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堀田実さん

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サトルの恋と重力の関係

19/01/20 コンテスト(テーマ):第164回 時空モノガタリ文学賞 【 着地 】 コメント:1件 堀田実 閲覧数:186

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サトルがジャンプしたのもつかの間地面はどんどんと遠ざかってしまった。本来なら数十センチ、高い人で一メートルもジャンプすれば地面は折り返し刻一刻と足裏へと近づいて来るはずなのだが、今回ばかりは違ったようだった。
生まれてからこのかた数えきれないくらいのジャンプを繰り返して来たのにも関わらず、今回の跳躍で着地ができなくなってしまったらしい。
跳躍から着地が失われてしまったのは何もサトルだけの問題ではない。実はある時のある瞬間からすべての人の着地が奪われてしまう結果になってしまったのだった。それというのも着地をするには物質に質量があり互いに重力が働いていることが必要なのだが、どうやらこの世界から、いや、宇宙から重力が奪われてしまったようなのだ。
悲しくも世界中の科学者物理学者が、まるで風船が空にゆっくりと昇っていくように四方八方に分散してしまっているから、誰もこの現象を説明できなかったし、対策を講じることもできなかった。連絡手段はといえば偶然ポケットに入れていたスマートフォンしかない。
サトルも最初のうちはスマホを取り出し今自分に起きたことを懸命に伝えて助けを呼ぼうとするしかなかったが、それが自分だけに起きたことではないとわかると笑いを堪えることができなかった。なぜならそれはサトル自身が物心ついてからこのかた思い続けてきたことでありいわば念願が叶った形だったからだった。サトルは昨夜この世から重力が消えてほしいと夜空に願ったのだった。
流れ星に願いを、なんて古くからある迷信を信じる人なんてそうはいないがそれも単なる願掛け、サトルもダメで元々、やらないよりはマシと心半分で願っただけだった。しかし偶然、サトルが願いを心のなかで唱えた途端上空から星が流れだし、願いを終えると同時に星は燃え尽きたのだった。サトルの頭上から現れた星がコンマ何秒の狂いもなく。
普段でも夜空を眺めていれば一晩で数個見ることが出来ると言われる流れ星だが、人類が誕生してからこのかたサトルのような幸運に恵まれた人類はいなかった。天文学的な数字でしか表せない確率で起こる偶然がサトルの身に降りかかると世界の仕組みが変わってしまった。
それははじめは一つの重力子の崩壊という形で起こり、数時間も経つと重力は世界のすべての場所から消えてしまった。サトルはそんなことも知らず今日も学校だなとのんきに授業の準備をしていたばかりだったのに。遅刻するーっと慌てて家を飛び出して数分間、それはジャンプしたサトルが地面へ戻って来れなくなるだけの重力の崩壊には十分な時間だった。
徐々に徐々に宇宙空間へと近づいていくサトルは何の心配もしていなかった。なぜなら遠くを眺めれば数えきれないくらいの人の波が、サトルと同じように何の抗いもできずふわふわと浮遊していっているからだ。そこには重いも軽いも、老いも若いも、美醜だって関係がない。
ではどうしてサトルはわざわざ重力がなくなってしまうことを願ったかだって? それはどうもサトルが失恋したことに関係しているらしい。太ってる人は恋愛対象外だと言われたんだってさ。近頃の小学生はマセてるね。


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このストーリーに関するコメント

19/01/20 雪野 降太

拝読しました。
『宇宙から重力が奪われてしまったようなのだ』という驚きの設定が目を引きました。
読ませていただいてありがとうございました。

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