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ダイナマイト・キッドさん

キッドです。名前の由来は偉大なプロレスラーから。 主に 小説家になろう http://mypage.syosetu.com/912998/ アルファポリス https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/376432056 で怪談、作詞、BL、恋愛、電波系のSFを中心に書いております。 最近はプロレスについての記事も書きます。 ホラーとSFが好きですが、なんでも書きます。よろしくお願いします。

性別 男性
将来の夢
座右の銘 招かれる者は多いが、 選ばれる者は少ない。

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ビートのりこ

19/03/18 コンテスト(テーマ):第167回 時空モノガタリ文学賞 【 実家 】 コメント:0件 ダイナマイト・キッド 閲覧数:155

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 うちのバアさんこと佐野ノリコさんは、近所でも親戚のなかでも豪傑で知られていた。
 6人兄弟の長女で運動神経も抜群、昔から女親分だったノリコさんはとにかくお金も出すところは出すし、買い物も欲しいものはすぐに買うというザ・三河の女。
 喫茶店でコーヒー飲むのが大好きで家の近所から旅行先まで、そこいらじゅうの喫茶店のコーヒーチケットが買ってあった。
 コーヒーチケットってのは早い話がそのお店で使える回数券。例えばコーヒー1杯300円だとして3千円でチケットが11枚ついてくる。1回お得。
 レジやカウンターのところにラックがあって、佐野様って書いてあるところにうちのチケットがあるので、私もそれを好きに使ってよかった。大抵の場合、コーヒーだけじゃなくココアでもソーダ水でも、普通のコーヒーと同じ値段のメニューなら何でも使えた。

 でね。そのチケットがあるもんだから近所の人からたまたま居合わせた人までみんなにコーヒーご馳走しちゃうんだ。
「おばあちゃんには、いつもコーヒーご馳走になりましてねえ」
 と後年色んな人からずいぶん言われた。

 そんなノリコさんが打ち立てた豪快伝説の数々。

 若いころ交通事故に遭い自転車が大破するも、かすり傷だけで歩いて帰ってきたことがある。しかし結局は何年も経ってから後遺症が出て、晩年は足腰が不自由になってしまった。けどその時はそんなこと想像も及ばないほど元気だった。

 元々、糖尿病と脳梗塞と心筋梗塞という地獄の三面待ちオープンリーチだった。
 だったのだが、これが食生活を改めるつもりゼロの豪快スイッチぶっ壊れライフ。夜中の11時に階下から
 「カズヤ!!」
 と呼ばれたときは、近所にある行きつけのラーメン屋さんに行きたいからついてこい、という合図だ。
 このお店も昔からの知り合いで、味も美味しい。バイトのお兄さんたちも結構イケメン揃いで派手な髪の毛やピアスもオッケーなので怖い。のだが、店の親方のほうがもっと怖かった。
 親方の待つお店までは我が家から300メートルぐらい。家を出てすぐ信号をひとつ渡って、あとは商店街をとことこ歩いていくだけだ。
 が、足腰が不自由なノリコさんにはこの距離でも結構キツイ。
 最初はお婆さんがよく押している小さなコロコロのやつ、アレなんていうんだ、そのまま座って休憩も出来る、ほら、アレ。名前はわからんがみんな脳内に浮かんだよな。そうそれ。
 ……違うよそれはドラゴンフルーツだよ(何を想像してんだよ)

 で、それもしんどくなると杖をついて歩くノリコさんの手を取って一緒に歩いた。これが天気のイイ公園とかだったら
「あらぁ〜佐野さんとこのお孫さんはおばあちゃん孝行ねえ〜」
 と褒められるところだが、この場合は深夜11時に足腰が不自由なうえ糖尿病のバアさんを引っ張って味の濃いラーメン屋さんに連れて行きおごってもらう、という風にも見える。
 鬼畜の所業か。

 糖尿病と言えば、たけし軍団のグレート義太夫さんの本
「糖尿だよ、おっかさん!」
 で義太夫さんが痛風にかかったときは夜中にラーメン屋さんで
 ゲンコツ角煮ラーメン大盛り!
 と注文し、軍団の皆さんから称賛を浴びたという。しかし糖尿になった途端にマジで心配され、ゲンコツ角煮どころかちょっと不摂生をしようものなら叱られる、と書いてあった。
 うちのノリコさんなんか糖尿になってもまだ夜中にラーメン大盛りネギ抜きを注文していたんだから、ある意味たけし軍団を越えたかもしれない。
 ビートのりこ、と呼べばよかった。

 そうそうノリコさんはネギ類が大嫌いだった。ラーメンも当然ネギ抜きなのだが親方とは顔見知りなので何も言わなくてもツーカーだけどバイトの皆さんはそんなこと知らないのでたまにネギが入ってることがある。そうすると、このパーマ頭に小太りで真夜中なのにラーメン食いに来るバアさんが烈火の如く怒るんでお兄様方は大変だったと思う。
 普通、バアさんったら多少のネギやなんかは
「いいよいいよ、昔は食べ物がなくって」
 とか言いながら食べてくれそうなもんだがノリコさんにそれは通じない。
 ぷんすか怒りながら、でももう箸つけちゃったから、と私の丼にネギをひとつひとつ摘まんじゃ放り込んでくる。どんな小さなネギも見落とさない。ロボコップかお前は! というぐらい正確に、麺やチャーシューの裏に隠れてても見つけ出して放り込む。
 恐るべき執念である。

 しかしこのノリコさん、バイトのお兄様方にも
「賄い食べるだら、私が払うで好きなの食べりん!」
 とラーメンをご馳走していた。
 親方もそれを見て、相変わらずしょうがねえなあ、と笑っていた。

 今じゃ親方もバアさんも亡くなってお店もなくなって、だけど今でも私の脳裏にはあの真夜中のひとときが残っている。


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