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高月雫さん

自由奔放、耽美主義、とにかく綺麗なものが好き・・・なのは、お話の中、現実は厳しい!

性別 女性
将来の夢 大富豪
座右の銘 痩せた土地で育った葡萄ほど、良いワインになる。

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猫が嫌いな花屋の娘

19/03/14 コンテスト(テーマ):第166回 時空モノガタリ文学賞 【 おくりもの 】 ※時空作者による選考回 コメント:2件 高月雫 閲覧数:214

時空モノガタリからの選評

(審査員A)
いきいきとした勢いのある文章に、どこか目が離せなくなるような魅力を感じます。素敵な物語なので、細かな背景や登場人物の心の機微を、もっと知りたいと感じました。この限られた短い字数の中では少し多めに思える読点や、重複している表現(例:複数出てくる「子供のポール」のような箇所)を省略したり、「・・・・・・」を「……」(3点リーダー)に変えたりすると、重要な終盤のシーンで、さらに描写を増やすことができるのではないでしょうか。

(審査員B)
良かった点:読みやすい文章だった。
気になる点:読後に感じるのはジョアンの「トラウマ」でした。猫からの「おくりもの」よりジョアンの異様さの描写が強かったと感じました。「プレゼントを受取る→愛する者を失う」と言うトラウマ。猫を見ると昔を思い出す。が重要な要素だと思うが、ミスリードの言葉があると感じた。例えば4段落目の「猫を嫌う」より「猫を避ける」の方が良いのでは? 7段落目の「徐々にエスカレート」は猫の贈り物に好意的なジョアンの言葉としては贈り物に否定的な感情を抱いていると感じさせると思う。

(審査員C)
苦労をしながらも家族と幸福に暮らすジョアンが、何故か贈り物を頑なに受け取らないという、ちょっとした謎を軸にした展開で、読者の好奇心をくすぐります。日常的な物語なのに、ストーリーの起伏のつけ方が上手く、ラストまで惹きつけられました。孤独だった主人公と猫との繋がりにも感情移入しやすく、全体的に温かみのあるホームドラマで読後感も良かったです。深まる家族の絆を強く感じられ、贈り物というテーマとしても分かりやい作品でした。
同じ文末が続くと文章が単調になるので、ここを変化させる工夫をすると、より豊かな表現力に磨かれた物語になると思います。

(審査員D)
良かった点:ヒロインを理解しようとする主人公の存在が良いなと思いました。
こうすると良くなると思う点:タイトルが少し気になりました。『猫が「嫌い」な花屋の娘』とありますが、厳密には「嫌い」という言葉はぴたりと当てはまらないような気がします。悲しいことがあって主人公はトラウマになっているのですが、イコール「嫌い」という言葉が個人的にうまく結びつきませんでした。もう少し、主人公の気持ちや言葉を慎重に吟味すれば良いかなと思いました。

(審査員E)
猫の贈り物というテーマの独特の捉え方が特徴の作品である。ジョアンの幼い頃のトラウマや、夫婦の愛情によってそれを乗り越える過程が鮮やかに描かれている。主人公の妻を大切に思う気持ちがよく伝わってきた。ただ、一文一文がぷつぷつと切れていて読みにくさを感じる点が勿体ない。また、虐めの設定など中途半端になっていて書ききれていない部分があるように感じる。前半は説明的で、後半は逆に展開が単調になっているところも、もう少し工夫のしがいがあったように思う。

この作品を評価する

ジョアンは、花屋の看板娘だった。
誰にでも優しくて、明るくて、誰からも好かれていた。
街で一番裕福な家に育った僕も、一目で恋に落ちた。

明るい金髪に、澄んだ空色の目・・・その目が寂しげだったのは、両親を早くに無くして、叔父と叔母に育てられ、そして少し貧しい生活をしていたせいだと思っていた。
でも、紹介された、叔父さんと叔母さんは、とてもいい人だった。
僕との結婚を、心から祝福してくれた。
酷い仕打ちをする人達には見えなかったし、ジョアンもそう言っていた。

結婚生活も、幸せだった。
ジョアンは、かいがいしく僕の世話をしてくれ、美味しい料理を作ってくれた。
僕の事を、いつも優しく包み込むように愛してくれた。
産まれた子供のポールも、とても可愛がった。
ジョアンは、良き妻であり、良き母親でもあった。
ただ、気になる事がふたつあった。
ひとつは、僕のプレゼントは、何も受け取らないこと。
どんな高価な指輪も、ドレスも、バッグでも。
かたくなに、断るのだ。
子供のポールが、手書きの絵をプレゼントしたときでさえも・・・・・・。

あと一つは、極端に猫を嫌う事。
他の動物には、笑顔で近寄り、撫でたがるのに、猫だけは、見ただけで顔を背け、時には涙ぐみながら、足早に立ち去ろうとする。
理由を尋ねたけれど、答えてはくれない。

ある日、幼いポールが、段ボールに入った、捨て猫を拾ってきた。
それを見た、ジョアンの顔が、わなわなと震えた。
「ママ?」
ポールは、いつもとは全く違う形相の母親に、怯えた表情を浮かべた。

寝室へと走り去った、ジョアンの跡を追った。
ベッドにうつぶせになり、泣きじゃくるジョアンの、金髪を、ためらいがちに撫でていると、ジョアンはゆっくりと体を起こし、子供の頃の話しを始めた。

子供の頃、両親がいなくて、虐められていた事。
そんなジョアンの前に、傷ついた猫が現われ、家に連れて帰って、手当をした事。
そして、その日から、猫は孤独なジョアンの、大切な「友人」になったのだ。
猫が元気になって、外に行くようになってから、朝、目を覚ますと、枕元にバッタの死骸が置いてあったのだ。
猫が、「獲物」を、ジョアンに贈るようになったのだ。
「贈り物」は、猫が元気になるにつれ、徐々にエスカレートしていった。
1匹だった虫が数匹になり、ネズミの死骸になったとき、側で寝ていた叔母が悲鳴を上げた。

しゃくりあげながらジョアンは続けた。
「気持ち悪いからって、猫を・・・・・・・・猫を、遠い街へ、叔父さんが捨てに行ったの。段ボールに入れてね。私は、泣いてお願いしたの。段ボールから猫を出そうとしたのよ。でも駄目だった。猫も鳴いてた。ずっと鳴いてたの。」
3日後、猫は、やせこけて、ボロボロになって、ジョアンの元へ帰ってきた。
そして、ぽとりと、目の前に「獲物」を落とした。
再び叔母が叫び声を上げ、叔父は、はるか遠い街へと、猫を再び捨てに行ったのだ。
猫はそれっきり、二度と、戻る事はなかった・・・・・・・・・・・・・

「段ボールに入れられたときの姿、目、声・・・全部忘れられないの。あの子は、精一杯のお礼を私にしただけなのに・・大切な、大切な私の友達だったのに・・・」

ああ、ジョアン。君の心は、そんなにも大きな傷を負っていたんだね。
僕は、力を込めて、ジョアンの体を抱きしめた。

「ねぇ。ジョアン。僕の事を愛しているかい?」

「愛しているわ、心から」

ジョアンは、泣きじゃくりながら、答えた。

僕は、寝室を出て、リビングで、箱を抱えてしょんぼりしているポールの肩を叩いた。

ポールと共に寝室に戻ると、段ボールの箱から子猫を取上げた。
子猫は、小さく、みゅうとないた。
声にならない悲鳴を上げて、後ずさりするジョアンの腕に、子猫を抱かせた。

「僕からの贈り物だよ。受け取ってくれるね。」

「・・・・・・・・」

ジョアンの目は、まだ、不安に揺れている。

「誓うよ。絶対に僕は、この猫をどこかにやったりはしない。この猫は、今日から、うちの子だ。」

「やったー!」

ポールが、ぴょんぴょん跳ねて、そして、子猫ごと母親を抱きしめた。

「・・・・・本当?絶対???」

「命にかけても」

ジョアンは、声を上げて泣いた。子供のように。
そして、子猫を抱きしめた。
「一緒よ。ずっと一緒よ」

子猫は大きくなり、僕たち家族も幸せな日々を送った。

時々、ひょっこり、枕元に「贈り物」が置かれていて、そんな朝のジョアンは、輝くような笑顔を見せて「ありがとう」と、猫を撫でた。
その瞳に、もう陰りはなく、僕は、心からの幸せを噛みしめるのだった。


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このストーリーに関するコメント

19/03/18 雪野 降太

拝読しました。
猫との別れがトラウマになっているヒロインへの確固たる対応に、主人公の自信が感じられる作品でした。寝起きの枕元に虫でもネズミでもドンと来い、なヒロインのたくましさも際立っていたと思います。
読ませていただいてありがとうございました。

19/03/19 高月雫

雪野 降太様

コメント、ありがとうございます。
ヒロインがとても、心の優しい人物である事。
そして、主人公が、そのヒロインの優しさをよく知っていて、愛していることが伝わっていたら、うれしゅうございます。
コメント、とても励みになります。
これからも、宜しくお願い致します。

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