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ササオカタクヤさん

文章でササオカタクヤの世界を伝えられたらいいなと考えてます。 キャラクターたちがイキイキとした物語を書いて、読んだあと何か残れるような作品にしていきます。

性別 男性
将来の夢 自分の作品を多くの人に読んでもらうこと
座右の銘 生きているだけで幸せ

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あなたからの贈り物

19/03/06 コンテスト(テーマ):第166回 時空モノガタリ文学賞 【 おくりもの 】 ※時空作者による選考回 コメント:1件 ササオカタクヤ 閲覧数:188

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毎年この季節がやってくるとあなたのことを思い出す。74歳になっても私の中であなたは輝き続けているの。
そんなあなたが亡くなってから、もう6年が経とうとしてる。息子たちから気遣ってもらいたくなくて、つい平気な素ぶりをしてしまうけど、本当は誰かに縋りたい気分になるの。一人でいることに慣れるどころか、日に日に寂しい気持ちが増してくるわ。

あなたは出逢ってすぐに結婚しようと言ってくれた。正直、カッコいいワケでもないし面白いワケでもないあなただったけど、真っ直ぐな性格に私はすぐ惚れてしまったの。だから私はあなたに小さく頷いた。
結婚当初は子育てが忙しくて、お互い打つかることも多かった。それでも息子たちは大きくなって、立派に巣立って、孫という宝物を私たちに見せてくれたわね。私たちの夫婦仲はどこの夫婦よりも温かく結束の強いものへと変わった。
そんなあなたが余命半年と宣告された時、私は生きる希望が無くなったの。可笑しいわね、私があなたを支えてあげないといけないのに。あなたは私に微笑んで言ったわ。
「残りの人生、一緒に過ごしてください」と。私はその言葉で我に帰り、あなたとの時間を今まで以上に大切に過ごした。
そして最期にあなたはこう言ったの。
「ごめんね。金婚式に思い出作りたいって話してたのに。間に合いそうにないや。ごめん」
私は首を大きく横に振り、涙ながらにあなたに伝えた。
「今まで本当にありがとう。私はあなたといれて本当に嬉しかったわ」
私の言葉はあなたに届いたか分からないけど、あなたは最期薄っすらと微笑んでいたような気がするの。

今年であなたと結婚してから50年が経つ。あなたがもし生きていたら、どんなことを金婚式でしたのかな?と想像してしまう。
最近あなたの夢ばかり見てしまう。なるべく起きないようにしたい。多くの時間をあなたと夢の中で過ごしたい。
それでも夢の中のあなたは微笑みながら
「また明日ね」
と言い姿を消してしまう。私は毎朝涙を流して目覚めるの。もうあなたのところに行きたいわ。そう思っていた私に小さな箱が郵便で届く。その小さな箱の差出人はあなただった。その箱を開けると一通の手紙と小さな紙袋が入っていた。

希美子さんへ。
こんな形で申し訳ない。まずは僕とずっと一緒に過ごしてきてくれてありがとう。やっと君と結婚してから50年が経ったね。
希美子さんと出逢ってから世界が変わったように毎日が楽しかった。そしてこんなに幸せ者でいいのかと思った。希美子さんとの会話はいつも面白くて笑いが絶えなかったね。希美子さんが作る料理はいつも美味しくて、僕は食べ過ぎて太っちゃったね。希美子さんは笑うと目尻がでれっとして、薄っすらとエクボができる。その可愛らしい笑顔が僕の宝物なんだ。それに希美子さんの寝顔は子供のようで、ずっと眺めていたくなるんだよ。
何年経っても変わらない。僕は希美子さんと出逢えて良かった。本当にありがとう。
金婚式一緒に迎えられなくてごめんね。その代わりにこっそり作ったストラップを君に贈るよ。初めて作ったから、出来が悪くて笑っちゃうと思うけど、よかったら付けてね。
希美子さん、残りの人生気楽に過ごしてね。

敏夫より。


美しい字を書くあなたが書いたとは思えないほど、ユラユラと揺れている字で書かれた手紙だった。それでも手紙の内容を見れば分かる。あなたが一生懸命書いた手紙だと。きっと病室で必死に書いてくれたんだろう。私はそれだけで涙が止まらなかった。一文一文に散りばめられているあなたの優しさを私はしばらく噛み締める。懐かしい。私の心の中であなたがたくさん溢れるほど湧き立つ気がした。
そしてあなたが作ったストラップが入っている小さな紙袋を開ける。出来が悪くて笑っちゃうと書かれていたストラップは、確かにあなたの不器用さが滲み出る作品だった。ただ手に取ってみると、作ってる姿が想像できて涙が溢れちゃう。そして私は笑った。
「本当あなたらしい」
しばらくあなたが作ってくれたストラップを眺めているとあることに気付く。小さくマジックで「アイシテル」と書かれていることに。

どんなにいいところに連れてって貰うよりも私にとって嬉しい金婚式になった。あなたと一緒に過ごせたらもっともっと嬉しいけど、それは叶わない。
それでもこのストラップが私の側にいてくれるなら、もう少し頑張れる気がした。


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このストーリーに関するコメント

19/04/09 滝沢朱音

健やかなるときも、病めるときも…と、どんなに誓い合っても、やがて死が二人を分かつときがくる。
二人とも元気に金婚式をむかえられる夫婦って、いったいどのくらいいるのかな…そんなことを考えながら読みました。
不器用なストラップが心に沁みます。素敵なお話でした。

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