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若早称平さん

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セカンドバースデー

19/03/15 コンテスト(テーマ):第166回 時空モノガタリ文学賞 【 おくりもの 】 ※時空作者による選考回 コメント:1件 若早称平 閲覧数:220

時空モノガタリからの選評

(審査員A)
二つ目の誕生日という発想が、とても素敵ですね。5月の武元さん・後藤さんという呼び名が、3月には たけもっちゃん・ごっちゃん へと変わっていて、その友情の変化とともに、おそろいのブレスレットがほほえましく感じられました。このままでも綺麗にまとまっていると思いますが、エピソードの強化として、ブレスレットまたは二人の名前を、やがて親友へ変化していくことを予感させるような、何か運命的なものに設定する方法もあるかもしれません。

(審査員B)
良かった点:仲良くなるキッカケを探していた武元さんの、不器用なまでの真っ直ぐさと早とちりな部分が可愛くもあり心配な部分でもある。そう感じさせる展開が、第一段落の終わり方と第二段落の「またその話・・・」で、やっぱりと納得させている。構成の妙を感じました。
気になる点:「クラスメイト(達の私に対する)視線が・・・」括弧の部分を「の」に置き換えた方がリズム感が良くなると感じました。他にも丁寧過ぎる説明がリズム感を損なっていると感じました。

(審査員C)
人生の一ページに残る青春の幕開けは、誰もが願望として持っているような気がします。思いがけない嬉しい出来事に戸惑う主人公の心を、ためらいもなく射抜く武元さんの行動力が、とてもテンポよく描かれていて素直に楽しかったです。二人の呼び方が変化した所も、近づいた距離感を感じて心が和みました。時間をかけて育てたかけがえのない友情こそが、なによりもの大切な贈り物だったのかもしれません。
ただ、クラスメイト全員が誕生日を間違うはずはなく、彼らが面白がって武元さんに話を合わせたとしても、文章内に説明がないと伝わりません。伏線を回収する一言があると良かったですね。

(審査員D)
良かった点:爽やかな雰囲気が魅力の作品だと思います。個人的にタイトルが良いなと思いました。友だちが出来て、これまでとは少し違う自分というか、生まれ変わると言ったら大袈裟ですが、そういう意味合いも感じたので、とてもしっくりくると思いました。ラストのふたりの情景も浮かんできて、卒業のしんみりとした空気感、これからも続いていくであろうふたりの友情を感じられて良かったです。
こうすると良くなると思う点:きれいに纏まっていて、好感の持てる作品だと思います。特に改善点が個人的には見当たりませんでした。

(審査員E)
勘違いから生まれた友達との思い出の日を、自分の二つ目の誕生日として大切に思っている主人公。前半の入学当初の場面では会話の節々から初々しさが感じられ、戸惑う主人公や友達になっていく過程が鮮明に描かれている。後半の卒業式での気心知れた仲になってからの会話の様子は前半との対比が上手く、友達想いの二人の関係の変化がよく伝わってくる。ただ、セカンドバースデーという設定自体は面白いものの、その後の展開はもう少し工夫の余地があったように感じた。

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 教室に入るといつもと空気が違うのを感じた。クラスメイト達の私に対する視線がなんだかよそよそしい。妙な緊張感とともに鞄をおろして席に座ると数人の女子が私の席へと近付いてきた。みんな一様ににやにやしている。
「せーの、誕生日おめでとう!」
 その言葉を合図に私に向けられたクラッカーが一斉に音を立てた。少し遅れて教室のあちらこちらでもクラッカーが炸裂する。「びっくりしたでしょう?」と言って私に近付いてきたのは、入学式からわずか一ヶ月でクラスの中心になった武元さんだった。あっけに取られる私はされるがままに『本日の主役』と書かれたたすきを掛けられた。その場にいた全員が共犯者らしく、教室中から温かい拍手があがった。
 正直驚いた。なにせ今日は私の誕生日でもなんでもなかったのだから。
「入学式の日に言ってたでしょ? 後藤だから五月十日のゴトーの日が誕生日だって。ウチそれを覚えてたんだ」
 なるほど、と私は心の中で合点がいった。確かに入学式の日の自己紹介でそのようなことを言った。ただ正確には「後藤なのに三月十日のサトーの日が誕生日」だ。
「あの……」
 私は彼女の勘違いを正そうとした。が、そこで思いとどまった。もしもこれが嫌がらせやいじめの類いならば受けて立つところだが、武元さんの笑顔を見ると彼女に悪気はないようだ。おそらく、多分、きっと。ならばここで否定することは彼女に恥をかかせることになるのではないか? いまだクラスになじめていない私にサプライズを仕掛けて、勘違いでしたとなっては彼女の株が下がってしまうんじゃないか? 逡巡した挙げ句、
「……ありがとう」と精一杯空気を読んだ。
「これ、プレゼント。あとで開けてみてね」
 そう言って武元さんは綺麗にラッピングされた袋を私の机の上に置いた。さすがにそこまでしてもらうのは気が引ける。慌てて返そうとしたところで先生が入ってきた。私へのサプライズで浮き足立っていたみんながバタバタと授業の体勢に入る。出席を取りながらめざとく私のたすきを見つけた先生は、
「ん? なんだ後藤、誕生日だったか?」
 と怪訝そうな顔をする。
「早く授業始めてください」
 私はなんとか誤摩化そうと優等生口調で言った。先生は腑に落ちない様子ながらも教科書を開き、いつも通りの授業が始まった。
 プレゼントの中身はなんなのだろう? 机の中にしまった袋をこっそりと触ってみた。なんとか先生に気付かれないように開封出来そうだ。両手を机の中に突っ込み、ゆっくりとリボンを解く。
中の箱を静かに開けると、星のチャームの付いたブレスレットが現れた。
 驚いて三つ隣の席の武元さんを盗み見る。彼女は私の視線に、そしてプレゼントを見たことに気付いたらしく、右手を私に見えるように上げた。その腕には私が貰ったものと同じブレスレットが揺れている。
 オ、ソ、ロ、と武元さんの口元が動いたように見えた。どうして彼女は私なんかにここまでしてくれるのだろう? そんなに仲が良いわけでもないどころかほとんど話したこともないのに。
 なにか裏があるんじゃないかと勘ぐりながら放課後、校門で武元さんを待った。
「そんなのこれから仲良くなりたいからに決まってるじゃん」
 私の疑問に武元さんはあっけらかんとして言った。
「どうして私なんかと?」
「え? 仲良くなりたいのに理由なんている?」
 無邪気な子供のような武元さんの笑顔に、まず人を疑うところから入る自分の性格が急に恥ずかしくなって顔を伏せた。
「あのさ、……実は今日私誕生日じゃないの。ごめんね」


 早咲きの桜が花びらを風に乗せる。私は卒業証書の筒を刀代わりにチャンバラをしているクラスメイトの横をすり抜けて校門へ急いだ。どうして男子というのはいくつになっても子供みたいな遊びをするのだろう?
「おまたせ、たけもっちゃん!」
 私が声を掛けるとたけもっちゃんは筒を大きく振って答えた。
「あ、そうだ。ごっちゃん誕生日おめでとう」
 卒業式の今日は私の本当の誕生日だった。たけもっちゃんがプレゼントを出そうとしてか、鞄の中を探るのを見て入学して間もない日のことを思い出した。
「またその話? もう忘れてよ」
 たけもっちゃんはこの話をするといつもそう言って恥ずかしそうに私の肩を叩く。でも私が忘れるわけがない。人生で一番の親友がくれた大切な二つ目の誕生日なのだから。
「クラス会行くでしょ? 一回帰る?」
「んー、どっかで軽く時間潰そうか」
「じゃあさ、あそこ行こ。こないだできたケーキ屋さん」
「いいね! いこいこ」
 私はたけもっちゃんの手を取る。彼女の手にはもちろん、私の右手にもあの日もらったお揃いのブレスレットが光っていた。


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このストーリーに関するコメント

19/03/18 雪野 降太

拝読しました。
タイトル付けの巧みさに唸りました。入学式から1か月という雰囲気も描写の節々から感じられたように思います。悪い意味で話題を引きずることがなくて良かったとホッとしました。
読ませていただいてありがとうございました。

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