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壬生乃サルさん

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二月二十九日の誕生日プレゼント

19/03/18 コンテスト(テーマ):第166回 時空モノガタリ文学賞 【 おくりもの 】 ※時空作者による選考回 コメント:1件 壬生乃サル 閲覧数:193

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 私は二月二十九日生まれだ。
 いわゆる、うるう年。誕生日の話になると、決まって言われることが二つある。

「え? 四年に一度しか年取らないの? 良いなー、良いなー」

 これに関しては、かなり高い確率で言われた。それも心底羨ましそうに。
 しかし、そんな夢のような話はない。みんなと同じように、しっかり年は取っている。
 私は今日、還暦を迎えた。時の流れに反して、本当に四年に一歳分しか年を取らなければ面白かったのに。そうなれば、中身は六十歳でも見た目は十六歳。青春真っ盛り!
 うん、それはそれで気持ち悪いか。とにかく、私はごく普通に年を重ねている。
 そして、もう一つがこれ。

「誕生日プレゼント、四年に一度しか貰えないなんて可哀想ー」

 可哀想とは失礼な話だ。子供の頃は毎年ちゃんと誕生日プレゼントを貰っていた。
 年齢計算ニ関スル法律、をご存知だろうか? 年齢を計算するとき、出生日を初日に算入することを定めてる。したがって、二月二十九日生まれの者は、二月二十八日限り、すなわち二月二十八日の二十四時をもって満一歳となる。
 また、法律では時間帯による区別をしていないため、当該年齢としての効力は誕生日の前日から発効することとなる。
 ただ、実際に誕生日を祝うのは、満一歳になった次の日、すなわち二月二十九日のない平年では三月一日、ということになるのだ。
 だから、私の誕生日は二月二十九日でもあり、三月一日でもある。二月二十九日に生まれた、ということ以外、みんなと何も変わりはない。
 ただ一つ違ったのは、二月二十九日に送り主不明の誕生日プレゼントが届く、ということだ。

 あれは私が八歳になった二月二十九日。我が家に送り主不明の誕生日プレゼントが送られてきた。母と私は目を合わせ「どうする? 開ける? 気味悪くない?」と、綺麗にラッピングされた箱を前に小一時間、思案に暮れていた。
「こんな時、パパがいてくれたらねぇ」
 そうポツリと漏らした母が箱に手をのばす。
 私に父の記憶はない。物心が付いた時にはもういなかったのだ。理由は知らない。写真すら残されておらず顔すら知らないのだ。
 おそらく色々と言えない理由があったのだろう。何故だかわからないが、私は当時からそういうものだ、と思っており、あえて聞こうとすることもなかった。
 結局、最後まで父のことを聞くこともなく、母も三年前に亡くなった。
 それよりも、問題は箱の中身である。おそるおそる箱を開けた母が悲鳴を上げたのだ。
 中には右足が入って、いた。
 それは人間のものと勘違いさせるほど精巧な作り物の左足だった。
 あまりもの不気味さに、母も私も震え上がった。怖い。でも捨てたら捨てたで、私たちの身に何かが起きるのではないか? と、捨てる事も出来ず、床下に封じた。
 そして四年後の二月二十九日。
 再び、送り主が不明の誕生日プレゼントが届いたのだ。
 今度の中身は左足だった。
 さらに四年後。やはり二月二十九日に誕生日プレゼントが届いた。
 中身は二本の下腿。
 そのまた四年後には二本の上腿が……。
 ここで、母と二十歳になっていた私は「これって、組み立てろってことなのかな?」という考えに至った。
 私たちは床下に封じていた右足、左足、下腿を取り出し、組み立てた。二本の脚が完成した。
 それから私たちは二月二十九日の誕生日プレゼントを心待ちするようになっていた。
 誕生日プレゼントは二月二十九日に必ず届けられた。
 中身は、腰部、胸部、二本の上膊、二本の下膊、右手、左手、頸部、頭部と続いた。
 五十六歳となった二月二十九日には髪の毛が届いた。なんでここにきて髪の毛なのよ! と思わず笑い合ったものだ。
 いつしか私たちはこの精巧な作り物の人間に「パパ」と名付けていた。パパに髪の毛をのせる。
「うわぁ、なんだか一気にホンモノの人間みたいになったね!」
 私がそう言うと、母はうっすら涙を浮かべていた。
「ほんと。今にも起き出しそうねぇ」
 母が亡くなったのは、この翌年だ。「あと三年、生きたかったわ……」と、パパを優しげな眼差しで見つめ呟いたのが、私が聞いた母の最後の言葉だった。

 そして、今日。
 六十歳となった二月二十九日。誕生日プレゼントの中身は、赤いハート型の宝石だった。
 それを手に取ると同時に、私はピンときていた。
 その宝石をパパの胸に、詰めた。
 パパの目に光が宿った。口が開く。私はおそらく笑みを浮かべていただろう。
 その口元は確かに、こう言っていた。

「ずっと、お前を見守っていたんだ。ごめんな、パパらしいこと何もしてやれなくて」

 と。

 母は途中から気付いていたのだろう。三年前の涙はそのせいだ。
 そして、私も……。
 薄々、気付いていたよ。

 ありがとう、パパ。


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このストーリーに関するコメント

19/04/09 滝沢朱音

うるう年の2/29に必ず送られてくるおくりもの。ロマンティックなお話かと思いきや、サスペンス的な展開にびっくりしました。面白かったです。
本物の父は、一緒には暮らせないけれどどこかで生きていて、主人公たちを見守りつつ、少しずつパーツを作っては送っているのか。あるいはすでに天国にいっていて、生前にこんな贈り物を準備していたのか。
または、実は最初から父はアンドロイドだったりして?!…なんて、ついいろいろと深読みしてしまいました。

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