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R・ヒラサワさん

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カメラがある時

19/01/05 コンテスト(テーマ):第1回 【 ミステリー小説 】 投稿スペース コメント:0件 R・ヒラサワ 閲覧数:51

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 あの時カメラがあったらって、私は本当にそう思うんですよ。
 え、何の話かって? ああ、以前にこの辺りで起きた殺人事件の話ですよ。知りませんか? そうですか。じゃあ、お話して差し上げましょう。
 ある日、二人の男が喧嘩になって、その挙句に一人が殺されたんです。でも犯人は捕まらないまま、迷宮入りになって……。
 この事件は証拠が殆ど無かったそうです。とても人通りが少ない場所なんで、なかなか有力な情報が得られなかった。でも事件から二週間が経った頃、目撃者がやっと一人だけ現れたんです。ところが、その目撃者の証言が曖昧でね。だから、あの時カメラがあったら、色んな人の人生が変わってただろうなって、私は思うんですよね。
 スマホですか? とんでもない。まだ普通の携帯電話すら世の中に無かった時代の話ですよ。だからさっきからカメラがあったらって言ってたのは、そういう意味なんです。
 勿論、そんな時代の話だから、カメラは当然デジタルじゃなくって、フィルムを入れるヤツですよ、先に言っておきますけれど。
 ああ、それは言わなくても分かりますって? そりゃ、失礼しました。ちなみフィルムは白黒じゃなく、カラーの方で。それも分かってるって? そうですか。
 アハハって、あなた随分笑ってますけどね、これってこの事件ではとても重要な事なんですよ、実は。
 カラーフィルムって、結構前から世の中にはあったんです。勿論、この事件の時にもね。
 最初にカメラって言いましたけど、カラーフィルムも一緒に無ければ意味がないんです。何故かって言うと、色が違ってたんだなあ、色が。目撃者の証言と、実際に着てた服の色がね。
 この話って初夏の出来事だったんですけど、事件当日のその時刻は既に空がもう明るくて、犯人の服の色なんて誰が見たって間違う様な事じゃなかったんですがねえ。
 オマケに、大体の身長の事も話したそうなんですけど、いい加減だったみたいで。これじゃ何のための証人だか分かりゃしないですよね。そう思いませんか? お陰で無関係な人が、何人も取り調べ受けたって話を聞きましたけどね。だからそこにカメラがあって、ちゃんと写真でも撮ってりゃ、間違う事なんて無かったろうし、犯人だって逮捕出来たと思うんですよ。
 でもね、もう手遅れなんです。この事件は、既に時効が成立してますから。
 それにしても、人の記憶って曖昧なもんですよね。特にこういった特殊な状況の場合には。テレビの番組でそんな事言ってましたよ。ナントカって名前の教授が。ほら、あの有名な教授の事ですよ。あれ? 誰だっけな? 私の記憶も曖昧だな。アハハ。
 そうそう、肝心な喧嘩の原因ですがね、目が合ったのどうのって、些細な事らしいですよ。でも、最初に手を出したのは被害者の方だったんです。だから犯人の方も、それで頭に来ちゃったんでしょうね。口喧嘩だけで済んでりゃ、殺人事件なんかにならなかったのにね。
 その後二人は殴り合いになった。素手だったら被害者の方が強かったでしょうね。なんせ体格が良かったから。筋肉質だったし。
 だけど実際は違ってた。たまたまあったんだよね、凶器になりそうな角材みたいなの。犯人はそいつを振り回して被害者を殴った。思いっきり、何度も何度も……。
 怖かったんだよ、きっとね。相手が強そうだったから。大体、一発でも殴られりゃ、相手が強いかどうかって分かるでしょう?
 必死だったんだよ。とにかく、このままじゃやられちゃうって。だけどやり過ぎだよね。相手は死んじゃったんだから。
 正当防衛? 今回のケースは無理だろうね。だって、防衛にしたって過剰だし、殺意もあっただろうし。角材で威嚇するだけでも良かったのに、興奮してやり過ぎたんだね。
 大して強くもないのに、闘争心だけは人一倍激しいもんだから、それを自制出来なかったんだよ。だから、殺すまでになっちゃった。
 貴方よくそこまで知ってますねって?
そりゃそうですよ。だって、喧嘩の相手は、この私だったんだから。
 あれ? もう行っちゃうんですか? ゆっくりしていけばいいのに。
 私達がこの場所で出会ったのも何かのご縁ですから、どうです? 一緒に記念写真でも撮りませんか?
今、ここにカメラありますから。


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