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海見みみみさん

はじめまして。 時空モノガタリで修行させていただいています。 焼き肉が大好物。

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頼りないギフト

19/03/13 コンテスト(テーマ):第166回 時空モノガタリ文学賞 【 おくりもの 】 ※時空作者による選考回 コメント:4件 海見みみみ 閲覧数:175

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 光田レントは走っていた。あと一分で高校の校門が閉まる。このままでは遅刻だ。
 仕方なくレントは自身の顔をこねた。するとなんとレントの顔がみるみる変わっていく。
 校門はすでに閉まり、体育教師が前に立っている。そこにレントは恐る恐る近寄った。
「……登校中にケガをしてしまったッス。これって遅刻の取り消しにならないッスかね?」
 レントの顔を見て体育教師が悲鳴をあげる。その顔は殴られたようにボコボコだった。

「それで細工がバレて、反省文が二倍と」
 昼休み。レントの話を聞きあきれる男が一人。新堂サイト、レントのクラスメートだ。
「なんでバレたッスかねえ?」
「レントのギフトが学校で有名だからだよ」
 ギフト……英語で贈り物、才能を意味する。レントは顔を自由に細工できる才能を持っていた。しかしこの才能、実に役に立たない。
 例えば前、街で女の子が不良に絡まれていたので、レントは顔をコワモテに細工して仲裁に入った。しかし怖い顔でも、レントの体は貧弱。不良にボコボコにされてしまった。
 スーパーに行った時、卵の特売がお一人さま一つまでとあった。レントは顔を細工。何度も別人のフリをして卵を買おうとした……が顔が違っても、服が同じならすぐバレる。レントはその店を出入り禁止になった。
 一度イケメンに化けて、女の子からモテようとしたこともある。最初は上手くいったが、レントは陰キャ。メンタルが陰キャ丸出しで、女の子たちはすぐレントから離れていった。
 この通りギフトは頼りないし、周りからは不気味がられ、レントは友達がいなかった。話しかけてくるのは物好きなサイトくらいだ。
 そしてそんな変わり者のサイトは、才能にも恵まれている。顔はイケメンだし、頭もよく、性格も優しいときた。レントとしては今の才能より、サイトの才能を分けて欲しいぐらいだ。
 その時、サイトのスマホが着信する。画面を見ると、急にサイトの顔が引きつった。どうしたのかとレントが画面をのぞきこむ。そこにはあまりに情熱的過ぎる、悪く言えば気味の悪いラブレターが表示されていた。
「最近やたら届くんだ。知らない子からで、オレに一度会いたいって」
 サイトが震えながら説明する。いわゆるストーカーだろうか。怯えきっているサイトを見ると、レントは放っておけなかった。
「……なるほど、ここはオレに任せるッス!」

 サイトはメールに答え、ストーカーと夜の公園で会う約束をした。しかし実際に会うのはサイトではない。顔を細工したレントだ。
 サイトがストーカーに会っても、厳しいことは言えないだろう。だがサイトに化けたレントなら、いくらでも辛辣なことを言える。
 待ち始めて三十分。公園に人影が現れた。ギョロリとした目の黒服の女。女はレントを見るなり、ニタリと笑った。
 奇妙な女がこちらに近づいてくる。レントは身構えつつも、口を開いた。
「悪いけれど、君とつきあう気はないッス」
「……だいじょうぶ、関係ないわ」
 奇妙な女は変わらずニタリと笑うと、次の瞬間、懐からナイフを取り出した。
「いっしょに死にましょう!」
 予想以上にクレイジーだった奇妙な女。女がレントに突進してくる。
 そこに飛び出したのは、しげみに隠れていたサイトだった。サイトが女を取り押さえる。
 さらにレントが低いうなり声をあげ、両手で顔を覆い、かきむしるような仕草を見せる。するとレントの顔は……。
「ば、バケモノ!」
 そう、レントの顔はぐちゃぐちゃのグズグズ。まさにバケモノのようになっていた。
「二度とサイトに近寄るんじゃないッスよ?」
 女に詰め寄るレント。女は恐怖と混乱のあまり、悲鳴をあげ逃げ出してしまった。
「これで当分はだいじょうぶッスね」
 バケモノ顔を再びいじくると、レントの顔は元に戻っていた。そこにサイトが安堵のため息混じりに話しかけてくる。
「レントのおかげで助かったよ」
「こちらこそ、おかげでようやく自分の才能を活かせたッス」
 嬉しくて笑顔のレント。するとサイトは少し照れた様子でこう言った。
「……その、本当にありがとな、親友!」
 サイトから飛び出した言葉。それにレントは目を丸くする。レントはサイトのことをクラスメートくらいに思っていた。それも嫉妬混じりの。でもサイトはレントを親友だという。レントの顔は一気に赤くなった。
「あれ、またギフトで顔いじった?」
「これは違うッス!」
 そう言いつつレントは親友というギフト……贈り物をもらい、こっそりほほ笑んでいた。


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このストーリーに関するコメント

19/03/17 雪野 降太

拝読しました。
自分の利益のためにではなく誰かのために使おうとして、持て余し気味だった才能にも新たな活路が見えてくる、という非常に示唆に富んだ作品でした。
読ませていただいてありがとうございました。

19/03/17 海見みみみ

雪野 降太さん
ご覧いただきありがとうございます。
気に入っていただけたとのことで、大変嬉しく思います。

19/04/09 滝沢朱音

自分の顔を、粘土のように自由自在にこねて変えることができたら――という発想、オリジナリティがあっていいですね。
親友と呼ばれて思わず顔が赤くなるラストがほほえましく、面白かったです。

19/04/09 海見みみみ

滝沢朱音さん
コメントありがとうございます。
設定を褒めていただけて嬉しいです。

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