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デヴォン黒桃さん

「黒桃将太郎」名義でKindle作家として活動。「デヴォン黒桃」名義で猫面師としてアート活動も。人間ドラマや人の感情に興味があり、書きたい物をジャンル問わず書いております。「黒桃短篇集」発売中昭和浪漫のスコシばかり怪異なお話、アナタの脳髄へソット、注入サせて頂きます。 心の臓のヨワい御方は、お引き返し下さい。 精神に異常をキタしても、責任が取れませぬ故。http://amzn.to/2jPBe4m

性別 男性
将来の夢 りっぱなおとな
座右の銘 悔しいけど感じちゃう

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パラシュート部隊

19/01/09 コンテスト(テーマ):第164回 時空モノガタリ文学賞 【 着地 】 コメント:0件 デヴォン黒桃 閲覧数:437

時空モノガタリからの選評

麻酔の中でみた幻想か、現実の出来事か。文章がしっかりしていてイメージがしっかり伝わってくるのが良いとおもいます。パラシュートで落下し、なぜか主人公の太ももを縛り付けてくる亡き人々は、奇妙であると同時にどこかかわいらしさを感じさせますね。彼女との一瞬の再会のシーンは、主人公の思いの強さが伝わり胸に響きました。

時空モノガタリK

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  西日差し込む窓の側。突然の目眩に襲われて、膝から崩れ落ちて床にうつ伏せにバタリと倒れた身体。薄れゆく意識の中に見えたモノは、リンゴ程のサイズの小さなパラシュートを装着し、手の平に乗りそうな小さい人の形をしたナニカがユラユラと舞い降りてくる光景であった。

 小さな手足をバタバタさせて俺の太ももに降り立ったナニカは、パラシュートを畳み、背中からロープのようなものを取り出して俺の太ももにキツく縛り付け始める。
 細いロープで締め付けられる感覚と、縛られたソコが痺れて氷のように冷たくなっていく。
 切られたかと錯覚する冷たさと、目の前の異様なナニカに気を取られていると、同じようなナニカが他に十数体、バラバラと降りてくる、まるでパラシュート部隊だ。
 足首、腰、腹、胸元に次々と降り立つナニカたち。不思議と恐ろしくは無く、ただその光景を他人事のように眺めていた。

 胸元のナニカが、サッキのヤツと同じようにパラシュートを畳みロープを取り出した時に顔が見えた。よく見ると十年ほど前に病気で死んだ叔父にソックリだった。腹のところに降り立ったヤツは、数年前に事故で死んだ同級生にソックリだった。
 モシヤ? と思い、俺の身体に着地したパラシュート部隊の顔を一人一人見やると、ミンナどこかで見た顔で、ミンナ死んで仕舞った人ばかりだった。

 ナルホド、俺は死んで仕舞って、アッチの世界へ運ばれて逝くのだと覚悟した。天使がラッパを吹きながら、舞い降りて抱えて空へ消えてゆく、ナンテのを想像していたが、案外現実的なのだなと、冷静に思う余裕すらあるのも不思議だ。ナニかで聞いたか読んだかしたが、死は怖くないと、顔見知りが迎えに来るから恐ろしくは無いと。
 縛られて冷えていく箇所が増えていくのを、ソンナ事を考えながらジッと数えていた。
 段々上に上がってくるパラシュート部隊。首元に降り立ったナニカが、俺の顔をマジマジと見ている。よく見るとソレは先月に死んで仕舞った彼女だった。

 あゝ、そう云えば俺は、彼女の突然の死を受け入れられず、睡眠も食事もマンゾクに出来なくなり、毎日毎夜苦しくて辛くて、トウトウ耐えられずに劇薬をタップリと飲んだことを思い出した。
 彼女の姿をしたナニカは、俺の耳元まで登ってきて、アナタはマダ死んではいけないと優しく囁いた。ソシテ、彼女は自分の胸元からナイフを取り出した。彼女が生前、果物を好む俺に、リンゴだカキだのを剥いて呉れるときに使ってたナイフだ。
 他のパラシュート部隊は、各自結び終えたロープの先に、真っ白な風船を付けて膨らませる作業に移って居た。ドンドン浮いていく俺の身体。
 彼女はナイフを逆手に持ち、パラシュート部隊が用意している真っ白な風船と結ばれたロープを一本ずつ切り離して回った。切り離されたパラシュート部隊たちは、残念そうな顔をして膨らませた風船から垂れる切られたロープの先に捕まって宙に登り、天井をすり抜けて消えていった。

 全てのロープが切られると、冷たかった部分にも血が巡り温かさが戻り始める。小さなナイフを逆手に持った彼女は、俺の顔の方に走り寄ってきたが、俺の鎖骨に蹴躓いて転んだ。ソノ拍子にマチ針のようなナイフが俺の首元に突き刺さる。オッチョコチョイな所も、生前の侭だ。
 ゴメンネと笑いながら自分のロープを取り出し、先に付いた真っ白な風船を膨らませ始めた。たくさんの真っ白な風船で少し浮き上がっていた俺の身体は、徐々に落ちていきながら、真っ白な風船に捕まり宙に登っていく彼女の姿を寂しい心持ちで見送った。

 天井をすり抜け消えていった彼女、と同時に落ち始めていた俺の身体は床にドン、と、落ちて目が覚めた。
 一つ瞬きすると、真っ白い服の数人に囲まれて、腕には点滴のチューブが有った。
 側には不機嫌を隠せない医者が、自殺なんてヤメて欲しいものだと、顔で語っている。

 意識が戻った俺に、大丈夫かとブッキラボウに一言掛けた。大丈夫です、と返す俺。ふと首元にチクリと痛みを感じ、手をやると、彼女の持っていた小さなナイフが刺さっていた。アレは夢では無かったのかと、また会えたのかと、ふと、涙が溢れた。涙を拭って摘んでいたはずのナイフを見ると、すでに消えていた。首元の微かな痛みと、再会の喜びを残して。

 医者が俺に、同じようなことを繰り返すなよと、キツめの口調で云う。俺はソレに、もう大丈夫です。とシッカリと答えて、消えていった彼女の囁き声を何度も思い出していた。  


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