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笹峰霧子さん

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母のいる実家は天国

19/03/21 コンテスト(テーマ):第167回 時空モノガタリ文学賞 【 実家 】 コメント:0件 笹峰霧子 閲覧数:221

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 実家は良いなあ〜!という母親に続いて、こっちの高校へ入学したいな〜と、後に続いて言うのは今年中三に進級する子だ。
 そんなに良いもんかねぇ、と内心理解できない私である。というのは私は一人っ子なので、母が亡くなるまで同じ邸内に暮らしていたからだ。
 私の場合いわゆる実家とは少し違うが、或る期間だけ母親の待つわが家を恋しく思ったことがある。それは大学在学中の四年間で、夏と年末と春の休みに入ると待ちきれんばかりに飛んで帰ったものだ。当時は汽車に乗って自宅のある終着駅まで着くのにはかなりの時間がかかった。
 待ってくれていたのは母親独り。
 一緒に住んで居た時には感じなかった母の温みに触れ、わがやの味を満喫する日々は、母を初め家の周りの景色や庭木にさえも安堵に包まれている気がした。

 今時の子供は大学に入学して慣れて来ると、それほど親元に帰りたいと思う者は多くないかもしれないが、私の場合、少し遅れて入学した地方の大学での生活は楽しいというよりむしろ苦痛な気持ちで日々を送っていた。只ひたすら休暇が来るのを待って勉学にいそしんでいたというわけだ。

 一方平成に入っての四年間、二人の娘は東京の学校へ遊学していた。それは私の念願でもあった。私は東京弁が好きで、子供らが方言から東京弁に変わっていくのがたのしみだった。大学生活のことをありのままに伝えてくれる次女からは、まるで私自身が大学生になったような気分でたっぷり楽しませてもらった数年間だった。

 その後彼女らが20代30代を経て現在は40代。実家へ帰ってもそれぞれ仕事があり、その子供も学校があるので長くは滞在できず、いよいよ最後の日が来て別れる際は、お互いに未練な気持ちを隠しながら淡々と手を振るのである。

 最近車で帰るようになった国内在住の娘は、子供とトイプードル三者のお帰りとなった。
犬の名前はロミオ。ロミオは我が家に着いて車から降りた途端、まるでドッグランで遊ぶみたいに庭の中を突進し折り返して又脱兎の如く走るのを繰り返す。

 滞在中は玄関を開ける度に一緒に庭に出て走り回った。今年の年末に帰った時も寒い中を駆け周って遊んでいた。
どうやらロミオは我が家を「実家」と勘違いしてしまったようだ。年が明けて六日に自分の家に帰ってから数日は機嫌が悪く、近づくと噛み付きそうな唸り声をあげておむつの交換も出来なかったらしい。
 ロミオは人間以上に、楽園いわゆる「実家」のことが忘れられなかったにちがいない。ロミオがそれほど愛着を持っていたと知ると、やんちゃで手を焼いたことも忘れてしまう私なのだった。

 お嫁に行って実家を出た人は実家へ帰るのが愉しみのようだ。
 隣の借家に若夫婦と二人の幼女が入居していたことがある。子供の幼稚園や小学校が休みになると、翌日にはもう奥さんが子供を連れて実家へ帰っていた。夏休みは長いのでその間一か月ほど三人は居なかった。実家に帰ると親が子供の面倒を看てくれるし、食事も作らなくてすむだろうから居心地満点だ。

実家には親が居る・・それが永遠につづくと錯覚している若い世代である。
やがて親の介護の時期が来ることも知らずに・・。

 私は嫁入りではなく婿入りしてもらったほうだが、よく考えてみると男の里帰りというのは聞いたことがない。つまり結婚した以上は嫁に縛り付けられて自分ひとりで里帰りすることはできないという世の習いなのかもしれない。

 夫の実家に行くとすれば嫁付き、孫が産まれれば孫付き・・
だが孫には目がない爺婆だからそういうことなら大歓迎される夫の里帰りになることは間違いない。


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