田辺 ふみさん

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祭り

19/01/21 コンテスト(テーマ):第164回 時空モノガタリ文学賞 【 着地 】 コメント:2件 田辺 ふみ 閲覧数:77

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 ポーン。ポーン。
 規則正しく一定の間隔で花火が打ち上げられる。祭りの日の合図だ。
 たくさんの屋台にたくさんの人。
 リョウタは本物の花束を見つけると、立ち止まった。
「花束は一等賞だ。ただし、挑戦できるのは一回だけ。弾は三発だ」
 お店の人がリョウタに声をかけた。
「パネルを倒してね」
 五段の段があって、その上にいろんな物のパネルが並んでいる。もちろん、花束のパネルは真ん中で一番遠い。
 リョウタはお金を渡すと、弾を受け取った。
 右腕を銃の形に変形させていく。やがて銃が仕上がると、リョウタは的に狙いをつけた。
 ターン。
 弾が軽いせいか、パネルに命中したが、びくとも動かない。
 リョウタは銃身を長くした。
 ダーン。
 弾が当たると、パネルが大きく揺れた。しかし、倒れることはない。
 ダーン。
 弾が今度はパネルの一番下に当たった。リョウタの狙い通りだ。勢いでパネルがぐっと後ろに下がった。しかし、それだけだった。
「惜しい!」
 見物人が声を上げた。
 がっかりしたリョウタの前に一輪の花が差し出された。
 真っ赤なバラだ。
「残念賞だよ」
 お店の人が照れくさそうに言った。
 リョウタの顔がぱっと明るくなった。
「ありがとうございます」
 リョウタはバラを受け取ると、サーカスのテントに向かった。シナノに会いたいと、団員に頼むと、すぐに一人の女性が現れた。
 リョウタはおずおずと言った。
「あの、開拓団に参加されると聞いたので。これを受け取ってください」
 リョウタはバラを差し出した。
「どうしたの、こんな高価なもの」
「射的の残念賞でもらったんです」
「すごいのね。本当にありがとう」
 シナノはバラに顔を寄せ、香りをかいだ。
 その姿をリョウタは目に焼き付けるように見つめていた。

 夜、サーカスの会場は満員だった。
 最初に団長が現れ、挨拶した。
「ご存じの通り、このサーカス団がそのまま、開拓団として新しい星、レダに出発します。私たちの最後の演技にみなさん、盛大な拍手をお願いします」
 団長が頭を下げると、拍手がわき起こった。
 すぐにピエロが二人現れた。一人は赤く、もう一人は白い。お互いに握手すると、手がくっついてしまい、あわてて、引っ張って外そうとする。すると、今度は勢いよく後ろに転んでしまった。体はぺったんこになって、入り交じってしまう。二人は協力して、入り交じった体を少しずつ、少しずつ引き離した。それぞれ、元の状態に戻ることに成功すると、二人はお辞儀した。
 すると、赤いピエロの肩の後ろが白く、白いピエロの肩の後ろが赤いことがわかり、客席はどっとわいた。
 また、新しい音楽が始まった。
 リズミカルな音に合わせ、弾むように女性が登場する。シナノだ。
 シナノが手をうねるように動かした。すると、その指先からするすると紐が伸びてきた。五本の指から伸びた紐がより合わさり、ロープとなる。そのロープは上に伸びると、天井からぶらさがったリングにからみついた。すると、シナノの体がゆっくりと上がっていく。
 シナノは横向きにロープの上に立つように足をのせた。それから、勢いよくロープを回した。ロープの回転にあわせて、シナノの体が回転する。だんだんロープは短くなり、シナノの体はどんどん上に上がっていく。そして、回転もどんどん速くなっていく。
 ロープをつないでいたリングのところまでくると、ぴたりと回転が止った。リングに体をからめるようにして、シナノがお辞儀をした。
 万雷の拍手。その中でもリョウタは立ち上がって拍手していた。
 その後も空中ブランコ、綱渡り、曲乗りと演目は続き、どれもすばらしいものだった。
「それでは、いよいよ、人間大砲です」
 さっと舞台の奥の幕が開き、レールガンの発射部分が現れた。
 今まで出演していた団員が一人一人、お辞儀をし、手を振る。
「さようなら」
 団員たちはレールガンの上に横になる。横になった体はどんどん融合し、一つの塊となっていった。
 そして、シナノ。
 優雅にお辞儀をするシナノの胸にはリョウタが渡したバラが融合していた。そして、団員達の塊の上に横たわり、溶け込んだ。
 団長が最後にもう一度お辞儀をして、横たわると、塊が弾丸のような形状になった。
 カウントダウンが始まる。
「3、2、1、0、発射!」
 弾丸が飛び出した。

 弾丸はぐんぐん空を昇っていった。その外殻は熱にも真空にも耐えることができる。
 やがて、弾丸はレダに着地した。実際は着地というような生やさしいものではなかった。墜落し、バラバラにはじけとんだ。はじけたかけらは元の人の姿に戻った。
 そして、シナノはバラを融合させた胸元をそっと押さえ、空を見上げた。


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このストーリーに関するコメント

19/01/22 イト=サム・キニー

拝読しました。
高価であるらしいバラの花を、残念賞として提供してくれる屋台店員の気前の良さが印象的でした。
読ませていただいてありがとうございました。

19/01/26 田辺 ふみ

読んでいただきありがとうございました。
屋台の人はたぶん、少しずるをしていた(パネルが倒れないように重くするなど)ので、気がとがめたのだと思います。

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