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使命

19/01/09 コンテスト(テーマ):第164回 時空モノガタリ文学賞 【 着地 】 コメント:0件 ri 閲覧数:136

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 わたしたちは金色の果実しかたべない。わたしたちはよくうたう。わたしたちはよくねむる。そして、わたしたちはほほ笑む。いかなるときも。
 わたしたちは菩提樹からうまれた。わたしたちはそれを父とよび、愛している。ヒトはよきおこないをするとわたしたちのせかいでいきることができると考えるようだが、それはちがう。わたしたちは父からうみおとされた実にすぎない。
わたしたちの寿命はみじかい。ヒトは百年ほどいきるようだが、わたしたちはその六分の一ほどしかいきられない。だれでもかぞえて十五年でしぬ。わたしはいま十三であった。
 羽はかぞえ年九つくらいがいちばんうつくしい。だから、もうわたしの羽はおいぼれである。しぬなんて、かんがえられないかもしれないが、たぶんわたしもしぬのである。ねむるように。十五年ちょうどで、なかまはしんだ。最初はねむっているように見えたのだが、やがて雲にとけていった。あとかたもない。しんだあと、あたりをさがしてみたけれど何ものこっていなかった。
 しぬと雲になるの? 父に尋ねると、彼は、そうかもしれない、と低い声でささやいた。父にもわからないのだ。しんだことがないから。しかたないのでねむった。ふつう、ここで生きるものには使命がある。うまれた瞬間に、父がこうしなさいとつげるのである。たとえば、ヒトやドウブツ、ショクブツのいのりを楽譜におこしてうたったり、うまれたばかりのなかまたちの、教育係についたり。しかし、なぜかわたしにはなにもなかった。父のそばでねむったり、ぼんやりしたりしていればよかった。だから、わたしはいつもわたしたちの「ふしぎ」について、かんがえていたし、父もわたしがそうすることを好んだ。
 目がさめるともう二年たっていた。十五年たったというのに、わたしはしんでいなかった。ねむりすぎて、父が処理するのをわすれたのだろうか。わたしはおきあがり、あたりを歩いた。もはやみしらぬ顔をしたなかまたちがわらい、うたい、とんでいた。わたしの髪は腰までのびていた。わたしの羽は膝につくほどおおきくなっていた。わたしの輪はいままで以上にきらきらとかがやいていた。
「すてきな羽ですね」
 なかまが言った。わたしはありがとうと笑った。わたしはどんどんあゆんだ。父を通り過ぎてあゆんだ。父はなにも言わなかったので、どんどんどんどんあゆんでいった。
 進んでいくと、とつぜん、ぷつりと雲がとぎれていた。そこからヒトをみることを使命としているなかまが、ふりかえる。すてきな羽ですね。かれらは言う。あたしはすこしはにかんでゆらしてみせる。するととつぜん、羽が折れた。わたしのからだはぐんと前のめりになった。なかまがおどろいた顔で手を伸ばしているのがみえた。あ。あ。あ。
 わたしはそのまま落ちていった。しばらく落ちた。どうなるのだろうと考えていると、ふっと視界が暗くなった。わたしは背中から地に着いた。いたくなかった。なまあたたかい雲のようなものの上に着地したのである。
 タイヨウの光か。目を開けると舞っていた埃がてらされて、きらきらと光っていた。ぼんやりとしていたピントがだんだん合う。あの、「ヒト」がのぞきこんでいた。二対のヒトである。やわらかなその、ヒトたちのほほ笑みは偉大な父を思いださせた。声を発しようとして口を開けると、ヒトはあわててわたしを抱きあげようとした。そのあたたかい手が触れたとき、父のことも、羽が生えていたことも、考えていた死のことも、わたしはすっかり、わすれてしまった。


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