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戸松有葉さん

ショートショート:小説投稿サイト「小説家になろう」で1001作以上、本サイト「時空モノガタリ」で入賞複数。 他、長編ライトノベルやエッセイなども。コメディ得意。 Amazon Kindle(電子書籍)http://amzn.to/1Xau7kMで活動中。(←URLは、Kindleストアを著者名「戸松有葉」で検索した結果。)代表作は『ショートショート集厳選集』とラノベの『二次元最高美少女』。 ツイッターは@tomatuariha3lb

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将来の夢 積極的安楽死法案
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防弾スプレー

19/01/28 コンテスト(テーマ):第165回 時空モノガタリ文学賞 【 弾ける 】 コメント:1件 戸松有葉 閲覧数:93

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 防御こそ最大の軍事力!
 攻撃力を突き詰めても、強過ぎて戦略兵器としての役割になってしまい、使用はできない。あるいは、攻撃は先制で行わねば国民を守れないが、その理由を作るのが難しい。
 ならば極めるべきは防御だ。
 ミサイル迎撃システムに代表されるように、防御用のものであっても、パワーバランスを崩す懸念で反発されるものはある。しかし一方で核シェルターを用意することまでは阻止されない。
 この国の軍が求めているのは、実質は前者なのだが印象は後者に近いものだった。攻撃をそもそも受けないようにし、一方的に攻撃できる状態になるかが判断の分かれ目。核シェルターは、互いに甚大な被害を出しながらも、何とか生存はできるというものだ。
 攻撃は受ける、ただし被害なくやり過ごせる技術があれば、どうなるだろうか。無敵なのだから一方的に攻撃できる状態だが、相手からの攻撃を受けはするため、他国を錯覚させられるという算段だ。
 軍は天才と名高い博士を筆頭に専門チームを結成、研究を続けさせていた。
 そしてついにこの日、研究成果を披露する、最終実験が行われる。
「なるほど、人体や小さな物には、このスプレーをかければよいのだな」
「はい。防弾チョッキや防護服では、普段から皆が着ていることはありません。また、守っていない箇所がありますし、威力が高ければ壊れてしまいます。しかしこのスプレーなら、全身に隈無くかけておけば、たとえ核ミサイルが直撃しても弾けるのです」
 実験が行われると言った。被験者は軍人たちだ。軍の機密に関わるから、当然他の人間に任せることはできない。そうでなくてもこの実験を引き受けてくれる人間はまずいない。
 博士が例に出したように、彼らにぶつけるのは核ミサイルだ。人間を伴わない実験では、防弾スプレーの効果は実証済みであり、今回はより説得力を持たせるための実験で、成功は正式な完成を意味する。
 軍関係者はもちろん、政府要人も実験に立ち会っている。ただし核ミサイルを使用するのだから、近くで見守るわけにはいかない。現場の様子を映像・音声で知ることしかできないのだが……なにせ大規模な爆発だ、映像・音声でも訳がわからない。
 軍の上官や政府要人は集まっているものの、結局博士から実験結果の報告を待つしかなかった。
 やきもきしていると、博士は悠々とした態度で姿を現し、結果を告げた。
「大成功です」
 沸き立つ一同。安堵と高揚が場に溢れる。
 上官は満足そうにしながら、労った。
「よくやってくれた。あとは量産を待つのみだ」
 しかし疑問もある。
「それで、無事だった部下たちは一緒ではないのか?」
 成功を言うのだから、病院での検査も終えているだろう。しかし被験者の部下は誰もいない。不思議に思う上官に、博士は淡々と報告を続けた。
「防弾スプレーは完全に成功しており、核ミサイルを弾き切っていました。写真を見てください、スプレーをかけた皮膚や服は、土が付いて汚れている以外は、傷一つ付いていません。綺麗なものです」
「ふむ。そのようだな。しかし彼らは倒れているようだが? さすがに恐怖で失神でもしたか」
「何をおっしゃっているのですか。防弾チョッキが銃弾を貫通させないだけで衝撃はあるように、核ミサイルも衝撃があります。核ミサイルほどの衝撃ともなれば、いかに緩和されたとしても、骨も肉も内蔵も原型を留めていられるはずがありません。放射能に侵されるのを待つまでもなく、軍の方々は全員死亡しています」

(了)


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このストーリーに関するコメント

19/01/29 イト=サム・キニー

拝読しました。
『軍の上官や政府要人は集まっているものの、結局博士から実験結果の報告を待つしかなかった』という場面はきっと現実でもよく見られる状況なのでしょう。現場にいながらも、なかなかに焦れる瞬間ですね。
読ませていただいてありがとうございました。

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