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全国定額制提携賃貸契約

18/12/09 コンテスト(テーマ):第163回 時空モノガタリ文学賞 【 504号室 】 コメント:2件 64GB 閲覧数:299

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転勤があるオレにとっては、全国定額制提携賃貸契約は画期的な契約だった。
かいつまんでいうと、全国の504号室で空き部屋さえあれば東京であろうと北海道であろうと定額で移動することができるというものだ。全国の504号室の家賃を全部足して店子で割る。すると地方の家賃は少し上がるものの東京の家賃の相場ではありえない安さになる。集められた賃料を分配する手間はかかるがオーナーは損をしない仕組みだ。なにしろ転勤が決まると部屋探しから始めなければならないが504というと建築法でエレベーターは必ず設置されているし、マンションがほとんどであり立地もいい。角部屋であることもある。すぐに生活が始められることの他に家賃の負担が一定なので見通しもきく。
いいことづくめのようだが、これは幾度めかの転勤の時に起こった事件である。

Y市へ転勤が決まり早速Y市の504号室を探すとY駅から徒歩3分2DKのコンシェルジュがいるマンションが空いていた。荷物を部屋に入れてくれるようにお願いして、引越し二日前に着くように発送した。
引越し当日は雨だったが駅からのアクセスが良く部屋に入るまでに傘がなくても特に濡れることもなかった。
部屋の中にはダンボール箱がいくつかあったが、なぜか箱が違う。大きさもばらばらで、明らかに業者のものではなくスーパーで集めた箱のようだ。
なんだろう?こんなものに入れた覚えはないのだが。
無作為に一つの箱を手にとって梱包用のテープを無造作に引きちぎる。
中からチラシに巻かれた硬くて重い何かが出てきた。
「やっぱオレんじゃないよな……」
包みをクルクルとほどくとそれは拳銃だった。
「マジかっ!ヤバイ!」
銃口を確認する。オモチャのような安心感はそこにはなく死人の眼窩のような深い穴が開いていた。
「おい!こら!おまえそこで何しとん?」
なぜか鍵が開いており入れ墨にだぼだぼの服、子供の頃から人の不幸を楽しんできた加害者特有の目をした中年の大きな男が立っていた。
「おまえいきなり現れて人のチャカあけやがってオデコかよ?」
「おでこ?えっ?」
「警察かって聞いてるんだよ!」
まずい…答えようによっては面倒くさいことになりそうだ。
「僕は今日からこの部屋に住むことになっているものです。ほら、カ…カギもここに」
「んなワケあるか!今日からオレが住むのに眠たいこと言ってんじゃねーぞ」
後ろを見るとガヤガヤと仲間が入ってきてあっという間にヤクザの集団に囲まれてしまった。
「だいたいおまえの荷物なんて無いだろう」
そのとおりだった。
「今からちょっと連絡とってみます」
携帯を取り出し話そうとした時、サッと取り上げられてしまった。
「おまえの身元調べるからちょっと貸せや」
「いや、それはまずいでしょう」
「なんだ不満かよ」不満にアクセントが強い。
5.6人はいるヤクザの集団に抵抗できるスキルは持っていない。
「これって本物ですか?」床に置いてある拳銃を指して言った。
「あ?本物に決まってるだろ。ここまで見られてウソですなんて言えるかよ」
本当のことを言ってもいい許可が出たと思った別のヤクザが言った。
「明日か明後日にはニュースになるぞ」
「バカか!そこまで言わなくてもいいんだよ」
タバコに火を点けながら男は言った。
「このシステムってよ、逃げる側にしても便利なんだよな。すぐに全国どこへでも移動できるしヤバくなったらすぐケツ割ればいい。一番捕まえづらいのが移動し続けているヤツだからな」
そう言ってこちらを見て笑った。こいつら確信犯か?先に送った荷物は誰かがどこかにやったのか?そういう疑念が湧いてきた。いったいなんのために?
「あのう……僕が何かの事件で使われた拳銃を見たということは……」
「おう!ただじゃすまないな!」
当たり前だろうという笑いが起こった。
「では、これを機に仲間にしてもらう……というわけにはいきませんかね?」
「それもないね!」さらに大きな笑いが起こった。
「じゃあ、僕はどうなるのですかね?」
「さあな、おまえの秘密をしゃべってみろよ。それによっては何とかなるかもよ」
同じような犯罪の告白でもしろというのか?
「秘密ですか」
「くだらない秘密なんか言ったら殺すからな」
「僕の秘密は……」
ヤクザの集団の視線が突き刺さるようで下を向いてしまった。
「警察なんです」
「はあ?」
「ふかしとんのか!」
罵声が飛んで来た。
「おまえみたいなフニャフニャしたのがなんでオデコなんだ!」
「転勤でY署の捜査2課に辞令をもらってます。ラインのやりとり見てくれたらわかりますがマジです」
取り上げられた携帯を確認していた男が言った。
「マジっす」
「……」
「……」
「さあてと誰から逮捕しようかな〜」と言おうと思ったが言えなかった。


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このストーリーに関するコメント

18/12/09 雪野 降太

拝読しました。
主人公のこの後を想像すると恐ろしいとしか言いようのない内容でした。2DKで5、6人に囲まれるというのは恐怖ですね。県警も警視庁も、警察官の方は寮や官舎への入居だと思っていただけに本作の設定は意表をつかれました。
『504というと建築法でエレベーターは必ず設置されている』ということを初めて知りました。勉強になりました。
読ませていただいてありがとうございます。

18/12/10 64GB

すみもてわたる様

コメントありがとうございます。プロットの骨子がウケ狙いでいろいろ難のある、というか無理のある話でした。最初にウソをつくとついてこれない人は「なにこれ?」となってしまいます。ウソは最後につくのがいいと教えていただいたことがありました。ただこのごろの官舎事情は独身に空きが出てきており「なに考えんだ!」という先輩の意見をツラ〜と出て行ってしまう人がいるので使って見ました。

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