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村沢走さん

村沢走と申します。現在、月に一度のペースで執筆中。

性別 男性
将来の夢 恐竜になる事
座右の銘 石の上にも三年

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ワンダリング・スター

18/12/26 コンテスト(テーマ):第164回 時空モノガタリ文学賞 【 着地 】 コメント:5件 村沢走 閲覧数:185

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 パジャマ姿の御姉さんが出て来た。彼女は真帆途の実姉で、名を久美さんという。僕は、「嗚、真帆途居ますか……?」と、結んで扉の内に招待された。偏に、十年振りであった。斯うして、星野家の敷居を跨ぐのは。僕は言う。「久美さん。綺麗になりましたね」。此方の言に気を良くしたのか、「真帆途ね。ちょっと待ってて」と、久美さんは結ぶ。僕は、居間に通されて、其処で御茶の御馳走になった。十年といっても、短い物である。嘗て此の屋敷に入ったのは、六歳の折だった。僕は言った。「将来、真帆途を御嫁さんにして遣るよ」。真帆途は喜んで「わあい」と告げた。――其れから、十年。嘗ての面影は無く、容赦無い日差しが照り付ける。小半時程待つと、此れ又地味な真帆途が現れる。実姉とはいっても、十も離れている為、血縁は薄い。と、思われた。其れ程迄に、両者は事変る。杞憂を他所に、真帆途は優れないといった面持ちで席に着く。「何の用?」「いや。プリント持って来て」。と、返し、茶封筒の中身を取り出す。彼女は、欠席勝ちだったので「有り難う。帰って」と言葉少なにする。久美さんが「あら。駄目よ」と結んで、御茶の代わりが注がれる。御暇します。と結んで其の場を離れる。真帆途は怒らせると怖い。足早になって立ち去ると、袖を引く感触が伝わって来る。久美さんだった。「ねえ。真広君。真帆途ちゃんに用が有ったんじゃないの?」。「いえ。もう済みました。其れにしても綺麗ですね。久美さんは」と返し、僕は帰宅の途に着いた。
 携帯が鳴ったのは、其れから数時間後の事だった。遅い昼食を取り終えた真帆途から、「息継ぎにでも、来なさいよ」と、御呼びが掛かった。僕は久美さんに惚れていたので、喜び勇んで相伴に与かった。真帆途は不機嫌な面持ちの儘で、此方へと述懐して来る。其れに倣って真帆途の悪口を言う。「真帆途はさあ。素材は良いんだから、もっと自分に自身持ちなよ」「うるっさい」。膠も無かった。袖を我武者羅に引っ張ると「久美姉久美姉って五月蝿いのよっ」と結んだ。僕は、躍起になって其れを振り解くと、久美さんの姿を想像する。「又碌でもない事考えてるんでしょ」と真帆途は言って、其れで、僕の袖は伸びてしまった。「如何してくれるんだよ」と告げると、「知らない」と、剥れっ面になる真帆途。僕は、ほとほと呆れて、彼女へと此んな事を返した。「良いかい。真帆途。真帆途は知らないかも知れないが、世の中ってのは、常に移り変わっているんだ。――だから駄目だ。此の儘不登校を続けていちゃあ」。「ふん」。と真帆途は折り返す。其の仕種は腹蔵は無くって、其れで僕は思わず続けた。「嗚呼。もう仕様が無いなあ。御嫁さんにして遣るから。ほら」「要らない。久美姉の御下がりなんて、欲しくない」。憎たらしい。僕は、十年振りに科白を無下にされ、ちょっと凹んで食い下がった。「久美さんは斯ういう時、必ず此方を気遣ってくれるんだよなあ。嗚呼。誰かさんとは大違いだ。誰かさんとは」。脛を蹴られた。真帆途は泣いていた。思えば、あれは数年前の事だった。「俺さ。久美さんに告白するよ」。と言った僕は「私との約束は――っ!?」と、食い下がられた。真帆途は脛を蹴って、「嘘吐き。馬鹿。死んじゃえっ」と結んだ。以来、不登校になった真帆途は、僕の一番弱い所でもあった。真帆途は告げる。「皆そう。アンタみたいなヤツ。死んじゃえ。コマシ野郎っ!!」。グーで殴って来る。久美さんが現れて、「あらあら何事?」と、僕に告げ、「いえ。もう済みました」と返し、僕は真帆途の涕を拭った。甲に付着した其れは、思いの外温かくって、其れで、真帆途を思った。「一途に此んな僕を想って遣がって……迷惑なんだよ……っ!!」。と、告げた僕は、何処か覚束無い足取りで、プリントの一端を見るのであった。――其処には、ダンスパーティーの御誘いが有って、其れで「アイツは……泣いてたな……プリントは、見てないのか……」と告げた。偏に、夏の珍事であった。僕は、飛び上がって脛の痛みから解放された。着地は十点満点で九点位の出来だった。


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このストーリーに関するコメント

19/01/06 雪野 降太

拝読しました。
『僕』はかつて『真帆途』さんと結婚の約束をした。しかし約束から数年後、彼女のお姉さんである『久美』さんに告白することを決意し、事前に報告したところ脛を蹴られ、彼女は不登校になった。さらに数年の月日が経ち、結婚の約束から十年目を迎えて、再び彼女達の家を訪れる。姉は綺麗になり、妹は不登校のまま主人公を想い続けている。そんな妹に迷惑だ、と告げて主人公は家を後にする。『僕は、飛び上がって脛の痛みから解放された。着地は十点満点で九点位の出来だった』というのは、主人公の告白が上手くいった、ということでしょうか。
読ませていただいてありがとうございました。

19/01/06 村沢走

 井渡月ヅキシ様。コメント有り難う御座います。仰る通りです。何時も何時も有り難う御座います。

19/01/06 村沢走

 井渡月ヅキシ様。間違えました。告白は、未然です。有り難う御座いました。

19/01/22 そらの珊瑚

村沢走さん、拝読しました。
「携帯」というワードから設定は現代だと思いましたが、
文体やせりふまわしがちょっと前の時代の小説を読んでいるような雰囲気があり、
そこにミスマッチな味わいが生まれているような気がして、よかったです。

19/01/22 村沢走

 そらの珊瑚様。コメント有り難う御座います。意図はしていないのですが、如何しても古風になってしまいますね。貴重な御意見、励みになります。此れからも如何ぞ宜しく御願いします。

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