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村沢走さん

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504号室の君

18/12/21 コンテスト(テーマ):第163回 時空モノガタリ文学賞 【 504号室 】 コメント:2件 村沢走 閲覧数:124

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 運命的な出会いを信じてはいた。真乃は言った。「アンタになんかあの御嬢様を落とせる訳、無いじゃない」。桜野高校二年F組。桜木真帆。一年の時から、景仰している、僕の姫様であった。僕は言った。504号室の家賃が滞納されている。良い加減、払ったら如何だ。真乃。と。「うるっさいわね。今から払おうと思っていた所よ」と、ぞんざいに言って真乃は封筒を取り出す。僕の家はマンションを経営している。後呂真乃は其の504号室の住人で、詰まりは僕の隣人だ。彼女は、高一の時に転校して来て以来、独りで暮らしている。バイトを幾つも掛け持ちし乍ら、斯うして高校へと赴いている。僕は言った。「其んな事言ったって仕様がないじゃないか。僕だって天と地程の差を感じては、いるよ」。嗚呼、此んな事を言う心算じゃなかったのに……。と、結んで、サイドテールに緩ふわウェーブの真乃を見下ろす。「確かに五万ね」むくれっ面になって、僕は斯う答えた。「五月蝿いなあ。良い加減に気付いてよっ!! 僕の恋路の気持ちにさっ!!」。相手は、不思議がって「おやおやあ?」と、面白がる様にした。渇望する僕を横目に、彼女は想い人を臨んでいる様だった。明かに、僕を無視している。苛っとして、僕は505号室の、扉を閉めた。
 彼女の家は裕福だった。とても、バイトの必要な人には、見えなかった。明かに、僕の実家とは違い、此んな安マンションに暮らす必要は、なかった。此方は此方で何時もの事。明日、追っ掛けに混じって、真帆ちゃんと手紙を交換するのだ。真帆ちゃんは、クラスのマドンナだった。良い所の御嬢様だけあって、華道、舞踊、茶道なんかを嗜んでいる。とても立派な御嬢様だった。僕は、一年の頃から、クラスの連中と一緒に取り巻きを遣っていた。斯うしていると、天と地程の差が有るが、其れは偏にとても楽しかった。何時か、彼女にも気付いてもらえるかも知れない。其んな想いで、此れからも遣って行く。と。すると「馬っ鹿じゃないっ!!」と、真乃は言った。足繁く通う僕の手前で、真帆ちゃんとの間を、壁となる。僕は、「退けよ。御前に用無いって」、と呟く。すると彼女は烈火の如く怒り出して、此んな事を告げるのであった。「良い事!? 真帆には、婚約者が居るのっ!! だから、アンタ達みたいなのを、相手にしてられないのっ!!」。激震が走った。皆、何処かで分かってはいた。矢張り良い所の御嬢様だなあ、なんて事になった。誰も相手にしていなかった。だってそうだろう? 今更後になんて退けないし、何より彼女の心は彼女の物だ。婚約者がなんて、好きにされる訳が無いのだ。僕は、足早になって、其の場を離れた。今日は、家の懇親会が有る日だった。マンションの住人一同で、慢性的な病魔を退治するのだ。此の地域には、高齢者が多い。僕の手料理には大きな期待が掛かっていた。薬膳スープなんぞ絶品だぞ、と、僕は独り言ちた。
 馬車馬になって、御年寄りを招く。すると、懇親会だというのに、真乃の奴も遣って来る。僕は、ムカ付いて、其の足で505号室に取って返す。薬膳スープの用意が未だだった。僕は、庶幾すると真帆ちゃんを呼び出してみた。「あら。面白そう」と、結んで、彼女は確約をしてくれた。茶を淹れ、数分程待つと、代わりに真乃が遣って来た。「真帆遅れるって。だから、アンタの薬膳スープ、運んで上げる」。むくれっ面になって其の足で、503号室迄、運ぶ。すると真帆ちゃんが現れ、「あらあら。仲が宜しい事」と、頬を撫でる。僕は、「い。いや、違うんだ。真帆ちゃん」と、結んで「ややや薬膳スープでも如何かね?」と結んでしまう。「馬っ鹿じゃないのっ!?」と言った真乃は足早に其の場を去ると、自室の504号室へと、引っ込んでしまった。仕舞った。薬膳スープの中身を、一つ忘れていた、と、自室に帰ろうとする僕を「良い加減にしなさいよ」と言って、真帆ちゃんが嗜める。え? 何? 良い加減? と返すと「御姉さんは、鈍い人は嫌いよ」と捨て置かれ。木枯らしの様な五階の廊下で、僕は、504号室の、扉を眺めた。


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このストーリーに関するコメント

18/12/23 雪野 降太

拝読しました。
登場人物達のセリフと、地の文の独特な言い回しが相まって、不思議な作品でした。
読ませていただいてありがとうございました。

18/12/23 村沢走

すみもてわたる様。コメント有り難う御座います。独特な言い回しとのコメント。過分にして有り難く存じます。自分のカラーを出せていたらと思います。

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