1. トップページ
  2. 悪魔の夢はしゃぼん玉

壬生乃サルさん

性別 男性
将来の夢
座右の銘

投稿済みの作品

0

悪魔の夢はしゃぼん玉

19/02/17 コンテスト(テーマ):第165回 時空モノガタリ文学賞 【 弾ける 】 コメント:0件 壬生乃サル 閲覧数:111

この作品を評価する

「オレ、天使になりたい!」
 魔界の王子・アックンが、突然そんなことを言い出しました。
「なんだと? きさま、血まようたか? わが大魔王の息子たるもの、この運命にあがらうことなど許されぬわ!」
 顔をまっかにして怒りをあらわにする大魔王に対して、アックンはあっけらかんとしています。
「悪魔なんて嫌われものじゃん。そもそもオレは次男だし。どうせ次の大魔王になるのは兄ちゃんなんだろ? じゃあ、オレはオレの好きにさせてくれよ」
「好きにするのはかまわん。が、よりによって天使とはなにごとだ。天使のどこがよいのだ?」
「キラキラしてカッコイイじゃん。好感度も高いしさ」
「悪魔が好感度を求めるでない。ふざけるのもいい加減にしろ! 私は認めぬぞ!」
「本気だってば。とにかくオレは天使になりたいの!」
 ふたりがにらみ合っています。やがて、アックンが自分に似てガンコな性格であると知っている大魔王は、奥歯をかみしめていたアゴの力を抜きました。
「ふん。そこまで言うのならば、天界に行ってこい。どうなっても知らんぞ。悪魔の子は悪魔、ということを思い知ってくるがよい!」
 そういうわけで、アックンは天界へ行くことになったのです。

「ま、魔界の王子が、こんなところに……な、なんの用です?」
 知らせもなく現れた魔界の王子に、うわずった声を上げているのは、天界の王子・テンチャンです。悪魔らしらかぬ瞳のキラキラぶりに、とまどいを隠しきれていません。
「オレ、天使になりたいんだ! どうすればいい?」
 予想外のことを言われたテンチャンは、思わず吹き出しました。
「なんだ、キミ。悪魔のくせに天使になりたいの? バカじゃない?」
 バカにされようがなにされようが、どうしても天使になりたいアックンは、なんとテンチャンに向かって頭を下げたのです。悪魔が天使に頭を下げるだなんて、聞いたこともありません。
「お願いします! 天使になる方法を、オレに教えて下さい!」
 アックンのあまりの真剣さに、テンチャンは苦笑いを浮かべつつ、教えてあげることにしました。
「悪魔に頭まで下げられては仕方ない。よし、天使になれるかはわからないけど試してみるといいよ」
 と、テンチャンがひとりの人間の子供を指さしました。
「ほら、あの男の子。あの子は空を飛びたいというかわいらしい夢を持っているんだ。あの子の夢を叶えてあげてよ。天使なら、それぐらい出来ないとね」
 テンチャンの言葉に、アックンの顔が夢と希望に満ちあふれました。
「おー! それなら簡単だ! オレもこれで天使になれるんだな!」
「まぁ、キミの夢なんてしゃぼん玉みたいなものだと思うけど……」
 ポツリと、そうつぶやいたテンチャンを気にすることもなく、アックンは男の子のもとに向かって行きました。

「おい! 空を飛びたいんだってな! オレが飛ばせてやるよ!」
 いきなり目の前に現れた悪魔に、男の子はおびえの色を見せながらも「ホントに?」と興味がわいている様子です。
「おう! 任せとけ!」
 自信ありげな様子のアックンに、男の子は「飛びたい、飛びたい!」と、目をかがやかせました。
「よし、行くぞ! うりゃっ!」
 アックンは男の子を小わきにかかえると、小さな翼を広げ、空に向かって浮き上がっていきました。
「うわぁ! すごい、すごい! 浮いた、浮いた!」
 男の子はとてもうれしそうに声を上げました。アックンも「ふふーん!」と、うれしそうにしています。
「あれ、ぼくんちだよ」
 ふわふわと、ゆっくり浮き上がりながら、男の子が指さしました。三階建ての立派なおうちです。
「へぇ。いい家に住んでんだなー。それより……」
 アックンの様子が少しヘンです。
「もうすぐ屋根より高くなるよ!」
 男の子がはしゃいで足をバタつかせました。アックンの顔色はすっかり青ざめています。
「あ、あばれるな! や、やばい」
「どうしたの?」
 男の子をかかえたアックンの腕がプルプルしていました。そして「ご、ごめん……」とつぶやきました。
 そう、アックンが男の子をかかえていた手を放してしまったのです。
「……うそでしょ? う、うわーーーっ!」
 男の子は地に向かって、まっ逆さまに落ちていきました。ぼうぜんと、その様子を見つめながら「う、腕が限界だったんだ……」と、アックンは目をつむりました。
 アックンの夢が、はかなく弾けて消えた瞬間でした。

「やっちゃった。やっぱり悪魔が天使になるのは無理なんだよ。だから、しゃぼん玉みたいなものだって言ったじゃないか。屋根まで飛んだら消えるし、風が吹いたら生まれてすぐにこわれちゃうんだ。夢みることは悪くないけど、まずは……」遠くからふたりのことを見ていたテンチャンは、ため息をつきました。
「もっと自分をちゃんと見つめないと、ね」


コメント・評価を投稿する

コメントの投稿するにはログインしてください。
コメントを入力してください。

このストーリーに関するコメント

ログイン