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森音藍斗さん

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あなたがくれた

19/03/18 コンテスト(テーマ):第166回 時空モノガタリ文学賞 【 おくりもの 】 ※時空作者による選考回 コメント:1件 森音藍斗 閲覧数:97

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 窓辺に揺れるモビールは、誕生日のおくりものでした。
 部屋に彩りが欲しくも植物を育てるのが苦手な私に、ぴったりな萌葱色をあなたは選んできてくれました。半透明のフィルムが、太陽にきらきら反射して、部屋に色を落とします。
 いつもコーヒーを飲むマグカップは、クリスマスのおくりものでした。
 いつも一緒に居られなくてごめんねと、赤いリボンの描かれた真っ白なマグカップと、インスタントコーヒーをセットで贈ってくれました。寂しい夜は、コーヒーを飲んで、傍にいるからねと微笑んだあなたは、優しかったです。
 本棚三段目のポストカードは、一周年の記念日です。
 ふたりで遊びに行った海、その帰りの道で買ったものでした。隣に置いてあるのは、貝殻を使ったペンダント、海辺の工房であなたがその手で作ったものです。あなたは私と貝を拾い、工房でアクセサリ造り体験をして、それをプレゼントにと、はじめから計画していたそうです。お世辞にも上手とは言えませんが、何にも代えられない一品です。
 家の斜向かいのカフェは、ホワイトデイのおくりものです。
 気になっていたものの入れていなかった小ぢんまりとした古民家カフェ、はじめて連れていってくれたのはあなたでした。私は最近になってようやく独りで行けるようになりました。あのとき頼んだシフォンケーキを、今でもよく注文します。
 その店で流れている曲は、あなたの好きなバロックです。
 駅からカフェを結ぶ道は、あなたと歩いた思い出です。
 たまに訪れる繁華街は、あなたと食べたあんまん、あなたと話した遊歩道、あなたと手を繋いだ高架下。
 やりとりしたメッセージの履歴も、あなたが教えてくれたコンビニスイーツの喜びも、別れたくなくてないちゃったことも、おなかが痛くなった私をずっと待っていてくれたことも、あなたが私にくれたやさしさ、あなたが私にくれた知らない世界、形あるものも形ないものも全部、全部、あなたからのすてきなおくりものです。
 あなたは私に、たくさんのおくりものをくれました。
 私はあなたに、何を贈れたでしょうか。
 あなたからのおくりものに満たされた街は綺麗で、それがどんどん昔の話になっていく世界は苦しくて、あなたからのおくりものは、もう増えない。
 私はまだ、ここにいます。
 あなたは今、どこにいますか。


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このストーリーに関するコメント

19/04/09 滝沢朱音

「私はあなたに、何を贈れたでしょうか」――この問いかけが、とても印象的でした。
あなたからの贈り物だらけの部屋で、街で、私はまだ生きている。だけど、あなたはどうなのだろう。
まるで映画のような美しいシーンの連続に、主人公の喪失感の大きさを思わずにはいられませんでした。

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