHUROY』。これを逆から読むと『夜はカレー』ね」
 お嬢さまの推理が当たり、アンゴーは拍手をします。お嬢さまは自慢げな様子でした。

 今より少し前のお話。あるお屋敷にお嬢さまが住んでいました。お嬢さまの趣味は読書。中でも最近読んだ推理小説『踊る人形』は傑作で、自分も暗号に挑戦したいと思いました。
 そんなお嬢さまの夢を叶えてくれたのが、庭師のアンゴーです。お嬢さまの夢を聞くと、アンゴーは紙にこんなものを書きました。
『やいのをのノヲドーギ ↓』
 アンゴーが差し出したもの、それは暗号でした。まさかアンゴーが暗号を出してくるとは思わず、お嬢さまはビックリします。お嬢さまその自慢の頭をフル回転させました。
「これは簡単ね。最後の下を向いた矢印がヒント。全ての文字を五十音の一つ下で読めばいいのよ。答えは『夕飯はハンバーグ』ね」
 正解に拍手するアンゴーに、笑顔のお嬢さま。この日からアンゴーは度々暗号を考えては、お嬢さまに問題を出すようになりました。

『今はニリムロケ・夜カクーコッ』
「これは間に挟まった点が重要ね」
 今日もアンゴーから出題された暗号に、お嬢さまは頭を働かせます。
「点で分かれている部分をそれぞれ順番に一文字ずつ読むみたいね。答えは『今夜はカニクリームコロッケ』アンゴーの暗号はいつも夕飯の話題ばかりじゃない」
 ほほ笑むアンゴー。お嬢さまも笑います。
「でも、アンゴーの暗号を解くのも、もうおしまいね。……私、結婚するの」
 結婚、唐突な言葉にアンゴーは固まります。
「父の取引先の社長さんのところに嫁ぐの。急な話だけど、立場上断れないから」
 本当は引き止めて欲しいお嬢さま。しかしアンゴーは何も言わず部屋を出て行ってしまいます。
「……なにも言ってくれないの? アンゴー」
 お嬢さまのさびしそうな声。それが一人残された部屋に響きました。

 翌日。お嬢さまが嫁ぐ準備を進めていると、自室のドアにこんな物が挟まれていました。
『嫁ぎ先で料理ができないと困るので、レシピを挟んでおきます。アンゴー』
 そう書かれた手紙には、肉料理のレシピが載っています。アンゴーの変わらない対応に、涙を浮かべるお嬢さま。しかしレシピをよく見ると、お嬢さまは奇妙な点に気づきました。
『にく 料理
・ステーキはまず火加減を覚える
・気持ちをこめてデリケートに肉は扱う
・火の次は味。おしょう油味を覚える
・たっぷり作る
 最後に火を消し忘れないこと』
「もしかして、このレシピは暗号……?」
 そう気づくと、お嬢さまは謎のレシピを穴が開くくらい見つめます。
「冒頭が肉料理じゃなくて『にく』なのがポイントね。これは数字の二と九を意味するわ。各行の二番目と九番目を料理、つまり暗号を解くと『ス火気デ火した』になるわね。ここから最後に『火』の文字を消すと……!」
『好きでした』暗号の答えを見て、お嬢さまは慌ててアンゴーを探します。しかしすでに手遅れ。アンゴーは庭師の仕事を辞め、行方をくらましていたのです。
「……バカ」
 お嬢さまの言葉が、涙と共にこぼれました。

「……なんてことが昔あったのよ」
 数十年後、おばあさんになったお嬢さまは、孫娘にアンゴーとの思い出を語っていました。
「なんだか切ないお話だね」
「そうね。今思い出しても胸が痛いわ」
 遠い目で語るおばあさん。孫娘は困ったようにおばあさんを見つめます。
「これって過去の失恋のお話なんだよね?」
「それがどうしたんだい」
「……でも、私の記憶が間違ってなければ、確かおじいちゃんの名前はア」
「あら、きづいた?」
 突然いたずらっ子のような顔をするおばあさん。おばあさんは楽しそうに語ります。
「女の子はね、その気になれば家柄とか、体面とか、全部無視して突っ走れるのよ」
「おばあちゃん、強いなあ……」
 これには呆れる孫娘。
 最後におばあさんから問題。お嬢さまが結婚した相手の名前はなんでしょう?


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