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夏日 純希さん

名前は「なつのひ じゅんき」と読みます。誰かに届くなら、それはとても嬉しいことだから、何かを書こうと思います。 イメージ画像は豆 千代様に描いていただきました(私自身より数億倍、さわやかで、かっこよく仕上げていただきました。感謝感激) Twitter(https://twitter.com/NatsunohiJunki) 豆 千代様 HP:MAME CAGE(http://mamechiyo555.tumblr.com/?pagill )

性別 男性
将来の夢 みんなが好きなことをできる優しい世界を作ること。 でもまずは、自分の周りの人を幸せにすること。
座右の銘 良くも悪くも、世界は僕に興味がない。(人の目を気にし過ぎてるなってときに唱えると、一歩踏み出せる不思議な言葉)

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ミライ・ザ・チョッパー

19/02/26 コンテスト(テーマ):第166回 時空モノガタリ文学賞 【 おくりもの 】 ※時空作者による選考回 コメント:2件 夏日 純希 閲覧数:128

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大学で講義が終わると突然の雨。
傘がなければ不幸の始まり?
ううん、それはイケメンが傘を貸してくれない場合に限る。ふふん、そうよつまり不幸の始まり。
今日はだめかと、長いため息。用事がある日に限ってこれだ。とりあえず雨空にチョップしてみた。痛かったよ、なんか心の辺りが。
しばらくすると幸福が舞い降りた。
「傘、使うか?」
それは医学部のプリンス手塚君だ。経済学部の私とは同じ大学でも、偏差値とか将来性とか、生涯で口にする有機野菜の量とかが断然違う人だ。
「でも…私相合い傘とかはちょっと…」
ちょっと大丈夫ですけど、一応ね。
「傘二つあるから遠慮な…いてっ、何で叩くの?」
「叩いてないし。チョップだし。むしろ乙女の手に頭突きしないでよ?」
無茶言うなよと柔らかに傘を開いて渡してくれる手塚君。

彼が医者になるなら、きっと日本の医療も大丈夫。
将来医療費が上がっても、私の怒りも穏やかだろう。きっと0.3%くらい穏やかだろう。
和んだところで、ところでの話。私は手塚君にある思いを抱いている。
彼は未来を知っているのではないか、なんて突拍子もない思いを。

私が傘やらハンカチやらティッシュやらを忘れて困ると、かなりの確率で手塚君は助けてくれる。それは年頃の乙女としてどうかはさておき、準備とタイミングの良さは不自然なくらい。ハンカチならまだしも、毎度、傘を二つ持っているわけはない(いつも持っているわけではないことは確認済み)。さらにダメ押しは先週のホワイトデー。バレンタインに謎の男気を発揮した私は誰にもチョコを配らなかったが、手塚君はホワイトデーに私にプレゼントをくれたのだ。
「来年バレンタインのお返し…いや、何でもない」
と彼は誤魔化しながら言った。

手塚君は未来少年説が有力だとすると来年の私は手塚君にチョコを渡すのだろうか。いや、そんなこと畏れ多いけど。他の女子の反感とか特に恐れ多いけど。けど、そうなったとしても、来年のホワイトデーにお返しで十分なはずだ。来年のバレンタインとホワイトデーの間に、私たち二人を引き裂く何かがあるのか。引き裂かれた二人の愛の炎は…いやいやまずくっつくことがありえない。

なんて、妄想を膨らませていた後、私は原因不明の体調不良におそわれた。いくら検査をしても原因はわからなかった。何かのウイルスが侵入したのでは、という診断しかなく、血液検査も肝臓の値が少し悪い程度だったが、1日中体がダルくてひどい眠気に定期的に襲われた。
現代医療の限界は意外と身近にあった。

お医者さんはよくなるなんて言うけれど、根拠がないだけに信じられなかった。そして手塚君からの不可解なプレゼントは、来年のホワイトデーまでに死んでしまうということを意味しているように思えた。なぜかそれがしっくりきた。

春休みが終わり、私は一人どんよりと歩く。
「なんか元気ないのな」
どこからともなく手塚君は声をかけてくれた。
私は体の状態を手塚君に告げた。手塚君はそれなら時間はかかるけどよくなるよ、とお医者さんと同じことを言った。
「ねぇ私、来年の二月か三月くらいに死ぬんでしょ?」
「ないない。ウィルスが特定できなくても、免疫がウィルスをやっつけるから」
その否定は心に響かなかった。体はだるくなる一方だし、薬も出ないのだ。
信じてという言葉に、私はそれを否定するチョップを繰り出した。
「信じてほしいなら、あのホワイトデーの意味を教えてよ」
「話したら信じてくれるの?」
私は恐る恐る頷いた。
「…今年ホワイトデー渡しとけば、来年のバレンタインはお返しとしてでももらえるかな、と。
 先攻後攻の逆転みたいな?」
ん? それはとてもわかりにくいぞ未来少年? それはただの恋する少年じゃないか? 恋? 誰に恋??
「じゃ、じゃあ傘とかハンカチとかなんであんなタイミングよく貸してくれるの?」
「それ何か関係あんの?
 ハンカチは常に二枚持ち。傘は天気予報見て、昼から雨降りそうな時だけ予備持つようにしてる。
 ズボラな誰かさんのために」
 ず、ズボラ万歳! いや、そうじゃなくて、ここは…。
「わ、私だって生涯で口にする有機野菜の量とか…手塚君と同じ位だったらいいなって思うよ」
残念なくらいに意味不明だった。
「ほんと面白いのなお前…って、いたっ」
とりあえずチョップ。だって悪いのは少しだけ私であって、大部分は私ではない。そこにチョップする権利と、チョップされる義務がある。
そして、私は元気になると信じてみることにした。
多分私は、どんな言葉よりも、手塚君が暗示した二人がプレゼントを贈りあえる関係になる未来を単に信じたかっただけだった。
しばらく後でちゃんと元気になったが、思い出しては恥ずかしくなって、すごい勢いで虚空にチョップをくりだすことが今でもときどきあったりする。


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このストーリーに関するコメント

19/03/04 雪野 降太

拝読しました。
正体不明の体調不良も、気になる男子の優しい言葉で元気になると信じたくなってしまう主人公の乙女らしさが眩しい作品でした。
読ませていただいてありがとうございました。

19/03/04 夏日 純希

コメントありがとうございます。
コメントして回っているなんて、天使みたいな方ですね。
眩しいとかもったいないお言葉を…。
ふむふむ照れるな、自分でもちょっと読み返してみよう。
…ぎゃー誤植発見。

誤:彼は言って誤魔化しながら
正:彼は誤魔化しながら言った

直してもらえないかな…。
事務局さんの優しさにすがってみます(笑)。

そんなどたばたしながらですが、ありがとうございました。
一人でも読んでもらえるとホクホクと嬉しいものです。

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