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海見みみみさん

はじめまして。 時空モノガタリで修行させていただいています。 焼き肉が大好物。

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ヤオのはじまり

19/04/16 コンテスト(テーマ):第168回 時空モノガタリ文学賞 【 レシピ 】 コメント:6件 海見みみみ 閲覧数:275

時空モノガタリからの選評

不老不死の薬は大昔から人間の夢ですよね。しかし不老不死という最大の望みを得たからこそ、愛するものを失った悲しみも続くことになったわけで、そんな時人ははなす術もなく絶望の淵に立たされてしまうのかもしれません。人間の希望と絶望とが詰まった内容だと感じました。彼女を生き返らせる薬がいつか完成する時がくると良いですね。

時空モノガタリK

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 昔々。中国の山奥で仙人と共に修行をしている若者がいました。
「今までこの辛い修行をよく耐えてきた。免許皆伝じゃ。このレシピを持っていけ」
 そう言って仙人が渡したもの。それは不老不死のクスリのレシピが記された書でした。

 修行を終えた若者、ヤオは早速不老不死のクスリの調合を始めました。
「月のしずくに黄金桃の果汁、それに砂糖とジャンとなにかステキなものアル」
 いよいよ不老不死のクスリが完成します。試しにクスリを捕まえたネズミに与えました。するとネズミはどうなったかと言うと……。
「わっ! ネズミが爆発したヨ!」
 結果は失敗。どうやらジャンの量が多かったようです。

 しかしヤオは諦めません。今度こそレシピ通りに不老不死のクスリを調合します。
「太陽の汗に仏の目くそ、あとはカエルとエスカルゴ、小犬のしっぽアル」
 今度こそ不老不死のクスリが完成しました。一応ネズミに試食させてみますが……。
「わっ! ネズミが風船みたいになったヨ!」
 結果はまた失敗。仏の目くそではなく、耳くそを入れるのが本当のレシピでした。

 もうレシピは間違えません。三度目の正直だと不老不死のクスリを調合します。
「今回は必要な材料を全部ぶちこんだアル!」
 不老不死のクスリは一応形になりました。ただ一応ネズミに試食させると、今回は……。
「ね、ネズミが泡を吹いたアル……」
 二度あることは三度ある。材料をテキトーにぶちこめばいい程、不老不死のクスリは簡単ではないようです。

 それからヤオは日々不老不死のクスリを調合しました。失敗続きでしたが、五十日目でようやくそれらしいものが。試しにヤオは調合したクスリをひとくち舐めました。
「……うん、甘くておいしいアル!」
 やっと完成した不老不死のクスリ。ヤオにはクスリを飲ませたい人がいました。
 ヤオにはピンと言う恋人がいます。ピンは幼い頃から病弱でいつも床に伏せていました。
 そんなピンを元気にするため、ヤオは山奥で仙人に弟子入りし、ようやく不老不死のクスリのレシピを手に入れたのです。
 クスリを持つと、ヤオはピンの家まで駆け足で向かいました。家の前につくと、一度深呼吸。
「ピン、ただいまアル!」
 そう声をあげると、ヤオはピンの家に入りました。ヤオはようやくピンと会えるのです。
 ところがピンの家はもぬけの空でした。ピンの姿はどこにもありません。ヤオはご近所さんにピンのことを聞きに行きました。
「あの、ここの家に暮らしていた女性は?」
「それなら三年前に亡くなったよ」
 三年前に亡くなった。飛び出した言葉にヤオは崩れ落ちます。仙人の元で修行したのは大変長い期間でした。まさかその間にピンが亡くなっていたなんて。ヤオは絶望しました。
「ピンのいない世界なんて……!」
 そう叫ぶと、ヤオは谷から身を投げてしまいました。

 数時間後。ヤオは意識を取り戻しました。
「なんで死ねないヨ? この高さから飛び降りたのにアル」
 そこでヤオは気づきます。ヤオは不老不死のクスリができた時、それをひとくち舐めていました。つまりヤオはもう死ねないのです。
「ピンのいない世界なんて意味がないのに、死ぬこともできないアルか」
 そうなげくヤオ。しかし同時に、ある感情が生まれてきます。
「……もうここまで来たら、破れかぶれアル。こうなったら今度は自分で、ピンを蘇らせるクスリのレシピを見つけてみせるヨ!」
 こうしてヤオの新たな挑戦が始まりました。

 ヤオは自宅で蘇りのクスリの研究を始めました。不老不死なので、時間はいくらでもあります。ヤオはさまざまなクスリを調合しました。
 するとその過程で、悪い病気やケガに効くクスリが開発されました。しかしそんなものはヤオの眼中にありません。ヤオはそれらのレシピをタダで人にあげました。
 こうして中国の医療は飛躍的に進化し、さまざまなクスリが使われるようになりました。中国でクスリのことを薬(ヤオ)と呼ぶのは、ヤオの活躍があったからかもしれません。


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このストーリーに関するコメント

19/04/29 嶺 ナポレタン

序盤でヤオが一口舐めたことがどう展開するかと思いながら読み進めたところ、崖から落ちて死ねかった時に「あ!舐めたからだ!」とひらめきを感じることができて楽しかったです。

19/04/30 海見みみみ

嶺 ナポレタンさま
ご覧いただきありがとうございます!
不老不死のクスリに関しては、特に気を使ったので、お褒めいただき幸いです。

19/05/09 雪野 降太

拝読しました。
想い人のために費やした年月や辛い修行を想像するだに不在の家を前にした主人公の絶望が胸に迫ります。一方で、病弱な彼女が幸せな家庭を既に築いている場に遭遇してもなかなか辛いところで……主人公の歩んだ道の険しさを感じさせる作品でした。
読ませていただいてありがとうございました。

19/05/10 海見みみみ

雪野 降太さま
ご覧いただきありがとうございます!
ヤオの想いをくみ取っていただけて嬉しいです。
もしものお話も……そんな展開だったら、ヤオの絶望は深かったでしょうね汗

19/06/28 スーザン

けなげなヤオがいい!
ヤオはきっとまた「蘇りのヤオ」発見するでしょう。かならず!

19/06/28 海見みみみ

スーザンさん
ご覧いただきありがとうございます!
蘇りのヤオ、見つかるといいですよね。
ヤオは今もきっと研究を続けていると思います。

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