1. トップページ
  2. 贈る言葉

浅月庵さん

笑えるでも泣けるでも考えさせられるでも何でもいいから、面白い小説を書きたい。

性別 男性
将来の夢  
座右の銘  

投稿済みの作品

3

贈る言葉

19/03/04 コンテスト(テーマ):第166回 時空モノガタリ文学賞 【 おくりもの 】 ※時空作者による選考回 コメント:1件 浅月庵 閲覧数:282

時空モノガタリからの選評

評価点合計80点 ※審査員5名の各持ち点は20。満点は100となります。

(審査員A)
冒頭のつかみが素晴らしいですね。「贈る言葉」といえば、やはり卒業式を連想しますが、この先生は年度始めに生徒に伝えようとしている様子で、なんだか変だなと惹きつけられました。そして次から次へと繰り出される、先生らしからぬ脅しの言葉にびっくり。面白かったです。改善点としては、生徒4人のうち笠松と船井の性別がわかりにくいので、それをはっきりさせると、ラストで服従を誓うシーンの映像が、読者に浮かびやすいのではと思いました。

(審査員B)
良かった点:テーマの切り口が良い。昔から「出来る先生」は体罰でなく内申点で縛り上げるからね。更にネットを活用するなんて、時事問題を上手く取り入れたブラックな仕上がり。
スクールカーストや先生の性格や証拠集めのキッカケなどを滲ませる描写の入れ方が上手いと思いました。また、読んでいて気持ちいいと感じるのは、テンポの良さで先生視点に取り込まれているからですね。
気になる点:例えば「〇〇大学」より「あの大学」の方が勢いが途切れなくて良いと思いました。

(審査員C)
表面的な優しさを挟みながら毒を吐く先生が、生徒の悪事を次々に明るみにしていくという、支配体制の逆転劇が興味深いですね。内容は過激ですが、読み心地は良かったです。復讐のためではなく、あくまでクラスという狭い社会でのマウンティングにとどまっている所が、歪んだ教師なりの愛情を感じさせるのかもしれません。「贈る言葉」に漏れる教師の本音は、現代の教育問題にも当てはまっているように思えて、深く考えさせられました。
とても続きが気になるストーリーです。先生と生徒の対立がこの先どうなるのか、暗示させる描写を入れてみると、読者の想像もより膨らむと思います。

(審査員D)
良かった点:それぞれの生徒に「贈る言葉」はそう長くはないのですが、その中で、各生徒の性別や特徴、個性のようなものが分かる点が良かったです。きちんと配慮されているなと感じました。
こうすると良くなると思う点:「贈る言葉」のタイトル通り、最初から最後まで物語が進んでいきます。最後に、何か捻りというのか、強いオチがあればさらに良かったかなと思いました。個人的に、先生に共感できなかったのが残念でした。なぜ、ああいう言葉を贈るのか、短いエピソードや、もしくは先生のこれまでの背景のようなものが少しでも読み取れる部分があればなと思いました。

(審査員E)
非常に個性的でインパクトのある作品だった。「贈る言葉」というかたちで一部の生徒の悪事を暴き、追いつめていく教師の一人語りが独創的で面白い。卒業式ではなく三年の初めに言うという設定にすることで、この後の一年に繋げる展開となっているのが秀逸である。ただ、現実問題としてここまで悪事を働く生徒たちが先生に素直に従って復唱するだろうかという疑問が残る。また、最後の方で言葉の使い方が不自然な箇所が複数あり、勿体ないと感じた。

この作品を評価する

 先生は今日お前らに、伝えたいことがある。輝かしい未来へと羽ばたくために非常に重要なことで、言うなれば“贈る言葉”ってやつだ。
 おいおい騒ぐな。羽山、五月蝿いぞ。え? 卒業式に言うならわかるけど、三年生の頭に贈る言葉だなんて、頭おかしいんじゃないかって? なーに、遠慮するなって。そうだ。羽山、順番はお前からにしようか。

 羽山お前さ、イケメンで成績優秀だなんて、天は二物を与えるもんだよな。しかも○○大学目指すだなんて大したもんだよ。今の学力なら全然いけるよなぁ。
 ……でもさ、高校生なのに飲酒に喫煙だなんて、ちょっと調子に乗りすぎじゃないかぁ。え、とぼけるなって。証拠だってちゃんとあるぞぉ。ほら、俺の携帯画面見ろよ。これってお前の裏アカだろう? 鍵かけてたって無駄だぞ。お前がビール飲んでタバコ吸ってる写真がばっちりアップされてるし。ご丁寧にプロフ欄に高校名まで書いて、お前本当はバラしたいがためにこんなことしてるんじゃないかー? おいおい、怒るなって。怒って先生のこと殴っちまったら、停学くらって内申点悪くなっちゃうぞぉ。

 お、どうしたんだ、牧瀬。不満そうな顔して。お前も早く俺の贈る言葉が聞きたいか? そうだな、お前は容姿もスタイルも良くて、将来はモデルにでもなるのか? そうかそうか。でもそんなきちんとした夢があるなら、援助交際なんかしたら駄目だろう。しかも自分が高校生なのを逆手に取って、相手の男に脅しをかけて大金をせしめてるそうじゃないか。先生、感心しないぞぉ。汚い手を使って金を稼ぐな。ちゃんとバイトしろー。

 ……そうだ、バイトといえば。笠松、お前も裏アカ作って色々動画アップしてるだろ。さらにバイト先のファーストフード店で、お前が床に落としたポテトを悪ふざけで袋に入れて客に提供してる映像あったな。あれはいけないぞぉ。あのな、バイトをクビになるならまだマシだけど、企業側が法的措置を取ったらお父さんお母さんに迷惑かかるし、お前自身退学にだってなるぞ。わかってるのか?

 お店に迷惑をかけてるといえば、船井。お前自分ではバレてないと思ってるかもしれないけど、学校帰りに本屋で万引きしてるだろ。先生たまたま見てたし、写真にもおさめたんだよ。え、どうしてそのとき止めなかったのかだって? そりゃあお前、可愛い生徒だもの。その場で指摘して大事になったら、お前の輝かしい未来に泥を塗ると思って、指摘できなかったんだよ。なに? 俺が楽しんでるように見えるだって? そんなわけないだろう。俺は心が痛くてたまらないよぉ。

 ーーさてと。先生な、うちの生徒たちが悪の道に足を踏み入れてないか、毎日きっちり見張ってたんだよ。他の生徒にもまぁ、まだ言ってない細かい問題事は色々あったんだ。
 でも特に際立って、一軍グループの素行が酷すぎたな。先生ビックリしちゃったよ。

 ……ん、羽山。俺がこの集めた証拠をどうするのか気になるって? あはは、別にどうもしないさ。ただ俺の提示した条件を飲んでくれればの話だけど。
 うん。条件っていうのは単純さ。ただ残りの高校一年間、先生に敬意をもって接し、大人しくしていたらいい。簡単な話だろ。
 きみたちは常日頃から、俺への扱いが酷いからね。平気でタメ口利くし、少し教科書読むのを噛んだだけで馬鹿にするし、挙げ句の果てには叩いたり蹴ったりしてくる。動物園のチンパンジーでももう少しお利口さんだと思うけど、こうでもしないときみたちはわかってくれないからねぇ。

 で、どう? この条件飲むかい。羽山、牧瀬、笠松、船井。カースト上位のきみたちは、この一件で一気に下の生徒たちから馬鹿にされ、非難の目を向けられてるよ。ようやく虐げられる者の苦しみがわかったかい。自分の今置かれてる立場を理解できないなら、今度はお前らがイジメられる番にバトンタッチするけど、どうする? まぁお前らが条件飲まないなら、この証拠をお前らの顔写真と住所を添えてネットに拡散するだけだけど。

 ……そうかぁ。いや、先生わかってくれて安心したよ。お前らの判断は懸命だと思うよ。ちょっとだけ調子に乗るのを抑えれば、後は平穏な高校生活を送れるわけだからな。
 いやー、物分かりの良い生徒ばかりで助かったよ。これでスッキリした教員生活を送れそうだ。

 あ、最後に悪いんだけどさ。俺ばっかり言葉を贈呈してたら、なんだかお返しが欲しくなったというか。俺もきみたちから贈り物されたいなーなんて、へへ。この四人の他にも悪いことしてる奴はいるからさ、みんなここで一度心を入れ替えると思って。うん、先生の言った言葉をそのまま復唱すれば良いだけだから。そんな恥ずかしがるなって。いくぞ、せーの

 私たちは、先生に絶対服従します!

 ーーはは、気持ち良い。これが俺にとって、最高の贈る言葉だよ。


コメント・評価を投稿する

コメントの投稿するにはログインしてください。
コメントを入力してください。

このストーリーに関するコメント

19/03/22 クナリ

先生の悪い顔が浮かんでくるようなお話ですね(^^;)。
個人的には、最後にもうひとつ何か変化があった方がよいかと思いましたが、三年の冒頭でのこの贈る言葉というのがいい仕掛けですね……。

ログイン