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ササオカタクヤさん

文章でササオカタクヤの世界を伝えられたらいいなと考えてます。 キャラクターたちがイキイキとした物語を書いて、読んだあと何か残れるような作品にしていきます。

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父さんの再婚相手

19/04/08 コンテスト(テーマ):第167回 時空モノガタリ文学賞 【 実家 】 コメント:0件 ササオカタクヤ 閲覧数:150

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父さんから電話があった。
もう2年以上実家に帰っていないし、電話で話したことも記憶にない。だから嫌な予感がした。しかし電話越しから聞こえてくる父さんの声は、俺の知ってる声よりも輝いて聞こえた。
「晴人、父さん実は…再婚しようと思ってるんだ」
母さんが死んでから男手一つで俺と妹を育てた父さん。妹も高校を卒業したし、セカンドライフは新しいパートナーがいてもいいんじゃないか?寛大な心を持っている俺は一言で「いいんじゃない?」と伝える。
「それで一度、夏菜さんに会ってもらいたくて連絡したんだ」
仕事が立て込んでいるから正直帰りたくはない。しかしこの機会を逃すと実家に帰りづらくなるし、俺は上司に無理を言って有給を使うことにした。

都心から2時間かけて着いた地元の駅は、何も変わらない残念な景色が広がっていた。子供の頃、早くこんな田舎町から飛び出したいと願った。それでも2年ぶりに帰ってくると、俺はどこかホッとしていた。きっと父さんぐらいの年齢になったら、この町に帰って来たくなるのかもしれないなと考える。
「ただいまー」
「久しぶりだな」
実家に着いた俺を父さんが出迎えてくれる。なんだか小っ恥ずかしい気持ちになったが、俺ももう大人だから「元気?」と声を掛けてみる。父さんと面と向かって話すのはいつ振りだろう。
「夏菜さんは今買い物に出掛けてるから、ちょっとそこで休んでなさい」
俺は父さんに言われるがままにリビングのソファーに座る。するとしばらくして「にいちゃん帰ってきたー?」と賑やかな声が聞こえてくる。
「にいちゃん!久しぶりじゃーん!てかオシャレしてきたな!」
高校を卒業した妹は何も変わらず子供のような話し方をしていた。こんな奴でも社会人なのかと思うとこれからの日本が心配でならない。
久しぶりに会った妹と軽い世間話をして時間を潰していた。そんな時、妹が不意に言った言葉に違和感を覚える。
「でも父さんもまさかあんな若い奥さん貰うとはねー!」
そう言えば俺は父さんが再婚するとしか聞いていないことに気付く。俺は慌てるように再婚相手の年齢を聞き質す。
「え?確か…あれ?もしかしてにいちゃんと同じだったかも!」
俺は大きな声を上げてしまう。まさか父さんが俺と同い年の女に手を出すなんて驚きが隠せなかった。
「それに私どっかで会ったことあるんだよなぁ。全然思い出せないんだけど」
妹は不思議そうな表情を浮かべていた。俺と同い年、そして妹は前に会ったことがあると話していることに俺は妙に引っかかっている。
その時、「ただいまー」と玄関から父さんの再婚相手の声が聞こえてくる。俺はこの声を聞いた瞬間、背筋が凍るような感覚に襲われる。そんなことあるはずない、ありえないと何度も言い聞かせながらも扉の向こうからやってくる父さんの再婚相手を待つ。
「どうもはじめまして。倉前夏菜子です。よろしくね。…晴人くん」
目の前に現れた現実に目を背ける俺は、夏菜子のことを見ないように、そして電話が来たフリをしてその場から出て行く。外に出た俺の額からは溢れるように脂汗が流れていく。手足はガクガクと震え、壁に寄りかかっていないと倒れ込んでしまいそうだ。
俺はこの夏菜子という女をよく知っている。3年前に別れた元彼女だから。

夏菜子とは東京で出会った。会社の同期で仲良くなり、しばらくして付き合うことになった。ただ長くは続かなかった。
「絶対許さないから」
別れを切り出した俺に夏菜子は睨みつけるように言い放ったことを今でも覚えてる。ただ別れた次の日から職場にも現れなくなり、嫌がらせをしてくることもなく、何処かで幸せに暮らして俺のことなんか忘れてるんだと思っていた。
「ねぇ。晴人くんも早くおいで」
外にいる俺に夏菜子が話し掛けてくる。脳裏に焼き付けられた最後の言葉が頭から離れず、俺の鼓動が早くなる。
そして玄関の扉を開き、俺の姿を見つけるとゆっくりと近づいてくる。
「お父さんは晴人くんに似てる。ソックリ。でも一つだけ違う。あの人は私しか見てない。晴人くんと大違い」
ニターッと笑う夏菜子に俺は恐怖を覚える。このままじゃ身の危険もあると思った俺は震える唇を噛みながら
「か、か、夏菜子は何が目的なんだよ!」
と伝える。すると夏菜子はあの時と同じように睨みながら俺に言い放つ。
「私はあなたのお母さんだから」
たった一言告げられた俺は返す言葉が見つからなかった。
「あれ?晴人と夏菜さんこんなところにいたの?早く中に入ろうよ」
何も知らない能天気な父さんに呼ばれると夏菜子はニコッと笑い
「ごめんなさい!ほら晴人くんも早くおいで!」
と手を引っ張り家に連れ戻される。そして俺の耳元で夏菜子は言った。
「もう離れられないね」

夏菜子の終わらない復讐の始まりだった。


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