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再帰樹海さん

以前《レタスタレス》といってました。 災害も多くなったり、政治もクチャクチャ・・・ せめて創作することで気晴らしにでもなればと。

性別 男性
将来の夢 無事に成仏できたら・・・
座右の銘 無知の知。

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おにぎり

18/12/12 コンテスト(テーマ):第163回 時空モノガタリ文学賞 【 504号室 】 コメント:4件 再帰樹海 閲覧数:222

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おにぎりが食べたかったのですが、あいにく塩がありませんでした。
しようがないので近くの店屋に行くことにしました。
10分ほど歩くとマンションがあり、コンビニもありました。

以前目にとまった《天然塩》なんてのもおいてあったと思うのですが、
《天然塩》の味を知らない自分にとっては《天然》かどうかなどの、
表示されただけの言葉などどうでもよく、確かな製造元と《食塩》と、
しっかり表示されている方が購買モチベーションを引き出してもらえるのです。

ともかく《食塩》を買い、余計なものに目が移らない間に、
コンビニをでることにしました。

うわさによると、例のマンションの5階の一室で独身の女が死んだらしい。
何でもネット動画で見た《一人かくれんぼ》を実行して発狂し病院で自殺した
、と言う都市伝説まがいのうわさが以前流れたことがあった。

それにしても、《一人かくれんぼ》とはなんなんだ…
自己言及のパラドックスとでも言うか、終始自己欺瞞に彩られた、
悪戯ではないのか。

ウム、そういえばある市民センターのヘルパーにこんな話を聞いた。
訪問先での利用者のおばあさんの話だと言ってた…

そのおばあさんは足がご不自由でいつも介護ベッドで寝ておられたらしい。
かわいい《こけし》人形をいつも枕の横に寝かせていた。
ヘルパーがいつもの午後に訪問したときのことだった。

「かくれんぼしてんねん。あのこに見つかったら、ウチ死ぬねん」。
いつも無口でおとなしいおばあさんが突然・真顔でヘルパーに言った。
ヘルパーはやっと話かけていただけたと喜んだ。
「ベッドメーキング」していると、あの《こけし》が見当たらない。
おばあさんにそれの消息を尋ねてみると、
「しゃあから言うてるやろ。見つかったら、死ぬねん」。
と同じ言葉を繰り返すだけだった。

「ア・こんにちわ」。

「こんにちわ…すいません。どなただったかしら」。

うわさをすればシンクロするのだろうか・あのヘルパーと偶然例の、
マンションの前で再会した。

「先日はどうも」。
「ええっと、マンションから出てこられたようなんですが、
 ここにお住まいになってらっしゃるんですか」。
と自分は彼女に尋ねた。

「いいえ、今日はあの利用者さんの件で伺っただけなので…」。

ヘルパーの顔が無視できないほど青ざめている。

「なんだか顔色が悪いようですが。よかったらウチに行きましょう。
 もう5分ほどのとこです。お茶ぐらいは出せますので」。

「いやぁ、築40年ほどのボロ屋ですけど、まだ雨漏りもひどくない」。

ちょうど雨も降り出したりして彼女も「それじゃ、お邪魔します」、
と部屋に上がりこんだ。

何にもないのでおにぎりでもと思い、握っていたら、
いつの間にか、自分の傍らに彼女が立ってクスクス笑っている。

「こう見えてもヘルパーなのです。調理介助やらせていただきます」。

あまりにもおにぎりの握り方が悲惨だったのだろう。
見るに見かねて・彼女のヘルパー魂に火をつけてしまった。

瞬く間に炊飯器がカラッポになり、テーブル上にはおにぎりの山が形成された。

ところでナゼ《おにぎり》って言うか知ってますか・と彼女に問いかけた。

「いいえ、しらない」と、彼女は鬼の形相でおにぎりにかぶりつく…

「オニのクビを切って食べた、と言う武将の武勇伝から派生して出来た
 言葉らしいけどね」。

「そんでさぁ、言いにくい事だったら言わなくてもいいんだけど、
 あのマンションに何の用で行ってたのか、よかったら話聞かせてよ」。

カバンの中からおもむろに《マイ水筒》を取り出し、
「ゴクゴク」と爽快にのどを鳴らし飲み干した。

彼女の話によると、あのマンションの504号室には、
まえに話したおばあさんの娘がすんでいたらしい。
その娘さんは離婚してから引きこもるようになり、
ついに餓死してしまった。それでおばあさんの代わりに、
部屋の様子を伺いに行った。けれど部屋は整理されていて、
何もおかしいことはない。それで帰ろうとしたとき、
「ギーッ」とドアが少しあいた。
閉めるついでにベッドに目が移った。
誰もいないベッドの上に人形らしきものが浮かんでいて、
それにはアタマが付いていない…

ヘルパーは一部始終を話し終えると、事務所に残した仕事がある
と言い残し家を後にした。

テーブルの上にはヘルパーが握ったおにぎりが一個残っていた。
おもむろに自分はおにぎりを持ち、ほおばった…

闇を切り裂き「ミーツケタ」と言う声がする…
それは明白に《鬼切り》の中からする声である。

オエッっと《鬼切り》を吐き出すと、
落下もせずに、床の上に浮遊している。
数回・回転するとそれは、
鬼の形相に変貌した《こけし》の頭だった。


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このストーリーに関するコメント

18/12/12 雪野 降太

拝読しました。
平和の象徴のような『おにぎり』とホラー調の展開が混ざり合い、不気味さを膨らませるお話でした。
おばあさんの娘さんが死んでからもマンションは引き払われていないのがまた恐いですね。
読ませてくださってありがとうございました。

18/12/13 再帰樹海

すみもてわたるさんへ
読んで頂きありがとうございます。
なにぶん不慣れなもんで書くたびに「アアッ」とため息ばかり出ますね。
寒いのでヤキオニギリなんかもイイですね^−^。

18/12/14 たま

レタスタレスさま、拝読しました。

語り口がいいですね。
なんというか、口当たりがいいので、つい、読まされてしまいます^^
それと、このヘルパーさんおもしろいです。絶妙ですね。
人間を描くことが小説の醍醐味ですから、こんな人物(ヘルパーさん)を描けたら最高だと思います。
レタスさん、腕を上げましたね。
次作も期待してますから、もう行方不明にならないようにしてね^^


18/12/14 再帰樹海


たまちゃんへ
お目の具合どうでしょうか^−^。現フォのほうで最近投稿されていたので
直られたのかいなと思っていたのですが。

自分は神出鬼没と言いますか、投稿サイト見つけては投稿しちゃうもんでね。
HNばかり増えちゃって自分でもよくわかんないのよねぇ@@;。

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