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高月雫さん

自由奔放、耽美主義、とにかく綺麗なものが好き・・・なのは、お話の中、現実は厳しい!

性別 女性
将来の夢 大富豪
座右の銘 痩せた土地で育った葡萄ほど、良いワインになる。

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芸の為なら

19/02/18 コンテスト(テーマ):第165回 時空モノガタリ文学賞 【 弾ける 】 コメント:4件 高月雫 閲覧数:163

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大手得意先のA社の社長は、一見ヤクザのような風貌をしている。
風貌だけでなく、何か問題が発生すると大手メーカーのSだろうがTだろうが怒鳴り込みに行って相手先を謝らせたなどという武勇伝がまことしやかに流れている。

そのA社を担当していた課長が、商品手配を大幅にミスしたまま、突然、退職してしまった。
運悪く、課長の下にいた私が、担当せざるを得なかったが、無いものは無い。
毎日やってくる大量の注文に、入荷未定の返信を送り続ける事ない日々・・・
とうとう「破綻」が来、もれなく社長が怒鳴り込んできた。

応接室で、いきなり「担当は誰や!!!」と怒鳴られた。

「高月と申します。この度は、ご迷惑をおかけして申し訳ございません」
と答えながら、支店長にそっと、一枚の書類を手渡した。

支店長は、ちらっとその書類を見た後、「これを…」とだけ言って社長に差し出した。

それは、引き継いだ書類の中から見つけた、言わば「保険」の書面。
前任の課長が、事前に、先方の部長を下先三寸で丸め込んで、確認印を押して貰った書面だ。
「商品確保が、予測数を超えた際は、入荷遅延の場合がございます」と、ちゃんと明記されている。
これにより、商品手配の不手際はあったものの、A社は遅延を認めたていたということになる。

それを知らされていなかった社長は、振り下ろしたこぶしを下ろすことが出来ずに、同行していた先方の担当課長の頭をどついて
「なんで報告せんかったんや!、俺に恥をかかせたな!」
と怒鳴った。

その後も商品供給その他の問題で、叱られたり呼びつけられたりしたが、何度か足を運んでいるうちに社長の態度は軟化してきて、食事に誘われた。
秘書室ご一行様と、高級松坂肉のすき焼きコース。

和室で、座卓の周りにずらりと並んだ秘書室の面々。
さすが、大手A社だけあってかなりの高レベル。

「競って華、負ければ泥」

という、故五社監督の映画の台詞が、字幕のように脳裏をよぎる

彼女達の視線が、私の靴やバック、ニットのロゴなどに視線が流れるのを感じる。
その水面下の、「静かな戦い」に全く気付かず、ハーレム状態にご機嫌の社長はリップサービス過剰。
「得意先の中でも、高月さんは、一番美人で、優秀で・・」
と、語り始めるほどに、周囲の空気は、重く冷たくなっていく・・・・まずい。

「時々、こうして内勤の女性にも、おいしいものを食べさせてやってるんだよ…」
という社長の台詞に、私はびきっときた。

たべさせてやる???社長でなくて、ただのヤクザなおっさんだったら、誰が一緒に食事なんが・・・・肉くらい、自腹で食べられるわよっ!!と、その場の女性全員が思ったはず。

その社長のその一言で、私は、弾ける事にした!

二次会の、個室のカラオケ。
皆がかわいいカクテルを注文している横で、私は冷酒を注文。

「すみません、お酌をお願いしてもいいですか?」

と、お局様にお願いすると、少し戸惑いながらも彼女は、波波とグラスに冷酒を注いでくれた。

私はその場で、いきなりそのグラスを一気に飲み干しして
「一番!学園天国入ります!!!」
と叫び、勢い良く立ちあがった。

社長及び、秘書室ご一行様はあまりの出来事に唖然。
が、そこはノリのいい関西の女の子達。アップテンポの曲と、完全に「キョンキョン」になりきった歌真似に、大盛り上がりとなった。

続いて流れてきたのが、ピンクレディの「UFO」
「さあ、ごいっしょに!」
と、お局様を前のスペースに、引っ張り出す。
「え??そんなの…・・」
といいながらも、イントロが流れると子供の頃に覚えた振りは、完全に条件反射。

「UFO」

いう振りと歌は、ぴったり会った。
(一同、大拍手。社長は、目をみひらいて固まっていた)

得意先の私と、お局様が砕けたことで、なし崩しにみんなが「素」に戻る。
気が付けば、ウインクからモーニング娘まで、全員で歌いながら、踊りまくっていた。
カラオケルーム内は大騒ぎ。
熱気と、歌声と笑い声の中、完全に社長を無視した二次会は大盛り上がりで終了した。
その時には、「なんかむかつく女」は、「なんだ唯の酒飲みの芸人か〜」になっていた。

帰りがけには、お局様が
「社長、今度高月さんを苛めたら、女子社員全員を敵にまわしてしまいますよ」
と、笑いながら言い、社長はつられたようにうなづいていた。

翌日、社長にお礼の電話を入れると
「うちの子達があんなに楽しそうなのは、初めて見た…」
とぽつりと言われた。

支店長に一部始終を報告すると、「そうか、やったか。おっさん、唖然としとったやろ。愉快やな〜」と、大笑いしていたが、S課長は胃を押さえて、机の上にうつぶしてしまっていた。

<教訓> 「芸の為なら、上司も泣かす」…ではなく「芸は身を助ける!」


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このストーリーに関するコメント

19/02/18 風宮 雅俊

作品とは関係ないかも知れないけれど、自分の土俵に相手を引き摺り込んで勝負する奴は強い。

19/02/18 高月雫

そういうのを得意としている、営業です。他にも、エピソード色々あります。短くまとめるのが難しいですけれど(^_^;また、寄り道して頂けたら嬉しいです。

19/02/21 雪野 降太

拝読しました。
職場の上司とも取引先とも食事をしなければならない『秘書室ご一行様』の大変さが垣間見えました。また、感嘆符多めの構成に、勢いをつけようという意思を感じました。
読ませていただいてありがとうございました。

19/02/23 高月雫

イト=サム・キニー様

コメント、ありがとうございます。励みになります!主人公は、私が気に入って、時々使うキャラです。
楽な仕事なんて無いのかもしれませんが、前向きな主人公を応援頂けましたら幸いです。

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