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風宮 雅俊さん

テーマに沿った物語を、どのくらいのレベルで書けるかな? と言う事で登録してみました。 アマゾンの電子書籍キンドルで作品出してます。こちらも宜しくお願いします。 ツイッター: @tw_kazamiya

性別 男性
将来の夢 世界一周の船旅で、船室に籠って小説を書く事
座右の銘

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リバースモーゲージ

19/03/18 コンテスト(テーマ):第167回 時空モノガタリ文学賞 【 実家 】 コメント:0件 風宮 雅俊 閲覧数:106

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「ママ、不在通知が入っていたから電話しておいたよ」
 ソファーでタブレット見ている娘が、思い出したように言った。
「ありがとう。どっからの荷物?」
「銀行って書いてあったよ」
「どこの銀行?」
「知らなぁい」
 通販の荷物は明後日のはずだし、パパが注文したのかな? 銀行から荷物ってなんだろう・・・

     〜 ・ 〜

「ここに、手すりがあると便利だろ」
 業者が取り付けた手すりを掴まりながら、トイレの使い勝手を確認した。
「確かに楽だわ。もっと早くに付けて貰えば良かったわね」
 順番に便座に座っては立って、お互いに目が合うと照れくさそうに微笑んだ。
「おじいさん、どうですか? 辛くないですか」
「ばあさんこそ、どうかな? 立ちやすくなったかな」
 お互いに頷いていた。
 階段に取り付けられた手すり。玄関には手すりと段差を埋める踏み台。脱衣所とトイレには暖房。車イスになっても生活できるようにリビング側にはスロープを付けて貰い・・・、結局迷った挙句のリフォームだった。

 どうせ先は短いから、少しの辛抱と思って我慢していたリフォームだった。それに貯金は病気や葬式のために残しておきたかった。
 娘からは老人ホームに入居すれば世話もしてくれるし友達も増えるからと勧められたけれど、この家での生活を続けたかった。それに、娘には言わなかったけれどあの子の笑顔、笑い声が残っているこの空間で生活を続けたかった。
 そんな時だった、年金生活でも借りられるローンの話を聞いたのは。

 この家で元本を返済する。この家で生活をするためにこの家を手放さなければならない。なんとも矛盾した仕組み。融資の限度額も解体費用の分低く設定されていた。
「娘にこの家を残さなくていいのかな?」
 おじいさんの気持ちはこれで巡っていた。

 娘が独りで立てた。
 初めての幼稚園、小学校の入学式。大人にとってはわずかな期間でも大きくなっていた。
 小学校では、男の子を叩き倒してなんど謝りに行った事か。どっちがいじめっ子だか分からないほどだった。
 中学生になってからの背丈はほとんど変わらないのに、天使の笑顔は女神の微笑みに変わっていった。
そして、結婚式前夜。すべて刻まれていた。

娘に相談すると好きにして良いよと二つ返事だった。
「あの子のところも家を持っているから、ここに戻ってくる事はないよ」
「そうだなぁ。幸せそうに生活しているから、そんな心配はいらないか」
 お互いに、いつも笑顔の娘を思い出していた。
「大切なのは、これだけだよ」
「そうですね、おじいさん。私たちはこれの傍で生活をしたいんですよ」

     〜 ・ 〜

「宅急便です」
 パパがリビングに持ってきたのは、二メートルはある長い物だった。
「ママの荷物だけど、どうします?」
 パパは久しぶりに強気に出ていた。
「疾しい事はしてないわ!」
 ママの言葉を合図に一気に包みを切り開いた。

 出てきたのは、背丈の刻まれた柱だった。


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