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村沢走さん

村沢走と申します。現在、月に一度のペースで執筆中。

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将来の夢 恐竜になる事
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フィックス・ユー

19/01/23 コンテスト(テーマ):第165回 時空モノガタリ文学賞 【 弾ける 】 コメント:2件 村沢走 閲覧数:162

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 女だてらに格闘技なんて遣るからには、其れなりの理由が有る筈だった。彼女の実家は御菓子屋さんを営んでいて、葛切り、桜餅、大福が絶品である。地域の振興新聞にも載った店であった。御嬢様とチアリーダーの二足の草鞋なんて、其れだけで嫌になってしまいそうな物だが、此いつの場合は格が違った。田中単十六歳。杉の実高校二年生の生徒会長である。ツインテールが弾け、「フレッ!! フレッ!! 加治木っ!!」なんて聞こえる。僕は四番の意地に掛け、左中間へと塁打を飛ばす。田舎の草野球である。レベルといっても高が知れている。然し僕は格好付けであった。田中の手前、僕だけが感けている訳には行かないのだ――!! 僕は、二塁ベースを踏むと、田中に向かってガッツポーズをした。一年の頃より、彼女に惚れていた。ライバルは多かったが、如何にかならんモンかと思案に暮れる内、接点が出来た。――彼女の店は月に一回フェアを開催しており、其れで僕に施行されたのだ。――フェアの内容は斯うだ。――加治木君を応援しよう。――猛打賞で、二割引き。とは。とても老舗とは思えない言動であったが、腐れ縁だった僕と田中は何処かで通じ合っていた。次の試合で盗塁を決めると。約束すると、僕は三盗を狙った。田中は、二安打の僕を熟視していた。応援にも熱が入る。きっと彼女の店にも、フェアを期待しているに違いない。僕は、思い切って三盗を決め、其の足でホームスチールを試みた。惜しくもアウトだった。「……嗚呼」と漏れるスタンド。田中の声は何処かあえかで、其れで、僕は九回のサヨナラを掛けた。果たして――金属音はスタンドに消え、僕は、三安打を記録した。「遣ったっ!! 遣ったっ!!」とはしゃぐ田中。其れで彼女の店も安泰だろう。其んな事を考え、ホームを一周した。
 翌日――田中から、葛切りを御馳走してもらった。「えへへ。大盛況だよ。此れで勝君もヒーローだね」。とは結んで、彼女は横になった。昨日の疲れに脱力しているらしい。僕は其の額へとタオルを置くと、「なあ。田中。今度の試合でさ――……」と、切り出した。「ストップ」。と告げて、むくりとした。目には活火が滾っており、其れは怒りから来る物であった。煮え切らない僕に、此の場合は、何時迄経っても告げない僕に、嫌気が差したのだろう――。「一組の本城君から告白された」と、言ってそっぽを向く。絶句して離れる僕。二人の間に沈黙が流れ、其れで、僕は「此れで、最後だ」と告げた。意味する所は一つだった。「御前の為に、ホームランを打つ。其れで成功したら、正式に付き合ってくれ――……」。此方の言に、無言で応える田中。二人の間に沈黙が流れ、其れで僕は了解を得た。
 だが絶不調であった。二打席終わった後、最後の打席で凡打を放った。「嗚呼……」と、落胆する田中。僕は、僕が僕でなくなった気がして、其れで、後にしたグラウンドを眺めた。果たして翌日。一組の本城から呼び出された。「俺、単ちゃんに告白したんだ――……。でも、駄目だった――……。彼女には、好きな人が居るとかで、其れで、御前じゃないかと踏んだんだ――……。如何か。如何か、彼女を解放して遣って、くれないか――……」。衝撃だった。ショックだった。此んなにも田中は熱く想ってくれる友人が居る――……。其れが、僕の中で反芻された。
 田中は泣いていた。「何であんな所でトチるの……」。其れだけが、彼女の言い分だった。申し訳なくなって、一時硬直した。其れで、「二度と……あんな思いは、させない」。と誓った。彼女の方へと手を伸ばして、フォルティス序でに、格闘技を駆使される。凹々にされて、漸く目が覚めた。「……そうか……そうだったんだな……」独り言ち、序でに彼女へと此んな事を返す。――……何時も迷惑ばかり掛けて御免――……でも、此れからは、自粛するよ――……。其の言葉に「違うでしょっ!! 何でっ!! 何でっ!! 分かってくれないの――……っ!!」と、返す。僕は疑問符を要し、次いで此んな風に考えた。「今直ぐ告白して欲しいって事? でも、其れは――……」。「馬鹿っ!!」。張り手を食らい、突っ伏して斯う告げた。「未知過ぎる。女心ってヤツは……」。と、まあ。此れが顛末だった。事の。


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このストーリーに関するコメント

19/01/25 雪野 降太

拝読しました。
『「違うでしょっ!! 何でっ!! 何でっ!! 分かってくれないの――……っ!!」』という『田中』さんの叫びに共感できました。
読ませていただいてありがとうございました。

19/01/26 村沢走

 火奈樋 ソギ様。有り難う御座います。毎回毎回励みになります。少しでも伝わると光栄です。

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