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戸松有葉さん

ショートショート:小説投稿サイト「小説家になろう」で1001作以上、本サイト「時空モノガタリ」で入賞複数。 他、長編ライトノベルやエッセイなども。コメディ得意。 Amazon Kindle(電子書籍)http://amzn.to/1Xau7kMで活動中。(←URLは、Kindleストアを著者名「戸松有葉」で検索した結果。)代表作は『ショートショート集厳選集』とラノベの『二次元最高美少女』。 ツイッターは@tomatuariha3lb

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将来の夢 積極的安楽死法案
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日常百合は虚構なのか

19/01/20 コンテスト(テーマ):第164回 時空モノガタリ文学賞 【 着地 】 コメント:1件 戸松有葉 閲覧数:83

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「チョコメロンパンって、絶対おかしいと思うわけよ。元々メロン要素少なかったメロンパンなのに、チョコ味で実物のチョコも入っていて、色もチョコレートだったら、これはもうメロンパンじゃない」
「メロンパンじゃなかったら何なの」
「百歩譲ってメロンチョコパン」
「メロンは外さないんだ」
 名称への不満とは裏腹に、美味しそうにパンをパクついているのは、由加。今年から花の女子高生になった、十五歳の女の子。
 一方、自分の席でお昼ご飯の弁当を広げているのは、祈里。同じく今年から高校生となった、十五歳。
 二人はただの同級生というわけでもなかった。なにせ幼稚園の頃から同じ学校というのが続いている、筋金入りの幼馴染なのだから。
 だからこうして昼食を一緒に食べているのも、日常的なことで……は、なかった。
「由加さ、なんでここで食べてるの?」
「えっ、駄目だった?」
「駄目じゃないけど何か用でもあるのかと思って」
 普段は一緒に食べていない。それなkぁりかあまり話したこともなかった。幼馴染で親同士も知り合いだからお互いの情報はちらほら入ってくるが、友人とも言えないほど薄い関係しかない。滅多に会わない親戚みたいなものだ。
 だから用でもあって来ているのかと、祈里は尋ねた次第。
「用っていうか、あたしたちって幼馴染なわけじゃん」
「そうだね」
「幼馴染は百合の鉄板だし」
「……うん?」
「これまで疎遠だったのが異常だったというか」
「由加、由加ちゃん、由加さん、ごめん何を言っているのか理解できない」
「え、どこが?」
「全部」
 由加は困ったという表情になって、その反応を受けて祈里もまた困った顔になって、しばらく沈黙が流れたが、祈里がいい加減切り上げて弁当の続きを突っ付き始めた頃、
「祈里ってアニメとか観ないの?」
「観ないけど?」
「それでかー」
 合点がいったと、由加は根本から説明した。漫画・アニメのジャンルには、女子の日常が描かれるものがあり、そうしたものは大なり小なり百合要素がある――同性愛とは限らないがとりあえず女の子同士の仲がよくて恋愛は女の子同士しか発生しない。
 そして先程の発言にもあった通り、百合カップルの鉄板となっているのが、幼馴染だ。
「つまり由加は、現実と虚構の区別が付いていないの?」
「アニメと現実の区別はしっかり付いてるよ、だからアニメが楽しめるんじゃん。でも百合に関しては現実も一緒」
「そんな事実は一般的にはないから」
 きっぱり言い放つ祈里だったが、
「そうかなー。性的少数派なんて言い方するけど、人類の歴史からみれば明らかなように、潜在的にはバイセクシャルが大多数なんだよね」
「そのことと百合が一般的なこととは因果ないよね。で、この話したくて今日来たの?」
「違う違う。話したいことはいっぱいあるけど、今純粋な疑問があって」
 日常百合系アニメのオープニングでは、お約束のシーンがある。
 メイン登場人物の女子たちが一斉にジャンプするのだ。
 日常モノなのに、何故かジャンプ。日常生活においてジャンプする機会などそうそうないというのに。たとえジャンプする競技の部活に入っていたとしても、ジャンプシーンは決まって制服なので部活とは関係ない。何より、ジャンプの高度が凄まじい。着地時には絶対大怪我している。何ならジャンプの最中に魂が口から出てるアニメもあった。それでも続くこのジャンプの伝統はいったい何なのか。
「つまり由加は、現実と虚構の区別が付いていないの?」
 先程と寸分違わぬツッコミ。
「ジャンプが可愛いから入れたいんでしょ」
「……はっ!」
「なんでアニメ知らない私のほうがわかってるのよ……」
「そっか、盲点だった。何となく創作物だって忘れてた」
「やっぱり区別付いてなかった」
「でも百合は本当」
 譲らない由加に、
「幼馴染しかカップル成立しないの?」
「ううん、他の鉄板だと姉妹百合がある。でもあたしたちは姉妹いないし」
「いや、姉妹はもっとないから」
「実際妹を溺愛する姉っているよ」
「それは妹が小さいと可愛いだけ」
「そっか。なら幼い内にホルマリン漬けにして――」
「日常モノから猟奇モノに変貌したね」
「他にも色々あるよ。先輩後輩百合は昔からあるし、最近だと師弟百合なんてのもあった。でもやっぱりあたし的に最強なのは幼馴染百合」
「はいはい、ところで私たちには他にも幼馴染いるよね」
「……はっ!」
 結局何が解決して解決していないのかわからないまま、お昼休みは過ぎてしまう。
「あ、ちょっと待った。口、口」
 メロンパンは綺麗に食べるのが難しい。由加の口に付いているパンを摘んで自分の口に運ぶ祈里。
(現実と虚構の区別はやっぱり付かないのかなあ。いつになったら私の気持ちに気づくんだろう)

(了)


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このストーリーに関するコメント

19/01/20 イト=サム・キニー

拝読しました。
これまで疎遠だった顔見知りの同級生。そんな彼女との『話したいことはいっぱいある』状況に対して頭の整理がついていない『由加』さん。その混乱ぶりが随所に描かれた作品だと感じました。
読ませていただいてありがとうございました。

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