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ササオカタクヤさん

文章でササオカタクヤの世界を伝えられたらいいなと考えてます。 キャラクターたちがイキイキとした物語を書いて、読んだあと何か残れるような作品にしていきます。

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恥を蹴ろ!

19/02/14 コンテスト(テーマ):第165回 時空モノガタリ文学賞 【 弾ける 】 コメント:1件 ササオカタクヤ 閲覧数:193

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昔じいちゃんが僕に教えてくれた「恥を蹴ろ」という言葉。誰にでも隔たりなく話すことができ、大勢の人の前に自ら出て発言できるじいちゃんとは違い、人前に出ることが大の苦手で人とコミュニケーションをとるのも緊張してしまう僕。じいちゃんが教えてくれた言葉を理解することはできなかった。

「島田くん、今度の文化祭でジュリエットやってよ」
僕に思いもよらない悲劇が起こる。学校行事の文化祭で僕は舞台に立つことになったのだ。クラスのみんながジュリエット役をやりたくない、そして僕なら断れないだろうと企んで頼んできたのだ。意図は丸見えなのに、コミュニケーションが上手く取れない僕は「嫌だ」の一言が言えずジュリエット役を引き受けてしまった。
舞台の内容はロミオとジュリエット。文化祭でスベり知らずの作品だと担任が張り切っていた。僕は死ぬほどやりたくなかった。
何故僕がヒロイン役のジュリエットをやるのか?それはクラスのみんなから面白いと賞賛されている福山くんが主役だから。その面白さを引き立てるには女子よりも男子がジュリエットをやった方が面白いとのこと。ものすごく嫌な予感しかしなかった。
僕が女装したって絶対面白くない。きっと「福山くんがあれほど頑張ったのに」「これだから陰キャは」「島田がいなければもっと面白かったはず」なんてバッシングを浴びるのだろう。まだ言われてもない言葉が頭の中で巡り現実から目を背けた。
そして僕は学校を休んだ。僕なんかいなくたって文化祭は何とかなる。そう思っていた僕にじいちゃんが声をかけてくる。
「健太、おめー腹痛いのか?」
「違うよ。行きたくないんだ」
「なんでだ?今まで休んだことなかっただろ?」
「文化祭で…」
僕は正直にじいちゃんに伝えた。もしかしたら怒られるかもしれないと思ったが「そうか」とだけ言葉にした。ただ次の日、じいちゃんは僕に優しく声を掛けてくれる。
「健太、おめーがジュリエットだか何だかをやらねーと誰かが困るんじゃねーか?」
「僕がやらなきゃ誰かがやるよ」
「でもよ、みんなやりたくなかったんだろ?それをおめーが引き受けた。その時、みんな喜んでくれただろう?多分今みんな不安を抱えてんじゃねーのか?」
じいちゃんは「俺はよく分からねーけど」と言葉を足して、老人会があるからと出かけていった。僕は一人で考える。じいちゃんが言うように誰かが僕と同じように嫌な思いをしてるのかもしれない。そう考えた時、僕は腹を括ってジュリエットをちゃんとやろうと思い直した。

次の日学校に行くとみんなは喜んだ。じいちゃんが言うように不安を抱えていたようだ。僕もみんなの期待に応えようと練習に励んだ。
「セリフをしっかり入れておきゃ怖かないぞ」
舞台慣れしているじいちゃんにアドバイスを求めた。練習を重ねると思いのほか頑張れる気がしてくる。

とうとう文化祭当日になる。僕はジュリエットの衣装に着替え、舞台袖で自分の出番を待つ。緊張して心臓が口から出てしまう気がした。じいちゃんがそんな時は掌に「人」と三回書いて飲み込めと教えてくれた。実際にやってみると気持ちばかりだが楽になった。呼吸を整えて、いざ僕は舞台に立つ。
「ロミオ様!どうしてあなたはロミ…ロミオ様なの?」
声は裏返るし言葉は詰まる。クスクスとバカにしたような笑い声が聞こえる。練習の時はちゃんとできてたのに。早く福山くんが登場してくれるのを待ち望んだ。
「せめて私を愛すると誓ってください」
僕はセリフを言い切った。しかし福山くんはまったく出てこない。どうしたんだろう?僕はとりあえず「ロミオ様?」と何度か呟いた。
しかし何分経っても福山くんは現れない。それに舞台袖を見てみるとクラスのみんながいなくなっていた。客席を見るといるはずのないクラスのみんなが笑って僕を見ている。はめられたんだ。僕を笑い者にしたかっただけなんだ。悔しくて涙が出てくる。その姿を見てクラスのみんなはまた笑う。その笑い声に釣られて観客も笑い出す。早くここから立ち去ろう。そう思った時、いつも僕の味方でいてくれるじいちゃんの声が聞こえた。
「健太!恥を蹴ろ!!弾けるんだ!」
一瞬何が起きたのか分からなかった。しかしじいちゃんの言葉通り、もう僕は弾けるしか術がないみたいだ。これがキッカケで変われるのかもしれない。恥を蹴る。恥ずかしい格好してたって笑い者になってたって恥を蹴れば成功する!
「ロミオ様ー!呼んでんだから早く出てきてー!」
僕が大声で女らしく叫んでみる。声変わりが始まった僕の声はとても醜く笑いが起きる。これは笑われてるんじゃない、笑かしてるんだ。今僕は弾けてるんだ!今まで味わったことのない幸せを感じる。
一度恥を蹴れば何をしても怖くない。弾けた僕を誰も止めようとしなかった。

「ロミオ様!愛してる!じいちゃんも愛してるぅ!」


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このストーリーに関するコメント

19/02/15 雪野 降太

拝読しました。
『じいちゃん』の言葉を素直に受け入れて、前向きであろうとする主人公の元気さが眩しい作品でした。また、学校の文化祭という場面で、クラス総動員でドッキリを仕掛ける同級生達の覚悟にも驚かされました。
読ませていただいてありがとうございました。

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