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せーるさん

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座右の銘 八百万の国らしく、八百万の方法論を持ちたい。

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小バカにされたあだ名から──

18/11/17 コンテスト(テーマ):第162回 時空モノガタリ文学賞 【 あだ名 】 コメント:0件 せーる 閲覧数:79

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 カップに紅茶が注がれる音がチョロチョロと部屋に響く。注いでもらった紅茶に口をつけ、ひとススリする。
「もう、この味も苦手ではなくなったな」

──私は中学1年生のとき、当時の英語教師から言われた言葉が忘れられない。
『おっ、その名前の英語読みカッコいいな!』
 私の名前は、柳 赤秀(やこうやなぎ)という。英語読みにするとAko Yanagi。それを大きく褒められたことが私の人生を変えた。
 それから私は自分の名前をAko Yanagiと英語読みで言ったり書いたりと、今思えば恥ずかしいことをしていた。そのせいでクラスメートが私を呼ぶときに「アコォ、ヤナギィ」とバカにしたように呼んできて、それがあだ名としても定着してしまった。私にそのキッカケをくれた英語教師は、もうひとつ大きな影響を私に与えてくれていた。それは──
「決して、恥ずかしがらず、そして折れずに続けること!」
 不覚にも、その言葉に感動してしまっていたのだ。それからの私は、クラスメートにあだ名でからかわれ続け、しかし「これも自分の名前だ」と言い切り、意欲の上がった英語の勉強をがんばっていた。
 そんな時期に、イギリスの少女アメリアが交換留学生としてやってきた。
「My name is Amelia Taylor. Nice to meet you.」
 キレイな金髪をなびかせた白人の少女で、私はとても美しいなと感じていた。やはり本場の英語は全く違い、話しかけるつもりではなかったが──
「アコォ ヤナギィ、お前行って来いよ」
 クラスメートにはやし立てられ、話しかける流れになってしまったのだ。
「ハロー、マイネームイズアコォヤナギ、ナイストゥミーチュー」
「Hello. Did you need me?」
「え? えーっと……」
「おい、答えてやれよー」
「なんて言ってるの?」
 クラスメートが男女ともに、私を責め立てたりしてくるが、分からないものはわからない。
「えー、わかんないのー? アコォヤナギィなのにぃ?」
 クラスメートたちのクスクス声が教室に静かに響く。だが、また先生の言葉がフラッシュバックしてきた。

『決して、折れるな!』

 私はその次の日からも、アメリアに話しかけ続けた。最初は言っていることが全く分からず、こっちの言葉も相手に伝わらず、そのたびにクラスメートたちにからかわれていたが、それでも英語を一生懸命勉強しながら、話しかけ続けた。
 そのうちに、アメリアが、徐々に私と仲良くしてくれるように。それが転じて、クラスメートたちも私をバカにしなくなっていった。英語も少しずつ伝わるようになってきた。
「Whats your favorite drink?(好きな飲み物はなんですか?)」
「I like tea.(わたしは紅茶が好きです)」
「I am not good.(ぼくは苦手です)」
「Is that so, ha ha ha(そっか、ハハハ)」
 その様子に、クラスメートからは徐々に、称賛をうけるようになっていきました。
「あこう君、なんか最近かっこいいよね」
「分かる、バカにしてた男子たちサイテーだよ」
 いつの間にか私とアメリアを中心にクラスメートが輪をつくり、なんの話をしていたのかと盛り上がるように。

ですが、そんな日も終わりは来ます。アメリアがイギリスに帰る日がやってきました。
「I was glad that you talked to me there. Thank you!(話しかけてくれて嬉しかった、ありがとう!)」
「Thank you, too.(こっちこそ、ありがとう)」
「I would like to exchange hand written letters.(私、あなたと文通したいです)」
「Please do!(ぜひ!)」
「I made it!(やったぁ!)」
アメリアは勢いよく私に抱きつき、顔を赤くしてそっと離れた。
彼女の手には、ノートの切れ端が。英語で住所が書いてあるようだった。
「This is my address. Im looking forward to your letter.(これ私の住所です。あなたの手紙、待っています)」
 抱きつかれたことで頭の中が真っ白になっていた私はあうあう言っていた気がします。
「Bye bye, Ako.(バイバイ、赤秀)」

──過去そんなことがあった私は、現在外交官として働いている。今や、あのときクラスメートが私につけてくれたあだ名で呼ばれることのほうが多くなっているのだ。
「Ako, Would you like to refill your tea?」
「Yes, please」
それに、隣には金髪美人のお嫁さんもいる。紅茶も好きになったしね。


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