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海見みみみさん

はじめまして。 時空モノガタリで修行させていただいています。 焼き肉が大好物。

性別 男性
将来の夢 プロ小説家になること!
座右の銘 焼肉定食!

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魔法のラーメン

19/04/17 コンテスト(テーマ):第168回 時空モノガタリ文学賞 【 レシピ 】 コメント:0件 海見みみみ 閲覧数:92

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「いっしょにラーメン屋をやらないか?」
 シロウから飛び出した言葉。それにケントは驚いているようだった。
「ずいぶん突然な話ッスね」
「とにかくまずはこれを食べてみてくれ」
 そう言うとシロウは机に一杯のラーメンを置いた。ワケがわからない様子だが、ケントはそれをすする。するとその目が見開かれた。
「なんだこれ、うまいッス!」
「これを見ながら作ったんだ」
 シロウが一冊の本、魔法のラーメンレシピと書かれたものを見せる。古本屋で買ったこのレシピ通りラーメンを作ったところ、プロもビックリの味に仕上がったのだという。
 シロウとケントは大学の同じゼミで、東京中の店を回っているラーメン仲間でもある。同じラーメン好きとして、シロウはケントに声をかけたわけだ。
「おもしろいッスね。この話乗ったッス!」
 こうしてシロウとケントはラーメン屋を開店する準備を始めた。

 店を開店するまでの間、シロウとケントは大変苦労した。資金がないからと親に頼ったが、無い袖は振れぬと断られてしまう。仕方なくバイトを始め、昼夜問わず働き詰めた。
 二年後。ようやく貯まった金を元手に小さな店を借りた。ボロい店だったが、シロウとケントからしたら、ようやく手に入れた店だ。
「さあ、これからオレたちで天下を取るぞ」
「ワクワクするッス!」
 二人の目は希望に満ちていた。

 それから先は快進撃だった。魔法のレシピ通りのラーメンを出したところ、これが人気に。店には行列ができるようになった。
 客の要望を受け、レシピに載っていたみそラーメンも出すと、これもヒット。行列が伸び過ぎ、急遽二号店を出店した。
 常連に言われ、レシピを参考につけ麺も始めた。これがラーメン評論家に取り上げられ、人気は加速。店の規模は拡大し、全国レベルに。シロウとケントは魔法のラーメンにより、まさに大成功したのであった。

 しかし、いつしかシロウとケントの間で不和が生まれるようになった。
「いつまでも同じ味じゃだめッス! もっと研究して、よりうまいラーメンにするッス!」
「今の味で十分だ! 研究なんて必要ない!」
 二人の議論は平行線。シロウは金儲けばかり考え、ケントを無視した。
「……それならオレは店を出るッス」
 最初は二人で始めた店。しかしケントが抜けたことで、シロウは一人ぼっちになった。

 数十年後。シロウの店は世界規模にまで発展した。今ではラーメンと言えば世界中でシロウの名が上がる。シロウがなにもしなくても、金はいくらでも入ってきた。その金でシロウは贅沢三昧。欲望の海でおぼれた。
 でもなぜか、これだけ贅沢な日々を過ごしているのに、シロウは満たされなかった。

 ある日、シロウはふと大学時代に通っていた町へ向かった。町は懐かしい空気で満ちている。ケントと通ったラーメン屋。屋号は変わっていたが、今もラーメン屋のようだ。
 気まぐれで店に入る。狭くてボロい昔ながらの店。食券を買い店主に渡そうとする。その時、シロウは目を疑った。目の前にいる店主。それが間違いなくケントだったからだ。
 頭はハゲあがり、頬もこけて骨っぽい。だがシロウには一目見てケントだとわかった。
 ドキドキしながらラーメンを注文をする。ケントはシロウに気づいていない様子だ。それもそのはず。シロウは贅沢のし過ぎで肥えて、みにくいオッサンになった。むしろ気づかれなくて、シロウはホッとした。
「はい、ラーメンッス」
 昔と変わらない口調。それが懐かしくて仕方ない。ケントのラーメンをシロウはすする。
 うまい。衝撃的な味。魔法のラーメンをていねいに研究し、進化させ続けてきたことがよくわかる、大変うまいラーメンだった。
 研究を続け努力してきたケントに対し、シロウはどうだろう。なにもせず、経営も部下任せ。稼いだ金を浪費するだけの日々だ。
 あのレシピには魔法がかかっていた。シロウはその魔法に頼りきり、自分を磨かなかった。シロウの顔は常に退屈そうで暗い。
 だがケントはその魔法を乗り越えた。自身のウデで魔法を超えるラーメンを生み出したのだ。その顔は明るく幸福感に満ちている。
 明暗を分けた男たち。シロウは問いかける。オレはいつ、どこで、なにを間違えたのかと。
 声を殺し泣く。自身の涙が落ちたラーメンは、やけにしょっぱかった。


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