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僕から未来のおくりもの

19/02/26 コンテスト(テーマ):第166回 時空モノガタリ文学賞 【 おくりもの 】 ※時空作者による選考回 コメント:1件 273 閲覧数:95

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一通の手紙が届いた。
今時手紙なんていう時代遅れの代物を寄越してくるのは、大概が年金を取り立ててくるお役所様か、大量の年賀状をコピーすることだけが生き甲斐の老人ぐらいだと思っていた。
しかし、その手紙は、僕の想像とは全く逆ベクトル、つまり未来から送られていた。
未来からの手紙?
小学生の頃に大嫌いで仕方なかった馬面の教師に強要され、20の自分に向けた手紙を書いたことはあるが、過去の自分に向けて手紙を書いた覚えなんてない。まあ、未来はまだ経験してないのだから、覚えがないのは当然だが。
ともあれ僕は、イタズラだとすれば誰がどのような目的で行っているのかなどと想像しながらその手紙を読んでみることにした。僕はヤギではないので読まずに食べるなんてことはしない。
なんとご丁寧に、その手紙は差し出しの日付まで未来の日時にされており、僕は平成の次の年号を知ることに成功した。いや、この手紙が本物だとすればの話だ。
手紙は非常に遠回しな文章で書かれており、要約すると「未来では過去への郵便サービスが流行っている。僕もやってみたかったので君に出してみた。これは僕から僕へのおくりものだ」ということだった。
なんということだ。もしかすると僕は未来でも手紙を送る友達が見つけられないらしい。
手紙には、このメッセージの他に、ある場所の名前と時間が書かれていた。
「市立第2新緑公園 西門前 16時42分」。
近くにある公園である。
まだやる気のみなぎっていた頃の僕が毎朝のランニングコースに選んだはいいものの、1週間も続かず25000円したランニングウェアが無駄になった、曰く付きの公園である。僕は形から入るタイプなのだ。
しかしなんなのだろう、この指定は。
悪ふざけした昔の同級生が、僕のリンチでも企んでいるのだろうか?
今の時刻は16時30分である。
指定の時間が今日だとするなら、今すぐ家を出なければ間に合わない。
こんな時、もしも僕が冷静な人間で毎日を真面目に生き、常識という名の安全牌を踏めるような男であるならば良かったのだが、残念、未来からの手紙というキーワードに、斜に構えながらもワクワクしてしまうのが僕であった。
すぐさま玄関へとって返し、公園までの道のりを走った。
すぐに息が上がる、やはりランニングは続けるべきだったのだろう。
まあ、過去は悔やんでも仕方ない。
今の僕には未来の手紙があるのだ。
果たして、僕は指定された時間に公園へと到着した。
周りに人は見当たらない。
いやもしかしたら見当たらないだけで、本当は遠くの方からノコノコ出てきた僕のことを笑っているのかもしれない。
やはり、当然のように、イタズラだったのか。
ため息をついた。世の中には辛いことばかりだ。
そもそも、後10年やそこらで時間を遡る技術など完成するはずもないだろう。世の中そんなに、面白くは出来ていない。きっとこれからも、過去を悔やみ、現実に疲れ、期待のできない未来に向かって僕は生きていくのだ。
慣れない全力ダッシュで体力を使った僕は、必要以上にボロボロになったメンタルを抱えて家に帰ろうとした。
当然だ。このまま此処にいたら、それこそこのイタズラを仕掛けた奴に笑われてしまう。
と、その時、後ろから声をかけられた。
ああ、帰るのが間に合わなかった。これから馬鹿な僕に対する罵倒と嘲りと溢れんばかりの侮辱の言葉が産み出されるのだらう。
諦めに似た感情をもって、僕は振り返った。
「えと……鈴木くん、だよね……?」
「あー、あれ、ん? ……本原さん?」
本原さんは自分から声をかけてきた割に驚いたような顔をしている。
僕にとっても意外だった。何故ここに本原さんが?
教室にいる彼女は、こんなイタズラを仕掛けるタイプには思えなかったのだが。
いや、人は見かけによらない、きっと彼女は可憐な笑顔の裏に残酷な本性を隠しているのだろう。
僕は精一杯の虚勢を保とうと、胸だけは張ることした。
「僕に、何か用?」





一通の手紙が届いた。
そこには、私と同じ字で、「愛しの彼に告白したいのなら、この場所に行きなさい。彼が待ってるわ」と書かれていた。
なんなのだろう。
私は鈴木くんの事は友達にも話していないのに……。
でも……。
迷った時は、ドキドキする方に行きたい。
私はそう思って、玄関を飛び出した。


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このストーリーに関するコメント

19/03/05 雪野 降太

拝読しました。
騙されまいと身構えながらも好奇心を抑えられない主人公の期待感が滲み出る作品でした。『世の中には辛いことばかりだ』と嘆息する主人公の背景も気になるところです。
読ませていただいてありがとうございました。

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