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七原 紗亜弥さん

ホラーやSFなどを中心に書いていきたいと思っています。

性別 女性
将来の夢 魔法使い
座右の銘 終わりよければすべてよし 他人の不幸は蜜の味、他人の幸も蜜の味 死は怖くない、ただ孤独のみが恐ろしい の3点でーす

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神の指

19/01/26 コンテスト(テーマ):第165回 時空モノガタリ文学賞 【 弾ける 】 コメント:4件 七原 紗亜弥 閲覧数:234

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彼女は、一度耳にした曲なら全て正確に弾くことが出来た。ピアノも、ギターも、琴も、どんな楽器も弾ける上に、勿論アレンジを加える事も出来た。

誰もが彼女が鍵盤をはじくその音色に魅了され、彼女は天才的ピアニストとして、世界に名を馳せていた。

そんな彼女の家系には秘密があった。生まれてから一生の間に三つだけ、なんでも願いを叶えることが出来ると言うものだった。

彼女は元々、ピアノ教室に通っていても全く上達しなかった。家にあるギターを弾いていても、学校で使うピアニカを弾いてみても、下手なままだった。音楽が大好きな彼女は、泣いてばかりいた。

しかし家系の習わしで、14歳になった時にその秘密が彼女に伝えられた時に、彼女は真っ先に「全ての楽器が完璧に弾きこなせるようになりたい」と願った。
桁違いに上達した彼女をピアノ教室の先生は褒めて様々なコンクールに出させたし、学校の音楽の時間では先生や友達にちやほやされて嬉しかった。

しかし、コンクールではほとんど金賞や特別賞が貰えるものの、たまに賞から漏れることがあった。理由は、「個性が無い」から。

周りからもてはやされて、プライドが高くなっていた彼女は、賞がもらえないのが許せなかった。それに、これだけ弾けるのに、有名になれないことも悔しかった。
だから彼女は、「自分が奏でる音色に誰しもが魅了されるように」と願った。

それからの彼女は凄かった。出場したコンクールは全て最高の賞を取り、涙した審査員たちを撮影していたテレビ番組から声が掛かるようになり、ピアニストとしても、ギタリストとしても色んな演奏をテレビで披露してみせた。

彼女は「努力で」楽器を練習して上達し、「運良く」マスコミの目に止まって有名になった音楽家として、シンデレラストーリーが語られ更に人気は上がっていった。

あらゆるメディアに引っ張りだこで、あらゆる国に呼ばれコンサートを開き、クタクタに疲れ切っていた。

そんな人気の絶頂のさなか、彼女は疲れで眩暈を起こし、そのまま交通事故に遭ってしまった。半身不随だった。神の指と呼ばれた彼女の指はもう、鍵盤や弦をはじくことは叶わなくなってしまった。

マスコミが彼女の事故について数ヶ月書き立て騒ぎ立てた後には彼女の周りには誰も残らなかった。
彼女は絶望した。世間から消えたからではない。一度は有名になりたいという思いだけで願いを使ったものの、彼女は本当に音楽を愛していた。

表情もまともに動かせないまま、泣き続けていた彼女は、ある事を思い出した。
秘密を14歳のあの日、母から言われた事を。
「何かあった時のために、願い事は一つだけ残しておくのよ」

彼女は今がまさにその時だと思った。しかし、半身不随を治すことは願わなかった。
疲れ切った彼女の願いは、
「ずっと眠り続けて、その夢の中で自由に音楽が楽しめますように」
これで彼女は、死ぬまで永遠に楽器を弾き続けられる。
植物状態になったと診断された彼女の顔は、微笑んでいた。


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このストーリーに関するコメント

19/01/26 風宮 雅俊

「はじける」ではなく「ひける」を切り口に、2000文字ならではなの展開。
彼女が本当に望んでいたものを手に入れたラストシーン。案外、人の幸せはこう言うものかと考えさせられました。

19/01/27 七原 紗亜弥

風宮雅俊 様
お読みくださってありがとうございます。 「ひける」の他に、「はじける」の要素も少し入れたくて、鍵盤や弦をはじくという表記を少し入れました。
普段はほとんどがバッドエンドの小説しか書けないのですが、これはハッピーエンド、もしくはメリーバッドエンドと呼ばれるエンドにできたと思っております。
少なくとも主人公の彼女を幸せにさせてあげられて、私は満足しております。

19/01/27 雪野 降太

拝読しました。
『全く上達しなかった』、『下手なままだった』、『泣いてばかりいた』と散々な主人公ですが、練習が嫌になって投げ出した、というわけでもなく、そう言い切れるほどに努力し続けた心の強さに感心しました。
読ませていただいてありがとうございました。

19/01/28 七原 紗亜弥

火奈樋 ソギ 様
お読み下さり有難うございます。
彼女が努力し続けたのは秘密の願い事を使う14歳までですが、それほどに音楽が好きだったのです。

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