1. トップページ
  2. 星を紡ぐうさぎ

みやさん

写真と物語の融合、写真物語家を夢見ています。 マイペースで更新中。Twitter➪@miya_ayim

性別 女性
将来の夢
座右の銘

投稿済みの作品

1

星を紡ぐうさぎ

19/03/18 コンテスト(テーマ):第166回 時空モノガタリ文学賞 【 おくりもの 】 ※時空作者による選考回 コメント:2件 みや 閲覧数:84

この作品を評価する

私達が月に到着して二週間が経っていた。元気だった熊になった彼が昨日からぐったりとしていて、意識が無い。彼はこのまま死んでしまうのだろうか?うさぎになった私の小さな心臓がザワザワしていた。

人間が他の動物に変化すると、人間だった時の感情は失ってしまうのか?
博士達に聞いても明白な答えを得る事が出来なかったこの疑問。その答えを私達は自ら実感した。うさぎになった私も、熊になった彼も人間だった時の感情を持ち合わせていた。この素晴らしい事実を博士達に知らせたかった。
月に到着して初めて熊になった彼を見た時に私は嬉しくなって駆け寄った。月へ向かう宇宙船の搭乗前に少し話しをしただけなのに、熊になった彼もうさぎになった私の事を覚えてくれていた。けれど、私達以外の動物になった人達は人間だった時の感情を忘れてしまっていた様で、お互いを殺し合い、七匹いた動物達で生き残ったのはうさぎになった私と熊になった彼と猫になった彼女の三匹だけだった。

太陽が死滅して約四十年。太陽の光の恩恵を受ける事が出来なくなった地球では、今では人間以外の動物は存在していない。人間も近い将来絶滅するだろうと推測されていた。そして月移住計画が始まった。大気の無い月を大気で覆う事に成功した博士達は、そこで人類が生活出来るかを試す為にまず、様々な動物を送り込む事にした。全ての動物は絶滅しているので、残っている様々な動物のDNAを用いて人間が様々な動物になれる薬を発明した。私はうさぎに、彼は熊にー

月に到着後ドローンの誘導でうさぎになった私と熊になった彼は食べ物や水が用意されている洞窟に辿り着く事が出来た。猫になった彼女が私達の後を距離を取りながら着いてきていたけれど、近づいて来る事はなかった。猫になった彼女は人間だった頃はどんな人だったのだろうか?動物に変化する前に少しでも接する事が出来れば良かったのに…と私は残念だった。
洞窟の中は快適だった。呼吸も問題なく出来るし温度も少し肌寒いかなと感じる位で地球よりは遥かに暖かかった。食べ物も水もドローンが運んで来てくれた。何日かすると、音声と映像が受信出来るドローンがやって来た。

「私が分かりますか?私の言葉が…理解出来ますか?」
博士の映像を見てうさぎになった私の目から涙が溢れた。博士の優しい顔、言葉をうさぎになった私も熊になった彼も理解する事が出来た。ただ私達は言葉を喋る事が出来なかった。何とか伝えようとするけれど、うさぎになった私はキューキューとしか発音出来ず、熊になった彼に至ってはガオーと雄叫びを上げるしか術が無かった。私達が言葉が理解出来ると分かった博士はYESかNOで答えられる様に質問形式で通信をしてくれた。呼吸は苦しくないですか?YESならうさぎになった私がキューキューと鳴く。NOならガオーと熊になった彼が雄叫びを上げる。そんなやり取りを続けながらうさぎになった私と熊になった彼は月での生活を続けた。人類の未来の為に。

そして昨日から熊になった彼が突然ぐったりし、博士からの通信ドローンも二、三日前から来なくなっていた。私は不安でたまらなかった。熊になった彼の身体が少しづつ冷えて来ている。このまま死んでしまうの?毛布をかけてあげようと頑張っても、大きな毛布はビクとも動かない。うさぎじゃなかったら…人間だったら…彼に毛布を掛けてあげる事が出来るのに…一生懸命毛布を口で引っ張っていると重い毛布がフワッと軽くなった。見ると反対側を猫になった彼女が引っ張ってくれていて、熊になった彼に毛布を掛けてあげる事が出来た。そして猫になった彼女はまたサッと何処かへ行ってしまった。猫は気まぐれ…私は何だか可笑しくなった。

すると通信ドローンが洞窟の中にやって来た。
「システムエラーで暫く来れませんでしたが、調子はどうですか?」
博士は熊になった彼の異変にすぐに気付いた。
「熊さんが元気が無い様ですが、うさぎさん心配無いですよ。冬眠と呼ばれる現象です。温度管理をもう少し調整出来るように開発中なので、安心して下さい」
博士の言葉を聞いてうさぎになった私は心の底から安堵した。良かった、本当に良かった…
「重い毛布を熊さんに掛けてあげたんですね」
猫になった彼女が手伝ってくれました。
「…うさぎになった事を後悔していますか?」
うさぎになった私はキューキューとは鳴かなかった。

毛布を掛けた熊になった彼の胸にうさぎになった私は潜り込んだ。何て暖かいのだろう。そして甘い香りがした。何かと思って見ると、小さな花が熊になった彼の胸元にあった。もう枯れてしまっているけれど、何処かで咲いていたのをうさぎになった私にプレゼントしてくれようとしていたのだろう。暖かさと甘い香りに包まれてうさぎになった私は安心して深い眠りに就いた。


コメント・評価を投稿する

コメントの投稿するにはログインしてください。
コメントを入力してください。

このストーリーに関するコメント

19/04/09 滝沢朱音

月に住むうさぎとクマ、そして猫。一見ほのぼのとしたファンタジーのようで、実はDNA操作で人間が動物になったという、未来SFの展開に驚かされました。
うさぎと猫が力を合わせ、重たい毛布をかけるシーンにほっこり。素敵なお話でした。

19/04/15 みや

滝沢朱音 様
コメントありがとうございます。実はこの作品は三部作なんです。テーマに沿ってストーリーを考えるのがとても楽しかったです。

ログイン