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naokitiさん

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悩みのループ

19/02/11 コンテスト(テーマ):第165回 時空モノガタリ文学賞 【 弾ける 】 コメント:2件 naokiti 閲覧数:235

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 私、森に住むリスでございます。職業はカウンセラーで、お客様は森に住む動物の方々。動物だって悩むことはありますよ。お話をじっくりお聞きして、解決方法のご提案をさせて頂いております。
 と言いましても、ほとんどの方は、解決方法をご自分でお持ちですね。お悩みをお聞きする中で、見え隠れする解決策にお気づきになるよう、誘導させて頂くのがほとんどですから。お話するだけで、ご自分の中で整理がついて、次の段階に進まれる方もいらっしゃいます。
 さて、お客様が来られると、私はクルミの殻を割ったものをお出しして、この中にお悩みを全て吐き出してください と申します。お話を聞いた後は、クルミの殻を閉じて、厳重にお祓いさせて頂きます と言うのです。お悩みは、お客様からクルミの中へ入ってしまいましたから、もう大丈夫ですよ、というイメージをお持ち頂くためです。
 使用したクルミの殻は、粘度のある樹液で開かないようにくっつけて、今住んでいる木のうろの中に落としております。お悩みという重たいものが入っていますから、いっぱいになったらうろを閉じて、新しい場所を探そうと考えておりました。
 ところがある夜、うろの中からポンッ、ポンッと何かが弾ける音が聞こえましたの。それからボコボコッという音も。何か入りこんだのかしらと肝を冷やしました。それにしては小さい奇妙な音です。私はうろのふたをとって、月明かりでなんとか中を見ようとしました。そうしたら、クルミの殻が割れていて、しかも液体に浸かっていますの。
 びっくりいたしました。これはいったいどうしたことでしょう。全くわからなくて、私は夜のうちに、物知りのフクロウの所に相談にいったのです。フクロウもそんな話は初めてだと答えましたが、話しているうちに一つの推論に達しました。
 悩みというのは重く、強いものでございます。その強さに耐え切れず、閉じたクルミの殻が弾けてしまった。中から出てきた様々な悩みが混ざり合って反応し、発酵してしまったのではないかと。その強さは、閉じたクルミの殻を弾けさせ、溶かすほどのものだったのではないかと。
 どうしたものかと思いました。もし液体がうろからあふれ出してしまったら、きっとさわぎになるでしょう。だいたい悩みとクルミの殻が反応して出来たものって、どういうものだと思います? わたしは勇気をふりしぼり、長い木の枝を液体に浸して、枝の先をまじまじとながめました。
 液体からは、なんだか魅惑的な香りがして、思わずなめてしまったのです。ほんの少しだけですよ。そしたらとても甘くて、後を引くような、またなめたくなる甘さでした。私はもう一度、フクロウに相談に行きました。
 その後、苦労して木に小さな穴をあけ、うろから液体が流れ出る道を作り、石で栓をしました。商売上手なキツネに依頼し、ある商談をまとめてもらったのです。
 キツネはときどき木のうろから液体を袋に入れ、農家に持っていき、欲しいものと交換するようになりました。農家では液体にバターと小麦粉を混ぜ、焼き菓子を作って、道の駅っていうところで売っているそうです。キツネは液体の対価として、私にクルミを持ってきます。
 焼き菓子は人間の間で評判になっているそうです。一度食べると、不思議にまた食べたくなる味なんだとか。私は食べたことはありませんけどね。
 食べて大丈夫なのかって? 悩みが反応すると、何に変わるのでしょう? フクロウとも話したのですけど、いろんな悩みが混ざって、案外無害になるんじゃないかって。ほら『毒を以て毒を制する』とか言いますでしょ。あら、意味が違ったかしら。まあ万が一悩みの種が焼き菓子に残っているとしても、あんなに甘くていい香りがする以上、世に必要なものってことですよね。でなければもっと苦くて、臭気を放つものになると思うんですの。それにね、食べるのは人間ですし。
 動物たちのお悩みは、人間が関わっていることが多いんですのよ。住処を奪われるとか。だからまあ自業自得、とも思っておりますの。


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このストーリーに関するコメント

19/02/13 霜月秋旻

naokitiさん、拝読しました。
和むお話でした。
ここ最近、猿や狸、リスを見かける頻度が高くなりました。動物も人間に暮らしの邪魔をされて、ストレスが溜まっているんでしょうね。動物達の悩み入りのお菓子を人間が食べて、もし何かが起こっても自業自得ということで(笑)

19/02/14 naokiti

霜月秋旻様
読んで頂いてありがとうございます。

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