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嶺 ナポレタンさん

性別 男性
将来の夢 フリーランス
座右の銘 迷ったら積極的な方 やらない後悔よりやる後悔

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祖父の知られざる一面

19/03/24 コンテスト(テーマ):第167回 時空モノガタリ文学賞 【 実家 】 コメント:0件 嶺 ナポレタン 閲覧数:64

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亮介の実家は今どき珍しい三世代家族である。東京で働き始めて4年目になるが、盆正月は必ず福岡の実家に帰っていた。

そして今年の盆休みも例のごとく実家に向かっており、その道中、電車の窓から見える曇り空とそれに覆われた世界をぼーっと眺めていた。

ふと目に入ったのは、電線を支えながら山の上にそびえ立つ東京タワーのような物体。1つ見えるとまた1つ見え、俯瞰して見ると予想以上にたくさん存在している。

幼い頃からあれはなんだろうかと疑問に思っていたが調べたことがなく、改めてGoogle先生に尋ねてみたところ、鉄塔と呼ぶらしい。送電線を支えるものは、送電鉄塔と呼ばれるとのことだ。

「色も白だけやったり、赤と白やったり、色々あるんやなー。」

独り言を呟きながら眺めていると、気のせいだろうが、鉄塔が少し動いた気がした。

そういえば亮介は幼い頃、鉄塔がウルトラマンの敵キャラのように見え、少し恐れを感じていたのを思い出した。

その後も眺め続けていると、また鉄塔が動いた気がした。電車の外は風がそんなに強いのだろうか。。

そう思っていた時、鉄塔の1つが地面から跳び上がるように宙に浮き、人間が身体を捻るように送電線を他の鉄塔から引き剥がし、地面に再び降り立った。

「完全にジャンプしたよな。」

亮介はまた独り言を呟きながら周りの乗客を見回したが、誰も気づいていないようだ。

次の瞬間、地鳴りのような音と爆風が電車を襲った。

そりゃそうか、あれだけの物体が激しく動けばこうなるかと、亮介は冷静に考えながら耳を抑え身体を縮めた。

窓ガラスが割れることは無かったが、今の衝撃で乗客は騒ぎだし、電車は停車した。

窓の外の光景を見た乗客たちは、何が起きてるんだ!と叫ぶ者もいれば、ただただ泣き叫ぶ者もいる。

それもそのはずだ。先ほどの大ジャンプ後に地面に再び降り立った鉄塔が、送電線を振り回しながら電車の方へ向かってきている。

そしてなんと、他のいくつかの鉄塔もそれに従うように動きだし、こちらへ向かってくる。

彼らが近づいてくるにつれて、喚き声や叫び声は大きくなっていく。

亮介はこの一連の状況の変化についていけず、思考停止していた。そしてふと、もし自分が草食恐竜だったら、ティラノサウルスのような肉食恐竜の絶好の餌食になっていただろうなという想像をした。

その後やっと亮介が身の危険を感じ始め、電車内の喚き声や叫び声が騒音レベルまで到達した頃、突如、鉄塔に向かって走る一台の軽トラが現れた。

すると、乗客の一人である小さな男の子が、「あっ!ヒーローがきた!ママっ、ヒーローだよ!」と、嬉しそうにその男の子の母親らしき人物に話しかけた。しかし母親らしき人物は悲壮感漂う顔をしたままだ。

それを聞いた乗客の一人が、現実逃避なのか何なのかは分からないが、「お!やっと来たか!遅いよ来るのがー。」と、さもヒーローが現れるのが当たり前かのように大声をあげた。

すると、それを聞いた大半の乗客が便乗し、軽トラを応援し始めた。

亮介は笑いを必死にこらえ、トラクターの動向を見守った。命の危険が迫っているこの期に及んでも冷静な自分が不思議だった。おそらく前世で様々な経験をしてきたのだろう。

ふと誰が運転しているのだろうかと疑問を感じた亮介は、運転席に目を凝らしてみた。。

じーちゃんだ。明らかにじーちゃんだ。あの白髪、あの肩の上がり具合、あのちょっとしゃくれた顎、明らかにじーちゃんだ。そして助手席のフロントガラスの隅にある、つばがまっすぐな町内会の帽子。明らかにじーちゃんのトラクターだ。

じーちゃんは最強だった。軽トラのライトからレーザービームを放ち、一瞬にして鉄塔たちを破壊した。

そして、軽トラから降り、電車に向かって軽い会釈をした。さすがはじーちゃん、腰が低い。

電車の中は歓声と安堵の涙声に包まれ、ここが日本だとは信じられないくらい、人々が抱き合っていた。

浮かない程度に乗客のテンションに合わせながら、亮介は実家に帰ってじーちゃんと会うのが楽しみで仕方なった。きっといつものじーちゃんと変わりなく、洗濯物の畳み方でばーちゃんから口うるさく怒られていることだろうが。


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