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ササオカタクヤさん

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吾輩には名前がある。あだ名はまだない。

18/11/18 コンテスト(テーマ):第162回 時空モノガタリ文学賞 【 あだ名 】 コメント:0件 ササオカタクヤ 閲覧数:330

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吾輩には名前がある。あだ名はまだない。
どこで生まれたかとんと見当つかぬ。と言ってみたいが吾輩は普通すぎるところで生まれた。ごく普通の家庭で過ごし、当たり前のように一日三食用意してもらえる。朝は学び舎に向かい、夕方には我が家に帰る。そして温かい風呂に入り、ふかふかの布団で就寝する。
こんな生活をしているからか吾輩にはあだ名がなかった。そんな吾輩は密かにあだ名を付けてもらうことが夢だった。だから吾輩はどうにかしてでもあだ名を付けてもらうことに励んだ。

ある時、丸眼鏡を掛けて学び舎に向かう。きっと昨日まで掛けていなかった吾輩に誰かが気付き“メガネ”とあだ名を付けてくれるに違いない。もしかするとメガネだけじゃ物足りず“メガネ猿”といったあだ名を付けてくれる可能性もある。
「眼鏡にしたんだ!似合うね」
「目悪かったんだ!知らなかった」
吾輩の予想を見事に裏切り、丸眼鏡にちなんだあだ名は誰も付けなかった。
それでは髪を金色に染めて学び舎に向かえばどうなるか?吾輩は前日、父と母が眠りに就いたことを確認し事前に購入しておいた毛染めを行った。見事に輝かしい金色に染まった吾輩の髪に父と母は憤っていた。そんな父と母から逃げるように学び舎に向かう。
「金髪とか似合わないー!」
「それはヤバイな!先生に怒られるぞ!」
やっぱり吾輩の髪を見ても、驚くだけで金髪にちなんだあだ名を付けてくれなかった。さらに吾輩は先生に職員室に呼び出され注意を受けてしまう。

金髪にしたことで先生をはじめ多くの大人にお叱りを受けてしまった。反省の意味を込めて坊主にさせられてしまったが、その姿を見て吾輩は閃いた。
「えー!坊主に丸眼鏡とかウケる!」
吾輩は坊主姿に丸眼鏡を掛ける。今までの姿と全く異なり、ますますあだ名を付けやすい雰囲気に仕上がった。吾輩は今度こそあだ名を付けてくれると思った。それでも吾輩にあだ名を付けてくれる者は現れなかった。
それからというもの、吾輩はあだ名になりそうなことは何でも挑戦した。ある時は下駄を履いたり、またある時は顔に猫髭を描いたりもした。それでも吾輩にあだ名を付けてくれない。
徐々に吾輩も取り返しのつかないほど特殊な人間になっていた。坊主姿なのにお下げ髪をしてみたり、丸眼鏡をワザと割ってみたり。制服のズボンを尻の部分だけ穴を空けてみたり。とうとう吾輩に話し掛けてくる者もいなくなってしまった。

「最近どうしたんだ?」
吾輩は先生に注意されず心配をされてしまうようになっていた。吾輩はあだ名を付けてもらいたいがために行なっていたことを正直に先生に答える。すると先生は「お前の名前を考えてみたら分かるだろ!ハハハ」と、教えてくれる。
先生が初めて教えてくれたことで吾輩は今まであだ名を付けてもらえなかった理由を知ってしまう。
吾輩の名前は勘解由小路雪彦(かでのこうじゆきひこ)と全国探しても見当たらないほど珍しい名前だったのだ。吾輩は生まれた時からどんなあだ名よりも印象に残ってしまう名前の持ち主だった。だから吾輩は何をしてもあだ名を付けてくれることは無かったのだ。

吾輩はもうあだ名を付けてもらうことを諦めた。次第に楽になってくる。苦しいのだかありがたいのだか見当がつかない。家の中にいるのか、学び舎の中にいるのか判断しない。
吾輩はもう死んだも同然なのかもしれない。誰も相手にしてくれないのだから。南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏。ありがたい…ありが…たい…

「…ねぇ、カデってば!」
「…!!なに?なに!」
「もう授業終わったよ?すごいよだれ垂らしてるし!」
知らないうちに眠ってしまったようだ。チャイムにも気づかないほど眠っていたなんて珍しいこともあるもんだ。とんでもなく馬鹿げた夢を見ていた気がする。
あの夢に出ていたのは確かに俺だ。勘解由小路という苗字は俺の名前。でもあの夢とは違い俺には“カデ”というあだ名がある。もし俺にあだ名が無かったら、あんなことしてでも欲しかったのかなと考えた。
「カデはいつも寝てるから猫みたいだよな」
よく寝ている俺に友達は猫みたいだと言い始める。俺は「そんなことないよ」と否定するが周りの友達も集まってくる。そしてその中の一人が俺の顔を見て笑いだす。
「カデ!お前ノートに書いた線が顔に移って猫髭みたいになってるぞ!」
「ホントだ!もう猫って呼ばれても文句言えないな!」
みんなが俺の顔を見て笑った。その日以来、俺はみんなに猫と呼ばれるようになった。あの夢と違い、珍しい名前でも簡単にあだ名は付くようだ。

吾輩のあだ名は猫である。このあだ名は嫌じゃない。


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