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19/04/15 コンテスト(テーマ):第167回 時空モノガタリ文学賞 【 実家 】 コメント:0件 みや 閲覧数:24

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私は実家が嫌いだ。

私の実家は小さな三階建ての一軒家で、古くて狭くて臭い。古い家なので壁は土壁で床は畳。犬を飼っているのでやはり匂いは動物を飼っていない家よりは臭いと思う。

家族構成は私、私の母、母の両親(つまり私の祖父母)の四人と犬が三匹の合計七人で、私は生後半年で私の父と離婚した私の母と一緒にこの私の母の実家で暮らしていた。幼い頃は古いとか狭いとか臭いとか何も思わなかったけれど、大きくなるにつれて、今時のクロス張りでフローリングのお洒落な一戸建てやマンションに住みたいと思う様になっていた。私の母もそう感じていた様で、皆んな居なくなって一人になったらこの実家を売ってマンションに引っ越すとよく言っていた。私よりもこの実家に長く住んでいるのだから、そう思うのは当然だと私は思っていた。

私が大学二年生の時に祖父が亡くなった。祖父はあまり私に干渉しない人だった。うるさくも言わないし、猫可愛がりもしない。ただ時々母や祖母に内緒でくれるお小遣いが嬉しかった。この実家は祖父が建てた家なので、私の母は私が生後半年で離婚した時に帰る場所があって有り難かったとよく話していた。例え古くて狭くて臭い家でも…

私が大学三年生の時に三匹いる犬のうちの一匹が亡くなった。この犬は私の祖母がとても可愛いがっていて、私自身はあまり可愛がっていなかった。犬と人間にも相性があるのだなと感じた事を良く思い出す。穏やかであまり吠えない良い犬だった。

私が大学四年生の時に、私は大学卒業後すぐに年上の恋人と結婚する事が決まった。この古くて狭くて臭い実家から出れる!と私は嬉しかった。綺麗でお洒落なマンション暮らしが出来ると思うと胸が弾んだし、実家を出る事を寂しいと感じはしなかった。結婚して実家を出る人間なら誰でもそう感じるだろうと思う。これから素敵なマンションで楽しい生活が待っているのだから。

私が結婚して程なくして私の祖母が亡くなった。祖父とは正反対の口煩い人だった。鬱陶しいと良く思っていたけれど、可愛がってくれていた事も事実だ。私が小学生の時に学校で熱を出した時に仕事で迎えに来れない私の母に代わって小学校まで迎えに来てくれた。祖母が家に居てくれているお陰で私が鍵っ子にならなくて安心だったと母がよく感謝していた。

そして、私が実家を出てもうすぐ一年になる。この間二匹いる犬のうちの一匹が亡くなった。この犬は私が小学生の時に私の母と一緒にペットショップに買いに行った犬で、厳密に言えば三匹いた犬の中でも自分の犬、と言う意味で思い入れの深い犬だ。母から犬が亡くなったと知らせが入って私は祖母が亡くなって以来、久しぶりに私の実家を訪れた。母とはランチやショッピングで外でよく会っているのだけれど実家に帰るのは久しぶりだった。

久しぶりに帰った実家は相変わらず古くて狭くて臭かった。綺麗なマンションに住むと実家の汚さを実感する、と母が言っていたけれど本当にそうだった。相変わらずでしょ、と母は笑っていた。
けれど、犬とお別れをして久しぶりに母とのんびり実家で過ごしていると、不思議な気持ちになった。懐かしい、と言うか、心地良い。実家の狭さも匂いも私の身体に染み付いているし、私の思い出と母の愛情がこの実家に染み付いている。

「お母さん一人になったらマンションに引っ越すって言ってたけど、どうするの?」
「まだ一人になってないから」
母の横で、四人と三匹、合計七人いた家族の最後の一匹の犬がのんびりと寛いでいる。元気そうに見えるけれどこの犬も高齢だから近いうちに亡くなってしまうだろう。

「…寂しい?」
「そりゃあね、皆んな居なくなったし。でも楽よ、楽。お爺ちゃんやお婆ちゃんや貴女が居た頃はご飯の用意や洗濯も大変だったけれど、今は一人だから楽…どっちかなんじゃない?」
「どっちか?」
「大変だけど寂しくないか、楽だけど寂しいかの」
なるほど…と私は思った。実際結婚して実家を出た私も夫のご飯の用意や洗濯が大変だった。お母さんが如何に有り難かったかが身につまされた。大変だけど寂しくない、楽だけど寂しい…結局どっちかしかないのだろう。

「お母さん、引っ越す時は早く教えてね」
「どうして?」
「妊娠したら、あ、まだしてないけど、妊娠したら、お母さんの家の側が良いねって彼と話してて、私達もお母さんの側に引っ越すつもりだから」
「またこき使うつもりね」
母は嬉しそうに笑った。以前は祖父母が亡くなったらすぐにマンションに引っ越すつもりだったけれど、今は何だかそんな気持ちになれないのだと言う。母はもしかしたらこのままこの家に居るんじゃないかな、とふと思った。けれど不動産屋のチラシはチェックをしているみたいで、見て、良いマンションがあったのよ、とチラシを取り出して楽しそうに目を輝かせていた。


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