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小高まあなさん

鳥と怪異と特撮ヒーローが好き。 ひねくれつつも清々しい物語がモットー。

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二つ名メーカー

18/11/19 コンテスト(テーマ):第162回 時空モノガタリ文学賞 【 あだ名 】 コメント:0件 小高まあな 閲覧数:232

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「ここに、やつが住んでいるのね」
 私は、屋根がやや傾いたその家を眺める。思っていたよりも、ぼろい。稼いでるんじゃないんだろうか。
 まあ、やつの家がぼろかろうが関係ない。
 私はそのドアを軽くノックした。
「たのもー!」
 返事はない。もう一度。
「たのもー!」
 やはり返事はない。が、中から人の気配がする。居留守だな。
「たのもー!!」
 叫びながらドアノブに手をかけると、思いっきり引っ張った。ばりばりっと音がして、ドアが外れる。
「うわっ!?」
 中で足を組みながら優雅にコーヒーなんか飲んでいた眼鏡の男が悲鳴をあげた。
「は? え? 何? 強盗?」
 こんなカワイイ女の子のどこが強盗だ。
「あんたが、シルベスター・ハワードね?」
「そうだが……。いや、っていうか、ドア……」
 シルベスターの視線は私ではなく、私の手の中のドアに注がれている。男のくせに細かいことを気にするやつだ。
 私は取り外したドアを、ぽいっと投げ捨てた。
「ああっ、ドア!!」
 シルベスターの叫びを無視して、ぐいぐい中に入っていく。
「あんたが、二つ名メーカーね!?」
「そうだけど、マジであんたなんだよ! ドアどうすんだよ!」
「ドアが気になるなら最初から居留守使わないで出ればよかったじゃない!」
「たのもーなんて入ってくるやつ、ろくなやつじゃないから居留守使うに決まってんだろ。っていうか、ろくなやつじゃなかったっ!」
 がんっとコーヒーカップをテーブルに置くと、頭を抱える。
「くっそ、職業柄厄介ごとは慣れっこだけど、ドアを素手で外したやつはあんたが初めてだぞっ!」
「うっさいなぁ! そんなに気になるなら後で直してあげるわよ! だから話聞きなさいよ!」
「絶対だな! 絶対直せよ!」
「直すってば!」
 まったく、小さい男だ。背丈も小さいけど、ぷぷぷっ。
「で、誰だよ、あんた」
「エリザベート・ローロ・ウィルソン」
 きっとシルベスターをにらみながら言うと、
「……誰?」
 首を傾げた。なんてやつだ、私をあんなに辱めておいて。
「……っ子」
「あ?」
 ああ、くそ、これを口にするのは本当に嫌なんだけど。
「世紀のドジっ子破壊神、っていえばわかるかしら?」
 吐き捨てるように言うと、
「……あー、あれだ。三週間ぐらい前の火事の。え、それが何?」
「何? ですって? あんた、自分がどんな記事書いたかわかってんの?」
 シルベスターは新聞記者だ。ちょっと低俗な、ゴシップなんかも扱う新聞だけど、シルベスターの書く記事は面白いから人気がある。名前を知られている新聞記者だなんて、彼ぐらいだろ。
「悪い記事じゃなかったよな? 世紀のドジっ子破壊神が火事の現場から子供たちを助け出したっていう。まあ、その代わりに、せっかく焼け残った家をその怪力で破壊したっていうあれだけど」
「その後半部分いります?! いらなくない!? っていうか、その二つ名何!? もっとかっこいいあるやつあるでしょ、この二つ名メーカー!!」
 彼は人呼んで二つ名メーカー。彼がつけた二つ名は国中にすぐに浸透する。
「国際警察軍の片刃の剣で戦う赤き狼とか、天才スナイパーの金色の霧とか、あんたが考えたんでしょ?! なんで私は、ドジっ子破壊神?!」
「世紀のな」
 村でからかい倒されて居づらくなって逃げてきたのだ。人助けしたはずなのに。
「今すぐ訂正記事を出しなさい」
「そうはいってもなー。二つ名つけてるのは俺じゃないんだよ」
 彼はそういうと、棚の上の水晶に手を伸ばす。
「決めてるのは、こいつ。精霊のお告げ。だから、おいそれとは変えられない。呪われるぞ」
「うっ」
 精霊のお告げと言われてしまうと、私になすすべはない。精霊のお告げに逆らうのは、神の逆鱗に触れる禁忌だ。
「まあ、あとはなんか新たな善行でも積んで二つ名変えるぐらいかな。試しに、今の見てみるか」
 彼はそう言い水晶に手をかざす。私もそれを眺め、しばらくすると文字が浮かびあがってきた。
「うわー、これはこれは」
「なによっ、これ!」
 そこに出ていた文字は、ゲート・クラッシャーだった。
「まあ、ドア壊したもんな。でもかっこいいじゃないか」
「クラッシャーじゃダメでしょっ!」
 確かに、ドジっ子破壊神よりはましだけどね!?
「……わかったわ」
「お、帰る? ドア直してけよ」
「いい二つ名が出るまで、あなたのところに置いといてもらうわ」
「なんでそうなる?!」
「いい二つ名が出たら速攻記事を書き直してねっ!」
「迷惑千万!」
 かくして見習い記者エリザベートが誕生した!
 水晶が「デストロイ型押しかけ女房」の文字を浮かびあがらせる。だまらっしゃい。


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