1. トップページ
  2. ありえないプレゼント

とむなおさん

とむなお――です。 ちょっと奇妙な小説を書きます。どうぞ宜しく!

性別 男性
将来の夢 作家
座右の銘 ふしぎ大好き

投稿済みの作品

2

ありえないプレゼント

19/02/27 コンテスト(テーマ):第166回 時空モノガタリ文学賞 【 おくりもの 】 ※時空作者による選考回 コメント:2件 とむなお 閲覧数:173

この作品を評価する

3月24日のこと……
新宿区にある美術大学1年生のカナは、板橋区のKマンションに住んでいた。
彼女は、近くの横断歩道で困っていた老女を助けた。
感心した老女は、物陰にカナを誘うと、
「あなたはとても親切なので、これをプレゼントしましょう」
真珠のような玉が入った小袋を二つ、差し出し、
「一つはお友達に上げるといいわ」
そして、その玉の使い方を教えると、角を曲がってフッと消えた。
カナは帰宅すると、半信半疑で試してみて確認できた。

数日後の4月1日――
ジュンは同じ美術大学の2年生で、港区のNマンションに住んでいた。
そして今日は誕生日だった。
彼が、いつものようにトーストを食べてコーヒーを飲み、着替えた時、カナが訪れた。
2人は去年の春に知り合い、付き合っているのだった。
カナは、カバンからキレイな小箱を出して、
「はい、これをどうぞ」
「え、何?」
「バースデーブレゼント」
「おやおや、これは有り難う……。開けていい?」
「どうぞ」
そこにあったのは革製の小袋で、中に真珠なような玉が入っていた。
「えっ? この玉は……?」
「とっても不思議な玉なの」
その時、ジュンはピンときて、
「おいおいカナ、そういう事か……」
「えっ、どういう事?」
「今日は4月1日。つまりウソをついてもいい日――だろ?」
「違う違う! 本当に不思議な玉なのー! でなきゃ、遅刻覚悟で来る?」
「ほぅ……。じゃ、どういう事?」
「まず、この玉を片手で握って」
ジュンは、怪訝そうに言われたとおりした。
さらにカナは、周りを見て、
「何処かへ移したい物って……何かある?」
すると彼は、キッチンのゴミ袋を見て、
「それならゴミかな……」
「じゃ、もう一方の親指と人差し指で輪をつくり、あのゴミ袋をその輪の範囲に入るように見ながら、ゴミ置場へ行け――って言うのよ。そして、その玉が熱くなったらOK。やってみて」
言われたとおりやってみると、
「おっ、熱くなってきた」
すると――ゴミ袋は消えた。
「えっ、マジでー!」
「ねっ。スゴイでしょう? じゃ、学校へ行きましょう」
カナが先に玄関に向かった。
するとジュンは、輪にした指を彼女に向け、
「カナを美術大学まで移せ」
すると、手の中の玉は熱くなり――カナは消えた。
「すごーい! じゃ、ボクは普通で……」
カバンを持ち、マンションを出ると港区駅へ向かった。

その美術大学は、新宿線『美大前駅』から徒歩3分の所にあった。
ジュンが改札を出た時、後ろで騒ぎ声が聞こえた。
振り向くと、どこかの母子が踏み切りで立ち往生事で、通行人が騒いでいたのだ。
次の電車が、すぐ向こうに迫っていた。
その母親は、血相を変えて、
「お願いー! 誰か助けてー!」
ジュンは例の玉を握り、その母子を指の輪の範囲に入るようにして、
「この親子を自宅まで移せ」
すると玉が熱くなった直後――母子は消えた。
そこへ電車が入ってきた。
「あっ、消えたぞー!」
「神隠しだー!」
「いや、奇跡だー!」
それを目撃した人々は、また騒ぎだした。
ジュンは、ホッとして美大へ向かった。
ジュンが大学に着くと、完全に遅刻だった。
ので、コソコソと教室に入ると自習になっていて、隣席のヒロシが、
「おー、ジュン、お前が遅刻ってめずらしいな」
「ちょっと寝坊しちゃってさ……」
「そっか。だけどツイてるよ。講師の中村が急病だってさ」
「だから自習か……」
ジュンは、これは不思議な玉で人助けしたから――かな? と思った。
その夕方、ジュンは帰宅すると、
「まったくスゴイ玉が、手に入ったもんだよ……」
玉を革袋に戻すとテーブルに置き、駅前のコンビニで買った弁当を食べた。

翌朝、ジュンはテーブルの前で血相を変えていた。
革袋に戻した玉が、水のように溶けていたからだ。
「玉が……溶けた……」
彼は呆然としたまま、スマホを手にした。
かけた先は、無論カナだった。すると……
『ごめん。一緒に学校へ向かいながら、話すつもりだったのよ。そしたらジュンが気をきかせて、大学まで移してくれたんで、言うの忘れちゃって……。そう、あの玉を所有できるのは、その日だけなのよ……』
「そっか……」
ジュンはションボリと食事して登校していった。

その夕方、校内の図書館で、ジュンとカナも書籍を前にして座っていた。
「そんなにショックなの……?」
「……」 
「ところで、きのう『美大前駅』の踏み切りで奇跡がおきたとか……。あの犯人て、ジュンじゃないの?」
「犯人という言い方は、どうかと思うけど……そうだよ」
「やっぱり……。その親が、神様とか信じてなくて、きっと誰かが助けてくれたんだ……って、探してるらしいわよ。どうする?」
「スルーするよ……。第一、なんて説明するのさ……」
「だよねー」
2人は苦笑した。


コメント・評価を投稿する

コメントの投稿するにはログインしてください。
コメントを入力してください。

このストーリーに関するコメント

19/03/05 雪野 降太

拝読しました。
謎の老女から手渡された物質を転移させる玉――恋人に渡して、人助けもして、さあ、これからどうなる、というところで溶けて消えてしまう。あっさりと締めくくられたスピード感が印象的な作品でした。
読ませていただいてありがとうございました。

19/04/09 滝沢朱音

不思議な力を持つ玉。もしこれが本当にあれば、いろいろな奇跡が起こせそうですね!
もし、ドラ◯もんのひみつ道具みたいに名前があるとしたら、どんな名前なのかな…なんて想像してしまいました。
面白かったです。

ログイン