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naokitiさん

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ウサギと面倒くさいカメ

19/01/20 コンテスト(テーマ):第164回 時空モノガタリ文学賞 【 着地 】 コメント:1件 naokiti 閲覧数:221

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 気温に敏感な俺は、春になると嫌でも目が覚める。
「このまま眠っていよう」
 起きて何のいいことがある? 外は危険がいっぱいで、面倒くさいことばかりだ。
 ドシン! と地響きがした。驚いて、そおっと甲羅から首を出す。
 ドン! ドン!
 また地響きがする。俺はじっとしていた。
 辺りが静かになったとき、上から声が聞こえた。
「おい、カメさん、起きろよ」
 聞き覚えのある声だ。うるさいなあ。俺は起きないぞ。
「ここには家が建つそうだ。カメさんが起きる前に家が建ったら、二度と地上へ出てこれなくなる」
 そうなのか。しかしおせっかいなヤツだ。
「カメさん、また競争しようぜ」
 あのウサギのヤツは、競争の途中でいつも居眠りをして負けるくせに、懲りずに勝負を挑んでくる。
「懲りないウサギだな。どうせまた途中で居眠りするんだろう」
 俺はボソボソつぶやいた。
「今度は負けないぞ。応援団を見つけたんだ」
 応援団? 誰のことだ? しばらく考えたが思いつかない。俺が出て行かなかったら、ヤツは泣くんだろうなあ。仕方ない。もそもそと穴を掘った。
「よう、生きてたか」
 地上に頭を出すと、うれしそうな声がした。俺は声の方に首を向けた。やっぱりウサギのヤツだ。
「間に合ってよかったよ。ここは家が建つそうだ。なかなか冬眠から起きないから、ひやひやしていたんだ」
「ああ、そうなのか。別に出られなくなってもよかったのに」
「またまた。相変わらずクールなカメさんだよ」
「応援団って何だ?」
 何かが跳ねてきて、俺の近くに着地した。
「初めまして。おうわさは伺っております。私が応援しますから、途中で居眠りはさせません」
 かわいいメスのウサギが、恥ずかしそうに挨拶してきた。
 やれやれ、一匹なのに何が応援団だ。だいたい居眠りしなかったら、俺が負けるに決まっている。ますます面白くない勝負になるじゃないか。
「へへっ、カメさんも早く応援団を見つけなよ」
「大きなお世話だ。先に着地しやがって」
 デレっとした顔を見て、ため息が出た。本当に面白くない。俺は長生きだから、そのうちヤツには会えなくなる。それを思うと、起きたくなくなるというのに。
「子供が生まれたらさ、子供にも競争させるぜ」
 フン、もしヤツがいなくなっても、子供がいるのか。
「仕方ない。新しい住処を探すか」


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このストーリーに関するコメント

19/01/20 雪野 降太

拝読しました。
子々孫々にいたるまで勝負を挑む、というウサギの覚悟がどこか清々しく感じられる作品でした。
読ませていただいてありがとうございます。

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