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みやさん

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月へ着地するうさぎ

19/01/21 コンテスト(テーマ):第164回 時空モノガタリ文学賞 【 着地 】 コメント:0件 みや 閲覧数:60

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「宇宙船が月面に着地しました!」

管制官から報告を受けて博士達はモニター画面を固唾を飲んで見守っていた。月面に着地した宇宙船の中からドローンが出て来て月の画像が地球に届く事になっているからだ。一番最初に月面に出てくるのは一体どの動物なのだろうかー?

太陽が死滅して約二十年。地球は氷河期を迎え沢山の動物達が絶滅し、今では人間以外の動物は地球上に存在していない。そして人間も何年か後には絶滅すると推測されている。そんな中政府は人類の月移住計画を発表した。月には大気が無いが、研究者達は月を大気で覆う事に十年を費やし成功を収めた。ついに月が第二の地球になり得る可能性が実しやかに高まった。しかし人間をすぐに移住させる事は不可能で、研究者達はまず様々な動物達を月に送り込むプロジェクトを立ち上げ、動物達が月で生きていけるかどうかを確かめる事にした。だが既に人間以外の動物達は絶滅しているので、絶滅した様々な動物達の保存していたDNAを使い薬の開発に成功した。人間が動物になれる薬をー

政府は様々な動物に容姿や体型の似ている人間を招集し、其々に応じた動物になれる薬を配布した。薬を配布された人々は月へ出発するまでに薬を何回かに分けて服用し、搭乗した宇宙船のカプセルの中で月に到着する間に自分に応じた動物へと変貌する。人体実験だと反対する人々も多かった。けれど…人類がこれから先も生き延びる為のこれは最後の望みである事は明白だった。

モニター画面が明るくなりドローンからの月面中継がついに始まったが、まだ動物達は月面に姿を見せていなかった。キリン、ゴリラ、熊、馬、豚、猫、うさぎ、研究者達が送り込んだのはこの七種類の動物達で、最初に姿を見せたのはキリンだった。博士達は感嘆の声をあげた。月面に着地したキリンは食物用ドローンが撒いた草をもしゃもしゃと食べ始めた。
「博士…草を、草を食べています…」
「ああ、本物のキリンだ…」

次に出て来たのは馬だった。馬もキリン同様に草をもしゃもしゃと食べ始めた。豚もやって来てブーブーと鼻を鳴らした。
「今のところ苦しがっている動物はいませんね。大気装置も順調に稼働している模様です」
研究員の言葉に博士は胸が熱くなった。人類の月移住計画に一筋の光が差し込んだ瞬間だった。

しかし博士達の歓喜もゴリラの登場によって一変した。月面に着地したゴリラはとても興奮している様子で、キリンに襲いかかった。ゴリラは基本草食だが、雑食なので勿論肉を食べても不思議ではないのだけれど、博士達はもともと人間だった彼等が自分と同じ人間だった他の動物に襲いかかる事はないはずだと信じていたかった。

他の動物に変化すると人間の心を失ってしまうのかー?

それは博士達にも分からない事だった。このプロジェクトに参加した人々に明確な答えを与える事が出来なかった。姿も人間ではなくなり、心も人間ではなくなってしまうかもしれない…その不安と恐怖を払拭して勇敢な彼等はこのプロジェクトに参加してくれた。人類の未来の為にー

ゴリラはキリンを倒し、次に馬に襲いかかり豚を口で咥えて投げ飛ばした。それは野生のゴリラそのものだった。博士の目からは涙が溢れていた。人類の未来の為とは言え人間の命を研究材料にしてしまった事を悔やんだ。もっと他の方法があったのかもしれないのに…

その時、ウサギが宇宙船から月面に着地した。ウサギは鼻をひくひく動かし月面に落ちている草を食べ始めた。それに気付いたゴリラはウサギに向かって走り出した。ウサギも殺されてしまうのか、と博士達は諦めたが、宇宙船から突然熊が猛然と飛び出してきてゴリラと取っ組み合いになった。二匹の闘いは壮絶なものでゴリラが圧勝かの様に思えたが、闘いに勝ったのは熊だった。

「今度は熊がウサギに襲いかかるんでしょうか…」
「どうかな…」
熊がのしのしとウサギに近づいて行った。ウサギは鼻をひくひく動かし熊を見つめた。そしてウサギ自ら熊の方へ走り出した。
「危ない!逃げるんだ!」
熊とウサギは博士達の心配をよそにお互いに見つめ合っていた。それは威嚇でもなく、恐れもないものの様に博士達は感じていた。そしてウサギは熊の肩にちょこんと飛び乗った。
「心が…通じ合っている?」
「心がある…彼等には、心が…ある…」

熊はウサギを肩に乗せて月面を歩き始めた。月面には洞窟が作られていてそこには食料も水も用意されているので、辿り着けると良いのだけれど…と博士達は願った。
「引き継ぎドローンに二人の監視を続けてもらってくれ。言葉も理解出来るかもしれないから、音声を配信出来ないか研究を開始しよう」
「早急に対応します」

最後に宇宙船から猫が飛び出して来た。猫は素早く何処かへ行ってしまったけれど、猫はどこでも生きていける…と博士達は微笑んだ。


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