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みやさん

写真と物語の融合、写真物語家を夢見ています。 マイペースで更新中。Twitter➪@miya_ayim

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月へ行くうさぎ

18/11/19 コンテスト(テーマ):第162回 時空モノガタリ文学賞 【 あだ名 】 コメント:0件 みや 閲覧数:54

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「あなたのあだ名は…うさぎですか?」
毛深くて身体が大きく、見るからに熊の様な男性が私に話しかけてきた。
「分かりますか?歯が…歯がうさぎみたいで…子供の頃からのあだ名はずっとうさぎでした。あなたは…熊?」
「はい、見た通りです。身体が大きいので。僕も子供の頃からあだ名は熊でした」
熊の様な男性はそう言ってがははと笑った。ステーションには徐々にたくさんの人々が集まって来ていた。

「あの人は、キリンかな?首がかなり長いぞ」
「多分そうでしょうね。あの人は…鼻が」
「鼻が大きいから豚だな。それからあの人は間違いなく馬だな。馬面だ」
私と熊の様な男性は集まって来た人々を眺めながらクスクスと笑いあった。
「しかし、良くこれだけ動物に似た人間が集まったものですね。あ、あの人は間違いなくゴリラだな」
「子供の頃からのあだ名がゴリラだと、何だか可哀想」
「そうかな?僕は子供の頃から熊って呼ばれていたけれど、嫌な気はしなかったな…」
「熊とゴリラだとかなり違うんじゃないかしら?」
「確かに…でも熊もゴリラも写真でしか見た事が無いから、同じ様なものの気がします」
「そんなものかもしれないですね。私もうさぎとリスは同じ様なものの気がします。あ、あの人は猫かしら?瞳が猫っぽい」
「そうかもしれない。猫もだけれど、あなたはうさぎで可愛らしいですね」
「歯が出てるだけで可愛くもなんともないですよ」
「いいや、可愛いうさぎになりそうだ」
「あなたは逞しい熊になりそうですね」
「ただ身体が大きなだけの熊です」
私と熊の様な男性はまたクスクスと笑いあった。

”搭乗客の皆様にお知らせです。最後の薬の服用を開始して下さい。繰り返します、最後の薬の服用を開始して下さい”
ステーションにアナウンスが鳴り響き、私と熊の様な男性は鞄から細長い薬を取り出し、ペットボトルの水で飲み干した。
「こうやって水を飲むのもこれが最後かな」
「そうですね…熊はどうやって水を飲むんですか?」
「さあ?」

太陽が死滅して約二十年が経っていた。地球は氷河期を迎え沢山の動物達が絶滅していった。そして今では人間以外の動物は地球上に存在していない。人間も何年か後には絶滅すると推測されている。そんな中政府は人類の月移住計画を発表した。月には大気が無いが、研究者達は月を大気で覆う事に十年を費やし成功を収めた。その成功のお陰で、月が第二の地球になり得る可能性が実しやかに高まった。しかし人間をすぐに移住させる事は不可能で、研究者達はまず様々な動物達を月に送り込み、動物達が月で生きていけるかどうかを確かめる事にした。だが既に人間以外の動物達は絶滅しているので、絶滅した様々な動物達の保存していたDNAを使い薬を開発した。人間が動物になれる薬をー

そして政府は様々な動物に容姿や体型の似ている人間を招集し、其々に応じた動物になれる薬を配布した。薬を配布された人々は月へ出発するまでに薬を何回かに分けて服用し、搭乗した宇宙船のカプセルの中で月に到着する間に自分に応じた動物へと変貌する。それは進化か?退化か?人体実験だと反対する人々も多かった。人間以外の動物になる事に抵抗を感じる人々も多かった。けれど…人類がこれから先生き延びる為のこれは最後の望みである事は明白だった。

「私なんだか歯がますます伸びてきた気がします」
「僕も体毛がますます成長してきた気がする」
私と熊の様な男性はまたクスクスと笑いあった。
「うさぎになったら、熊になったあなたを見てあなただと分かるかしら?」
「分かると信じたいですね」

”次の方、ゲートにお進み下さい”
うさぎの私の順番だった。
「またね、熊さん」
「また会いましょう、うさぎさん」
長いエスカレーターを登って行くと、その先が宇宙船への搭乗口だ。月へ到着する間に私はうさぎになってしまう。人間ではなくなってしまう。動物になったら感情はどうなってしまうのか?心も動物になってしまうのか?研究者達の答えは 「 I don’t know. 」だった。それは誰にも分からない。それはうさぎと熊にしか分からない事だった。


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