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R・ヒラサワさん

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超予測変換

18/11/22 コンテスト(テーマ):第163回 時空モノガタリ文学賞 【 504号室 】 コメント:2件 R・ヒラサワ 閲覧数:153

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 最近はスマートフォンの性能も随分と良くなった。普及率もどんどん上がり、持たない人が少数派に追いやられるばかりだ。使えるアプリも増え続け、便利な世の中になったものだと思う。
 ワープロの様な文字編集専用のテキストエディタなどは、小説を書く人によく利用されるようだ。それらと連動する文字の変換機能も重要な性能で、特に『予測変換』などは入力がスムーズに行えるようになって便利である。
『超予測変換』は最近普及し始めた無料のアプリで、画面の一部に常時広告が表示されているが、基本的な機能は普通に使う事が出来る。スマートフォンの基本的な変換機能を更にアシストするらしい。
 人工知能によって学習を重ね、そのユーザーに合った仕様に成長してゆくので、それぞれ予測される文字も異なり、それも面白い。
 趣味で小説を書いている私は、早速このアプリを試す事にした。
『超』が付くほどの変換機能とは一体どの様な物なのかと、最初はそれほど期待もせず使ってみたが、ある程度経ってそれがとても素晴らしいものだと感じた。
 最初は人工知能も学習前なので、私が何を書くか分からない。だから先ずは予測変換に頼らず、自分の頭で考えた小説を書く事から始めた。
 すると、どうだろう。数行目からは小説で使えそうな言葉を上手く用意してくるではないか。私がその中から物語にふさわしいものを選んでゆくだけで、いつの間にか一編の短い小説が出来上がっていた。
 このアプリのお陰で小説が次々と書けるようになった。執筆ペースが上がったので、それらをコンテストに応募する事にした。
 そして中には入賞する作品も出始めた。アプリの学習が優秀なのは言うまでもないが、それを使う私の方もコツを掴んできたようで、作品のレベルは徐々に上がり続けた。
 毎月決まって応募するようになったネット上のコンテストがある。ここでは毎月課題が一つ出され、それに合った作品を募集している。出される課題は様々で、それを難しいと思うかどうかは書く人によって違ってくる。
 今回の課題は『五〇四号室』だった。なかなかアイデアが出ない。しかも、その番号は偶然にも私が住んでいる部屋と全く同じだった為、余計な情報を盛り込んでしまいそうで、書く事を妨げる材料の一つになった。
 今回は全面的にアプリに頼ろうと思い、とりあえずタイトルを『五〇四号室』として、何かヒントを探る事にした。すると色んな変換候補が表示された。このアプリの表示部分は通常の二倍ほどあって、それらの中から『その男は』を選んだ。
 通常はここで再び何かのキーをタップしない限り候補は出てこないが、このアプリは次々と候補が出る仕組みになっている。物語として繋がりそうな言葉を順番に選んでいった。

”その男はマンションの部屋に一人で住んでいた“

 書き出しはありきたりだった。しかし、肝心なのはこれからだ。次に出てくる候補によって話の展開は随分と変わる。何が出てくるかも大事だが、それをどう選ぶかも作者の腕の見せ所だ。私は次々と言葉を並べて話を進めていった。話が中盤にさしかかった頃の物語は次の様になっていた。

”警察から逃げた強盗犯は各地で空巣や引ったくりを繰り返し、徐々に逃走経路が明らかになる一方で、未だ逮捕には至っていない“

 何処かで聞いたような話だったが、気にせず言葉の選択を繰り返した。いつもこうして書き進めるが、この作業中は読者の様な気分になる。それは自分で話を書いている感覚が薄いせいだ。全て自分で考えたのでは、こうはならないだろう。
 ここまでの話はこうだった。警察から逃げた強盗犯が各地で犯行を繰り返し、今は主人公の住んでいる地域をウロウロしている。逃走に必要な金を得る為、周辺を物色しているのだ。狙っているのはセキュリティのあまい場所ばかりだ。
 一方、主人公の男は作家を夢見て、日々スマートフォンで小説を書いている。二人には接点は無く、これからの展開が楽しみだった。

“マンションにはオートロックはなく管理人も居ない”

 ワンルームマンションにはよくある事で、私の住むマンションもそうだった。
 
“五階の奥の部屋へと犯人は進んで行き、犯人は鍵のかかっていないドアを開けて部屋の中の男にナイフで襲いかかった”

 まるでこの部屋の事の様だったが、鍵はいつもかけてある。
 でも待てよ。今日はコンテストの締切が近く、急いで書き始めたから鍵は......。
 次の瞬間、リアルに私の部屋のドアが開き、背中を激しい痛みが襲った。


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このストーリーに関するコメント

18/12/01 雪野 降太

拝読しました。
『超予測変換』なるアプリ。登録された語録どころか、人工知能とネットワークが駆使されて候補の文章が挙げられるなんて、なんと魅力的な機能でしょう。興味深く読ませていただきました。
作中の作品と現実がリンクするという展開ですが、アプリの取扱説明的な前段から中段、後段に至る過程において、ややのんびりとした雰囲気を受けました。作中の語り部(作者)が唐突に筆をおく、というショッキングさを考えると、小泉八雲の『茶碗の中』的なスピードが必要だったのではないかと思います。
このたびは読ませていただいて、ありがとうございました。

18/12/01 R・ヒラサワ

すみもてわたる 様

コメント頂き、ありがとうございます。
ご指摘いただいたスピード的な部分について、今後の作品作りに生かしてゆきたいと思います。
大変参考になりました。

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