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嶺 ナポレタンさん

性別 男性
将来の夢 フリーランス
座右の銘 迷ったら積極的な方 やらない後悔よりやる後悔

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ギルティキッス

19/02/08 コンテスト(テーマ):第165回 時空モノガタリ文学賞 【 弾ける 】 コメント:0件 嶺 ナポレタン 閲覧数:148

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夕陽が差し込む電車の中、慎介の向かい側に、ビニール袋を持った汚ならしいおじいさんが座った。

そのおじいさんは、足元に転がっている銀の玉に気づき、まず足で玉を寄せ、それから指で拾い上げ、まじまじと玉を見つめた。慎介はその様子に嫌悪感を覚えた。

おじいさんは長い間その玉を見つめ続けた後、それをビニール袋に入れた。しかしすぐに取り出しまた見つめ始めた。そして次の瞬間、飲み込んだ。

信じられない光景の中で最も気になったのは、パチンコ玉って飲み込んで大丈夫なんだっけ?という疑問だった。まぁパチンコ玉という確証は得られていないが。

そして、おじいさんに対して嫌悪感を感じていたにも関わらず、慎介は急におじいさんが心配になった。

例の玉を飲み込んだおじいさんは、気持ち良さそうにため息をついた。まるで乾杯のビールを飲み干したかのように。

その後おじいさんに変わった様子はなく、電車は終点の岡山駅に到着した。少し時間に余裕があった慎介は、おじいさんについていってみた。電車から降りたおじいさんは立ち止まっていた。

数秒後、通りすがりの女性の胸元にあるボタンが弾けた。その女性は弾けたボタンがどこにいったのか分からなくなったようで、胸元を抑えてそのまま改札へ向かった。

女性が遠く離れたことを確認すると、おじいさんは弾けたボタンを拾い上げ、まじまじと見つめた。

次の瞬間、やはりおじいさんはそのボタンを飲み込んだ。慎介はよりいっそうおじいさんが心配になった。

「あのー、玉もボタンも飲み込んでましたけど、大丈夫ですか?」

「大丈夫や。」

急に話しかけられたおじいさんは少しビクッとしていた。

「何で飲み込むんですか?いつから飲み込んでるんですか?さっきボタンが弾けたのはおじいさんの力?」

慎介はおじいさんを尋問するかのように質問を並べ立てた。

「この前、たまたまべっぴん巨乳の姉ちゃんがおってな、どうしても乳のボタンを弾けさせたいと思ってん。ほんだら、無意識のうちに握りしめとったパチンコ玉を飲み込んでしもてな、ヤバイと思て力んだら弾けてん。姉ちゃんの乳のボタンが。」

おじいさんは嬉しそうに一気に喋り倒した。

「なるほどな。せやけど何で弾けたボタンまで飲み込まなあかんねん?」

おじいさんの関西弁につられ、エセ関西弁で慎介はさらに質問を重ねた。

「弾けたボタンも飲み込んだら、ボタン弾けさす能力が貯金できんねん。知らんけど。」

「なんやねん、知らんけどって。てか、よぉ喋るな、じいさん。」

「お前が聞いてきたんやろがっ。」

そう言って慎介の肩を叩くおじいさんは、とても嬉しそうだった。

「ほな、じいさん、もっかい見せてや。」

「ええで。」

おじいさんはボタンシャツを着た女性を見つけると、力を込め始めた。

「クッ。」

おじいさんは全身に力を込めているが、先ほどのように上手くいかないようだ。

「じいさん、無理せんでええで。一回見たし。」

慎介はそう言ってやめさせた。おじいさんは悲しげな表情をしている。

「ええってほんまに気にせんで。俺も友達と約束あるし、帰ろや。」

実際、友達との約束の時間も近づいていた。

「ほんまは、女の乳より、男の股間やねん。」

おじいさんぼそぼそ呟いた。

「はっ?」

慎介は訳が分からなかった。

「ほんまは、女の乳のボタンを弾けさせたいんやなくて、男の股間チャックの上にあるボタンを弾けさせたいんや。嘘ついてすまん。」

申し訳なさそうな顔をしているおじいさんが不憫に思えてならなかった慎介は、混乱した頭の中を整理しきれず、おじいさんにディープキスをした。

おじいさんはのけぞるように倒れ、ピクピクと小刻みに痙攣しながら、「ありがとなー。ありがとなー。」と呟いていた。

慎介はその様子を少し見届け、なぜか納得感を得たので、おじいさんを置いて、友達との待ち合わせ場所へ向かった。

待ち合わせ場所へ着くと、慎介のほうが早かったようで、その辺の通行人を見ながら友達を待っていたところ、綺麗な女性が通りかかった。

慎介は、おじいさんとキスをしたことで、もしかしたら自分にもボタンを弾けさせる能力が移っているのではと期待し、全身に力を込めてみた。すると、女性の胸元のボタンが弾けた。

女性はすぐに胸元を抑え、ボタンを拾おうとした。慎介は女性に見向きもせず弾けたボタンを拾い上げ、そして何の躊躇もなく飲み込んだ。その瞬間言い表せない高揚感を感じた。

ふと目線を上げると、先ほどの女性がこれでもかというほどに目と口を真ん丸に開いていた。慎介は不思議と動揺せず、ただただ会釈して立ち去った。

そしてスキップをして三歩目でずり下がったデニムに引っ掛かり、盛大に地面に倒れ込んだ。慎介の股間のボタンは無くなっていた。


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